ピンタレストが新アプリ「シャッフルズ」をひっそり開発中:トレンドの短編動画で競合と争わない理由

DIGIDAY

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ピンタレスト(Pinterest)が、写真を優先的に表示できる独立型アプリ「シャッフルズ(Shuffles)」をひっそりと開発中だ。多くのソーシャルメディアアプリがTikTokの動画形式を再現しようとしている時期に、このアプリが登場した。

この新しい共同コラージュアプリは、7月27日にクローズド・ベータ版でリリースを開始し、すでにAppleのアプリストアで50万件近いダウンロードを記録している。iPhoneの無料ライフスタイル・アプリの上位65位にランクインした

口コミでユーザーが拡大

このアプリは、ピンタレスト社が新CEOのビル・レディ氏の指揮のもと、公式にテストした最初の新商品である。シャッフルズは、画像共有ソーシャルメディアプラットフォームであるピンタレストの収益成長が劇的に鈍化している時に、オンラインでテストされたものである。同社のユーザー数は、6月の四半期末時点で約4億3300万人にとどまっている。シャッフルズは、単に他人の投稿をスクロールするだけでなく、ソーシャルメディア上で「インスピレーションを与え、何かを生み出す」というピンタレストの一般的な目的とリンクすることをめざしている。おそらくもっとも注目すべきは、このアプリが、短編動画のエンドレス・フィードという現在のソーシャルメディア・プラットフォームのトレンドから外れていることだろう。

「シャッフルズは、ビジュアルコンテンツを作成、公開、共有するための魅力的な方法だ」と、ピンタレストの広報担当者は電子メールで回答した。「より多くの人々が創造的なインスピレーションを求めて我々のプラットフォームに来てくれるので、我々はピナーやクリエイターがアイデアを実現するのを支援するための新しい方法を継続的に試している。このアプリは最初のテスト段階であるため、現時点でこれ以上共有できる詳細情報はない」。

このアプリは、ピンタレストの革新的なインキュベータチームであるトゥトゥウェンティー(TwoTwenty)によって開発された。このチームは11月に発足し、ピンタレストが対処すべきギャップがあると感じている分野で新製品を迅速に作ることを使命としている。シャッフルズは当初、ピンタレスト・チーム内で立ち上げられ、従業員は友人を招待することができた。同社によると、口コミで有機的に拡大したいという。この数週間で、ソーシャルメディア、特にレディット(Reddit)Twitterにおいて、シャッフルズの招待リクエストが増加している。

ピンタレスト上の画像を簡単に編集できる

シャッフルズにアクセスするには、まずピンタレストのアカウントでサインインする。ユーザーは、自分のフォトギャラリーやピンタレストボード、または新しいピンを検索して画像を選択することができる。ユーザーは、これらの画像を切り取って、「シャッフル」し、コラージュすることができる。また、画像にエフェクトやモーションを加えることもできる。ムードボード風のシャッフルが完成したら、アプリ上で共有したり、ほかのユーザーが「いいね!」を押したり、シェアしたり、コメントすることもできる。また、メッセージスレッドで、別アプリや専用コミュニティの友人と自分のシャッフルズを共有することも可能だ。ハッシュタグ「#pinterestshuffles」は、TikTokで2290万回以上再生されている。あるユーザーは、シャッフルズを使って、伝説のフランス人画家へのオマージュを込めた「モネ(Monet)」というタイトルのムードボードを作成した。

「アプリはシンプルで、機能がごちゃごちゃしすぎていない。知り合いをフォローすることはできるが、リアルなつながりを重視しているようには見えない」と、インフルエンサーマーケティングを研究するUCLA教授のリア・ハーバーマン氏は言う。「ほかのソーシャルプラットフォームにあるような肥大化した機能をすべて使いこなさなければならないのとは違い、簡単に始められる」。

シャッフルズの基本コンセプトは、ユーザーがほかのフォロワーのフィードを無心にスクロールするのではなく、ソーシャルメディア上で積極的に何かを生み出すことを容易にすることだ。開発に詳しい人物によると、このアプリのあるユーザーは、アプリ上で1週間で150以上のシャッフルズを作成したという。

「シャッフルズがこの成長を維持できれば、今年のもうひとつのブレイクアプリであるビーリアル(BeReal)とほぼ肩を並べることになる」とハーバーマン氏は付け加えた。ビーリアルは、率直な写真に焦点を当てたことから、アンチ・インスタグラムと呼ばれ、人気が急上昇。今夏のダウンロード数が800万件を記録した。

TikTokを模倣する競合たち

代理店ディジショップガールメデイア(Digishopgirl Media)の創業者であるキャティア・コンスタンティン氏は、TikTokの対抗馬を作ろうとする競合アプリのラッシュに加わるのではなく、「ピンタレストがその強みを発揮することは理にかなっている」と考えているという。同氏は、ピンタレストが、コアなユーザーたちにシャッフルズを提供することで、彼らが慣れ親しんだ環境のなかでクリエイティブな可能性を発揮できるようにしている気がすると語った。

「私は、シャッフルズの全ユーザーを見れば、それが個人であれ、インフルエンサーであれ、プロのコンテンツクリエイターや企業であれ、単なる短い形式の動画コンテンツ以上のものへの欲求がうっ積していると思う」と同氏は話した。

たとえば、インスタグラムは7月、ソーシャルメディア上で激しい批判を浴びた。アプリが過度に動画中心になっており、人々がフォローしていないアカウントからの投稿をプッシュしているという懸念から生まれたものだった。その結果、インスタグラムは、部分的な撤退に追い込まれた。インスタグラムでは、ユーザーが動画や写真をフルスクリーンで表示できるようにするテストを中断し、ユーザーのフィードに表示されるおすすめの量を抑えた。

「全体的に、ユーザーの間でも広告主の間でも、より魅力的なフォーマットで広告を出そうとする動きがある一方で、最近では、インスタグラムからリンクトイン(LinkedIn)に至るまで、誰もがTikTokを模倣しようとする結果になっている」とコンスタンティン氏は話した。

シャッフルズは話題性か、収益性か

ピンタレストは、シャッフルズをどう拡張するのか、また、ショッピングなど同社のほかの取り組みとの関連性については明らかにしていない。しかし、シャッフルズは、長いあいだ起こっていなかった方法で、ピンタレストの周りに興奮を巻き起こしている。ピンタレストのユーザー数は近年減速しており、今年の第2四半期には、全世界の月間アクティブユーザー数が前年同期比5%減の4億3300万人になったと発表した。

ピンタレストはまた、このプラットフォームをよりショッピングの目的地として考えてもらおうとしているため、シャッフルズはピンタレストに対する認識を再考してもらうためにも重要かもしれない。

最終的には、シャッフルズは素晴らしい体験だが、ピンタレストがこのアプリを収益化する方法を見出すまで、その成功はあまり長く続かないかもしれないとハーバーマン氏は指摘した。「話題性は視聴者の増加に貢献している。しかし、ある時点で、アプリを収益化する必要がある。つまり、このプラットフォームを通じて、人々が作成、閲覧、買い物をする必要がある」と同氏は述べた。

「シャッフルズの最大の成功は、クロスポストしてくれた一握りのクリエイターによってTikTok上でバイラルになることだが、アプリが自分たちのプラットフォームに戻るリファラルトラフィックを見つけられない場合、その成功は短命である可能性が高い」と同氏は語った。

[原文:How Pinterest’s new app Shuffles aims to buck the social video trend]

ANNA HENSEL(翻訳・編集:戸田美子)
Image via Pinterest

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