なぜ文字リンクは青色で表示されるようになったのか?

GIGAZINE
2022年01月12日 23時00分
メモ



ウェブページ上ではハイパーリンクを用いたリンクテキストをクリックすることで、ウェブページから別のウェブページへ移動することができます。このリンクテキストが「なぜ青色なのか?」について、FirefoxやThunderbirdといったソフトウェアを開発するMozillaのリーゼ・ブランチャード氏が考察しています。

Why Are Hyperlinks Blue
https://blog.mozilla.org/en/internet-culture/why-are-hyperlinks-blue-revisited/

Mozillaでウェブデザイナーとして働くリーゼ・ブランチャード氏は、過去にハイパーリンクが青色な理由をウェブブラウザの歴史を振り返りながら解説しています。

なぜハイパーリンクは青色で表示されるのか? – GIGAZINE


ブランチャード氏は以前の考察で、1993年にリリースされたMosaicのバージョン0.13がハイパーリンクを青色で表示した最初のブラウザであると指摘。これについてブランチャード氏は「Mosaicが青いハイパーリンクを使用した最初のブラウザであると判断できたにもかかわらず、ハイパーリンクが青い理由を明確に判断することはできませんでした」と言及しています。

Mosaicがハイパーリンクを青色で表示する前、ハイパーリンクは長年黒色で表示されてきました。これが青色になった新しい仮説として、ブランチャード氏は「それまでは1色しか生成できない単調蓄光モニターが多かったのに対して、RGB蓄光モニターが容易に入手できるようになったためと考えられます」と記しています。

さらに、青色が採用された理由についてもブランチャード氏は考察しています。Microsoftが1991年に発売したWindows 3.1では、ハイパーリンクは緑色で表示されていました。そのため、「1993年にMosaicのバージョン0.13が青色のハイパーリンクを採用する前、同ブラウザの開発者であるマーク・アンドリーセン氏やエリック・バイナ氏がハイパーリンクを青色に変更する何かがあったに違いありません」と指摘。

ハイパーリンクが青色になった起源を調査する中で、ブランチャード氏は「ベン・シュナイダーマン氏が青色のハイパーリンクとつながりがある」という情報を入手。シュナイダーマン氏は初期のハイパーテキストシステムを開発した人物であり、1983年に登場するHyperTIESの開発者であるダンオ・ストロフ氏の担当教授としてメリーランド大学のヒューマンコンピューターインタラクション研究所に務めていた人物でもあります。なお、HyperTIESはハイパーテキストを採用したハイパーリンクの祖先とも呼ぶべきソフトウェアで、背景が黒色、文字色はシアンでした。


当時、テキストの表示色としてさまざまな色を検証していたというシュナイダーマン氏は、「赤色はリンクの視認性を高めますが、ユーザーの読解力と記憶力を低下させます。一方で、青色は背景が白色や黒色でも視認性が高く、ユーザーの記憶力を妨げることもありませんでした」と語り、青色が選ばれた理由として「視認性」と「読解力・記憶力を妨げない点」を挙げています。

実際、シュナイダーマン氏ら研究チームは1986年に業界誌のCommunications of the AMCでハイパーテキスト関連の論文を発表し、翌年の1987年にもノースカロライナ州で初めて開催されたハイパーテキスト会議に出席し、新しい関連論文を発表。これらの論文の中でシュナイダーマン氏は「我々は多くのデザイン変数について、約20の実証的研究を実施しており、1987年に開催されたハイパーテキスト会議や学術誌、書籍などでその成果を発表してきました」と記しています。

さらに、1988年にもシュナイダーマン氏ら研究チームはハイパーテキスト関連の8つの論文を発表しており、これらの論文ではいずれも文字の色を変える重要性が説かれています。


その後、1989年にティム・バーナーズ=リー氏がWorld Wide Webを考案し、「Information Management:A Proposal(情報管理:提案)」を発表。この「情報管理:提案」の中で、バーナーズ=リー氏はさまざまなトピックについて言及しており、ハイパーリンクに青色を採用することにも興味を示しています。

バーナーズ=リー氏が大学での研究やハイパーテキスト会議などで、ハイパーテキスト関連の論文が多数発表されていることを認識していたことは明らかであり、ハイパーテキストで青色を使用していることを知っていたと考えるのは「当然のこと」とブランチャード氏。ただし、バーナーズ=リー氏が当時開発していたウェブブラウザのハイパーリンクには、青色が採用されていなかったそうです。

その後、1990年にはバーナーズ=リー氏や他の開発者がハイパーテキスト標準化ワークショップに参加するようになったそうですが、この時点でもハイパーリンクに色を採用することについての言及はないそうです。ただし、ワークショップのレポートではハイパーテキストにおける視認性の検証が行われていたことについて言及されており、バーナーズ=リー氏がハイパーリンクにおいても読みやすさを追求しようと考えたことは想像に難くありません。

また、ハイパーテキスト標準化ワークショップに参加した別の研究者によるレポートでも、「ハイパーテキストには色などを用いた動的表現が必要である」と言及されています。そのため、「ハイパーテキスト関連の複数の論文が発表され、色の重要性が強調されたことで、ハイパーテキストの業界標準が徐々に青色になっていったことがハイパーリンクで青色が採用されることにつながった」とブランチャード氏。

1991年にリリースされたSystem 7ではアイコンを選択した際のテキストの背景が青色になり……


1992年に登場したWindows 3.1も、フォルダーやアイコンをクリックしたときのアクティブ状態を示すための色として青色が採用されます。


そして1992年に登場したWindows版FrameMaker 3.0でもハイパーテキストが青色に。Windows版FrameMaker 3.0がカラーモニターに対応していたこともあり青色が採用された一因であるとして、「濃い青色がハイパーテキストに採用された最初の事例」とブランチャード氏は語っています。


その後、ブラウザのハイパーリンクに青色を最初に採用したMosaicが登場するわけですが、青色が採用された直接的な理由は不明としながら、「Mosaicの開発者がティム・バーナーズ=リーと同じように、先行研究を知っていた、あるいは業界のトレンドとして青色が採用されていたことを知っていたことは明らかです」とブランチャード氏は記しています。

MosaicのほかCelloなども早い段階でハイパーリンクに青色を採用しています。具体的にどのようなアプリケーションや論文が開発者に影響を与えたかは不明ながら、1993年までには「青色がハイパーテキストにおける業界標準になりつつあったことが理由」とブランチャード氏は指摘しています。

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