破綻したシリコンバレー銀行の内部から「CEOが愚かすぎる」という声、「経営破綻の数時間前にボーナス支給」や「最先端テクノロジーに投資しているのに内部の技術は最悪」などさまざまな実態が明らかに

GIGAZINE
2023年03月14日 12時32分
メモ



多くのテクノロジー企業が集まるシリコンバレーでスタートアップへの投資を積極的に行い、独占的な地位を確立していたシリコンバレー銀行が経営破綻しました。これに伴い、シリコンバレー銀行内部の実態が複数メディアにより報じられています。

CNNは「シリコンバレー銀行の行員が、同行のCEOであるグレッグ・ベッカー氏に対して腹を立てている」と報じています。

‘Absolutely idiotic’. SVB insider says employees are angry with CEO | CNN Business
https://edition.cnn.com/2023/03/13/business/svb-employees-angry-at-ceo/index.html


匿名でCNNに情報を提供したシリコンバレー銀行の行員は、同行が財政支援を求める前にベッカーCEOが財政面に問題を抱えていることを公に認めてしまったことを批判しています。シリコンバレー銀行の資産管理部門で働くという匿名の行員は、ベッカーCEOの軽率な発言が「顧客の取り付け騒ぎにつながった」と指摘。さらに、ベッカーCEOの取り付け騒ぎにつながる率直すぎる財政悪化を認める発言を、「全く馬鹿げていた」「ベッカーCEOは非常に透明性が高かったとも言えます。しかし、これはスキャンダルなどでみられるものとは正反対です」と批判しました。

ベッカーCEOの軽率な発言とは、2023年3月8日(水)に発表した2023年第1四半期決算に関する一連の発表を指しています。決算発表の中で、ベッカーCEOは「実質的にすべての証券を売却する」ことや、「22億5000万ドル(約3000億円)の資金を募る」ことを(PDFファイル)発表しています。


上記の発表の後、シリコンバレー銀行の株価は60%暴落しました。


別の行員は「行員はCEOがいかに愚かであるかにただただショックを受けています」と語った模様。なお、CNNはシリコンバレー銀行にコメントを要請していますが、返答はなかったそうです。

ベッカーCEOは3月8日の決算発表から経営破綻までの48時間が「信じられないほど困難なものだった」と語るビデオメッセージを従業員に送ったとBloombergは報じています。報道によると、ベッカーCEOはこのビデオメッセージの中で「このメッセージを伝えるためにここにいるのは非常に心苦しいです」「皆さんの頭の中で何が起こっていて、仕事や将来をどのように不安視しているのかは想像もつきません」「何とか踏みとどまり、お互いを支え合いながら、顧客を支えるため懸命に働きましょう」「ありがとうございます、私の心は皆さんと共にあります」と語り、経営破綻に陥ってしまったことについて行員に謝罪したと報じられています。

SVB CEO Becker addresses employees with ‘heavy heart’ in video | Reuters
https://www.reuters.com/markets/us/global-markets-banks-video-urgent-2023-03-11/


一方で、CNBCは「シリコンバレー銀行の行員が経営破綻の直前にボーナスを受け取っていた」と報じています。

Silicon Valley Bank employees received bonuses hours before takeover
https://www.cnbc.com/2023/03/11/silicon-valley-bank-employees-received-bonuses-hours-before-takeover.html


情報筋によると、シリコンバレー銀行の行員は3月10日に経営破綻し連邦預金保険公社(FDIC)に差し押さえられることとなる数時間前にボーナスを受け取っていたそうです。ボーナスの支払い処理は2022年の行員の業績に対して支払われたものであり、経営破綻の数日前に処理されたものだと情報筋は語っています。つまり、ボーナスの支給が経営破綻の数時間前に行われたのはあくまで偶然である模様。

さらに、CNBCは「シリコンバレー銀行では以前から技術統合が遅れていた」という批評家の指摘を取り上げています。

SVB’s tech failings preceded the historic bank run, critics say
https://www.cnbc.com/2023/03/12/former-svb-employee-offers-insight-into-the-banks-failings.html


シリコンバレー銀行の経営破綻は同行の財政面が原因とされています。しかし、シリコンバレー銀行の長年の顧客や、同行の運営を熟知している元マネージャーなどは、「シリコンバレー銀行はそもそも何の役にも立っていなかった」と指摘。具体的には、現代のビジネスで求められる要求を満たすための技術を採用することをシリコンバレー銀行が拒否してきたことなどが挙げられています。

シリコンバレー銀行の元マネージャーであるという匿名の人物は、同行が最先端のソフトウェアや製品を開発するスタートアップへの投資を行っているにもかかわらず、行内の技術は停滞したままであったと指摘しており、「銀行のバックエンドはすべてバブルガムとワイヤーで構築されていたようなものです」と批判しています。

シリコンバレー銀行に預金を持っていたというスタートアップのCEOも、同行のユーザーエクスペリエンスはしばしばぎこちなく、時には要求を満たすのにかなりの時間がかかることがあったと述べています。

セキュリティ企業・Deep Sentinelのデイビッド・セリンガーCEOによると、政府が新型コロナウイルスのパンデミック支援策のひとつとして発表した給与保護プログラム(PPP)を開始した際、シリコンバレー銀行ではPPPの支援を受ける手続きが「完全に失敗していた」そうです。なお、セリンガーCEOはシリコンバレー銀行が提供するさまざまな自動化サービスを用いてPPPの支給を受けようとしたそうですが、すべて失敗し、最終的には手続きをすべて手動で行わざるを得なかった模様。

さらに、BurnRateのロバート・マクローCEOはTwitter上で「過去5年間、シリコンバレー銀行の顧客でしたが、彼らは銀行としてはひどいものであり、経営破綻に値すると思います。彼らの技術的スタックは1イオタも動いていませんでした。シリコンバレー銀行の料金設定は懲罰的で、シリコンバレーの企業でなければ彼らを目にすることはないでしょう。それに対してMercuryははるかに多くのものをもたらしてくれました」とツイートしています。

As an @SVB_Financial customer for the last 5 years, they are terrible as an actual bank & are getting what they deserve. Their tech stack has not moved 1 iota, their fees are punitive, and if you’re not in SV you’re invisible.@Mercury has done more for me than SVB ever did.

— Robert McLaws (@robertmclaws)


シリコンバレー銀行(SVB)は経営破綻した銀行とは直接関係のない2つの子会社であるSVB CapitalとSVB Securitiesの売却などを検討していることを発表しています。Axiosの報道によると、この買収協議にはJPモルガン・チェースPNCファイナンシャルサービシズといった金融企業が参加しているそうです。

J.P. Morgan, PNC among suitors for SVB holding company
https://www.axios.com/2023/03/13/jp-morgan-pnc-among-suitors-for-svb-holding-company


さらに、シリコンバレー銀行のイギリス部門をHSBCホールディングが1ポンド(約160円)で買収したことも明らかになっています。HSBCは買収において、(アメリカの)シリコンバレー銀行の資産および負債は取引から除外されたと述べており、ノエル・クインCEOは「買収はイギリスでの当行の事業にとって非常に戦略的な意味があります」と声明の中で語っています。

HSBC to buy Silicon Valley Bank UK for £1 in rescue deal | HSBC | The Guardian
https://www.theguardian.com/business/2023/mar/13/hsbc-buy-silicon-valley-banks-uk-tech-startups


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