Web3ブランドは、テクノロジーとコネクテッド製品のエクスペリエンスを使って消費者のロイヤルティを構築するために何が必要かを自然に理解している。社歴1年のWeb3ファッションブランド、カルト&レイン(Cult & Rain)は、ARのNFT製品とNFCタグ付きAIデザイン統合のパーカーを組み合わせてロイヤルティ構築を行っている。テクノロジーと製品の統合により、認証、再販、コミュニティのコミュニケーション、マーケティングが促進される。
コンテンポラリーファッションブランド、セオリー(Theory)の元クリエイティブディレクター、ジョージ・ヤン氏が2022年4月にカルト&レインをローンチした。同社は、まずスニーカーコレクション、カルチャーワールド(Cultr World)というメタバースショッピング体験、没入型IRLイベントを行い、11月にはeコマースが続いた。
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コネクテッド製品のNFCチップはすべてのポートとして機能
現在、カルト&レインは2番目のプレタポルテ製品をローンチしている。それは、アプリで同社の世界に独占的にアクセスできる、NFCチップ付きのコネクテッドパーカーである。スキャンできるNFCチップは、製品認証、再販、顧客とのコミュニケーションすべてのためのポートである。それぞれのパーカーには、ARファッションプラットフォームのドレスX(DressX)との提携によりARパーカーNFTも付いてくる。実際のパーカーは製品の購入時にのみ製造され、届くまでに8週間を要するため、購入者はまずNFTにアクセスできる。カルト&レインによると、顧客は物理的な製品を受け取る前にエンドツーエンドの体験ができるため、この設定でブランドロイヤルティが構築されるという。
ヤン氏によると、カルト&ラインはアプリに何でもアップロードすることができ、アップロードしたコンテンツは顧客に直接届くという。NFT購入プラットフォームであるLTD.incが開発したこのアプリは第3四半期にピアツーピアの再販機能をローンチする予定で、カルト&レインは最初のブランドパートナーである。
「この技術の素晴らしいところは限定コンテンツをローンチできる点だ」とヤン氏。「NFCチップには、舞台裏のビデオやブランドの最新情報、私がパーカーを購入してくれた(顧客に)感謝の意を伝えるD2C動画などの限定コンテンツをプリロードすることができる」。
カルト&レインCMOのアンディ・グリフィス氏は次のように述べている。「これは製品を通じたマーケティングであり、Eメールチャネルに取って代わるものだ。NFCチップが広く普及すればEメールを受け取る必要がなくなる。通知は製品を通じて受け取るようになる」。
アプリへのアクセスと統合されたNFCチップ付きのパーカーは、割引や、参加するのにトークンが必要なイベントへのアクセスとしても機能するという。
「将来、そのパーカーを着ている人に向けて、当社がポップアップやイベントを開催する際にそのプロモーションコンテンツをパーカーのデジタルチップに即時にアップロードできるようになる」とヤン氏。「このパーカーはトークンゲートアクセスのパスにもなる。黒いパーカーならイベントの部屋にもっとアクセスできるが、ピンクのパーカーなら特定の部屋にしかアクセスできないというように」。また、それは限定割引のアクセスパスとしても利用できるという。「パーカーの保持者全員にポップアップストア内で24時間限定25%オフというような特典を提供することができる」。
ロイヤルティプログラムの使いやすさと価値が重要
eコマース詐欺防止会社、フォーター(Forter)による2020年の調査では、既存のロイヤルティプログラムアカウントの45%が非アクティブであり、顧客がポイントを追跡したり交換していないことが判明している。
「ロイヤルティプログラムは顧客ロイヤルティを構築するための貴重なツールだが、ブランドはその導入と実行を慎重に検討して、効果的で投資に見合うものであることを確認する必要がある」と述べているのは、コクリエイト(Co:Create)のCEO兼創設者、タラ・ファン氏だ。コクリエイトは企業のWeb3ロイヤルティプログラムのローンチを支援するプラットフォームである。同社は現在、ゲーミングプラットフォームのサンドボックス(Sandbox)でもっとも多くの土地を所有しているゲーム会社のアタリ(Atari)と協働している。「ブランドにロイヤルティプログラムがあっても適切に実行されていなければ、参加率が低くなり低い結果になる可能性がある。たとえば、リワードの交換が難しすぎたりプログラムが効果的に宣伝されていない場合には、顧客には参加する価値が理解されないかもしれない」。
NFCコネクテッド製品のようなWeb3テクノロジーは既存のロイヤルティプログラムの問題の解決策になる可能性がある。スターバックス(Starbucks)などの大手ブランドは顧客向けにWeb3対応のロイヤルティプログラムをすでに開始している。
Web3テクノロジーを使ったコネクテッド製品の裏にある発想は、顧客が1カ所ですべてにアクセスでき、また顧客に自分のアクセスが限定で特別であることを知ってもらうということである。ブランドにとっては、アプリデータを通じてカスタマージャーニーと継続的なメンバーシップすべてにアクセスできるようになるため、収益面のメリットがある。「リワードをトークン化することで、ブランドは顧客が自分の特典を所有できるようにすると同時に、構成可能なテクノロジーを活用して生涯価値を高め、顧客獲得コストを削減することができる」とファン氏は述べている。
実際、Web3の背後にある相互運用性によりNFCチップやリワードなどのWeb3テクノロジーを使っているカルト&レインのようなブランドらは、ほかのブランドとのコラボレーションリワードを提供することでさらに前進することが可能になる。ファン氏は「相互運用性のおかげでブランドは互いに協力してリワードを共有して、顧客エンゲージメントとロイヤルティを高めるネットワーク効果を生み出すことができる」と述べている。
[原文:How web3’s connected fashion products drive brand loyalty]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)