スマホやノートPCの画面を見過ぎると首に痛みが生じる「テック首」はどう対策すればいいのか?

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現代人は毎日長時間スマートフォンやノートPCを使用しており、どうしても頭を前に倒したややうつむきがちの姿勢を取りがちです。そんなスクリーンの見過ぎが痛みや慢性疾患につながる「Tech neck(テック首/テックネック)」という現象について、テキサス大学サウスウェスタン・メディカルセンターの理学療法士であるKavita Trivedi博士が解説しています。

‘Tech neck’ epidemic: How to treat the rise in chronic neck pain | Back and Spine | Orthopaedics and Rehab | UT Southwestern Medical Center
https://utswmed.org/medblog/tech-neck-pain-treatments/


Staring at screens could strain cervical spine, cause ‘tech neck’ – UPI.com
https://www.upi.com/Health_News/2023/02/17/scrolling-screens-neck-pain/3891676642779/

現代人は1日に数時間以上もスマートフォンやPCの画面を注視しており、街中や公共交通機関でも多くがスマートフォンに目を落としている様子が見られます。ややうつむきがちの姿勢は首に過剰な負担をかけるため、近年は首の骨や神経、筋肉といった箇所に問題を抱える人が増加しているとのこと。

スマートフォンやPC画面を見つめる姿勢が体の不調を引き起こすのは、人間の頭部がかなり重いためです。一般的な大人の頭部は約5kgほどの重さがあり、人間の体は直立した状態でこの重さを支えられる構造になっています。しかし、首を前方に曲げると頭部を支持する骨の頸椎(けいつい)やその関節にかかる負荷が増し、痛みや炎症が発生する原因になるとTrivedi氏は説明しています。

うつむきがちの姿勢がどれほどの負荷を首にかけるのかを示した図が以下。直立した状態でかかる負荷は5kg程度ですが、前方に15度傾けるだけで負荷は12kgに増加します。角度が30度になれば負荷は18kg、45度になれば22kg、60度になれば27kgと、その負荷はどんどん増していくそうです。


こうして増加した負荷が繰り返しかかることで、首の神経を保護するために周囲の筋肉が硬くこわばり、炎症や痛みなどが引き起こされた状態が「テック首」と呼ばれます。多くの人々は病院にかかる前から、オンラインで目にしたストレッチやエクササイズ、市販薬、マッサージなどを試していますが、Trivedi氏は「非常に効果的な外科的介入」として以下の複数の治療法を挙げています。

・硬膜外ステロイド注射
強力な抗炎症ステロイドホルモンの一種であるコルチゾンなどを神経が刺激される箇所に注入することで神経の炎症を鎮め、数カ月~1年にわたり筋肉の痛みを和らげることができます。

・トリガーポイント注射
トリガーポイント注射とは、痛みがある箇所(トリガーポイント)に直接麻酔薬と抗炎症ステロイド薬などを注入する施術のことで、ひどいコリや痛みを軽減する効果があります。

・神経根ブロック
背骨の神経の根元にある神経根に麻酔薬を注入する神経根ブロックは、脳に送られる痛みの信号を遮断することで痛みを大幅に和らげます。

・ラジオ波焼灼療法
ラジオ波焼灼療法は超音波で観察しながら電極針を挿入し、首の関節に痛みの信号を送信する神経を焼くという侵襲性の低い施術です。場合によっては一時的な神経ブロックも併用されるとのこと。

ほとんどのテック首は本格的な手術を必要としませんが、骨折や椎間板ヘルニア、脊髄の圧迫などに苦しんでいる場合には、手術が最良の選択肢になる可能性もあるとTrivedi氏は述べました。


テック首を予防するにはスマートフォンやノートPCを見るのをやめることが一番ですが、現代社会ではこれらの機器が生活の大部分を占めているため、「これから1週間はスマートフォンを見ないでください」と言われても従うのは困難です。そこでTrivedi氏は、より現実的な戦略として以下の方法を提案しています。

・首と頭の角度を検出する専用アプリやデバイスを使用し、姿勢が悪くなったらすぐに気づけるようにする。
・タイマーをセットし、定期的に画面から目を離して体をほぐすようにする。
・メッセージを入力する際に音声入力を使用することで、スクリーンを注視する時間を削減する。

Trivedi氏は、「テキストメッセージやスクロール中にスマートフォンを目の高さに保持することを覚えておくだけで、首を保護するために役立ちます。PCのモニターを目と水平の位置に配置することも同様です」と述べ、スタンディングデスクを導入したり体に合う椅子を見つけたりと、首を保護するためにさまざまな対策ができると説明しました。


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