ロシアの巡洋艦モスクワが対艦ミサイルで沈没した状況をシミュレーションするとこうなる

GIGAZINE
2022年04月20日 21時00分
メモ



2022年4月14日、ロシア軍のミサイル巡洋艦「モスクワ」がウクライナ軍の空対艦ミサイル「ネプチューン」の直撃によって沈没しました。ミリタリー系ニュースサイトのWeapons Releaseが、モスクワが沈没に至るまでのシミュレーションを公開しています。

Simulating the Sinking of the Moskva – Weapons Release
https://weaponsrelease.com/2022/04/18/simulating-the-sinking-of-the-moska/

ロシアの黒海艦隊で旗艦を務めていたモスクワは1979年に進水、1982年に竣工したミサイル巡洋艦です。搭載されているセンサーのほとんどは70年代~80年代のもので、艦橋とレーダー塔の間にあるVLS(垂直発射システム)にはS-300Fという艦対空ミサイルが搭載されていたとのこと。


一方、モスクワを沈めたネプチューンは地対艦ミサイルの3K60 バルを改良したものです。ネプチューンの最大射程はおよそ80海里(約150km)で、145kgの爆薬と焼夷弾を積んで、標的に向かって海面からわずか9mの高さを飛びます。

4月14日の攻撃では、大きく傾いたモスクワの艦橋付近から煙が上がっている様子が確認されています。この画像から、モスクワの艦橋付近に2発のネプチューンミサイルが命中した可能性が指摘されています。

Initial analysis on the images:

In the images of Moskva after the hit. The damage and the active fire seems to originate in the amidships of the ship where the chimney is located and two of the six AK-630s are located.

Some people suggest it is where the two missiles hit it. pic.twitter.com/xEOMoyhw2M

— Granger (@GrangerE04117)


以下の画像は、Weapons Releaseによるシミュレーションの図。赤く細長いアイコンがモスクワで、その左にある飛行機アイコンがウクライナ軍のドローン「バイラクタル TB2」、そして左上の陸地にあるアイコンがネプチューンの発射装置で、赤い円がネプチューンの射程範囲です。Weapons Releaseは、モスクワの位置をネプチューンの最大射程範囲ギリギリに配置しました。


以下の図で円の中心にある水色の細長いアイコンがモスクワです。黄色い円は艦載センサーの範囲。水色の円がレーダーで標的を検出できる範囲で、半径はおよそ18海里(約33.3km)です。そして、左上の赤いアイコンがネプチューンです。


モスクワの基本能力が十分に発揮された場合を想定すると、検出範囲にネプチューンが入ったことで、モスクワからS-300Fが発射されます。なお、ネプチューンに表示されている「VAMPIRE」は対艦ミサイルによる襲撃を示す通信用コード。


ネプチューンの1発目はモスクワから12海里(約22km)、2発目は5海里(約9km)の場所で迎撃されます。迎撃によってネプチューンが大爆発しても、モスクワが破片や衝撃でダメージを受けることはほぼあり得ないといえるとのこと。


しかし、Weapons Releaseは、「Observe(観察)」「Orient(適応)」「Decide(決定)」「Act(行動)」の四段階で意志決定を行うOODAループによって、実際だと「標的の検出」「標的へのターゲット捕捉」「回避行動」にはある程度の時間がかかると指摘。上記の結果はネプチューンの検出に15秒、ターゲット捕捉までに8秒、回避までに2秒かかった場合を想定しているそうです。


そこで、「検出に30秒、ターゲット捕捉に16秒、迎撃に入るまで4秒」と、OODAループに想定の2倍も時間がかかった場合、2発目のネプチューンは4海里(約7.4km)以内で撃墜されるとのこと。

また、「検出に60秒、ターゲット捕捉に32秒、迎撃まで8秒」に設定した場合は、2発のネプチューンはどちらも3海里(約5.6km)以内に到達するそうです。ただし、実際は検出にレーダーやセンサーを使い、艦戦のモスクワがミサイルを回避することはほぼ不可能と考えるので、今回問題となるのは「ターゲットを検出してから捕捉するまでの時間」だとWeapons Releaseは述べています。

そして、OODAループの時間をさらに2倍にすると、ネプチューンの2発ともがモスクワに命中。モスクワは43.6%を損傷し、特にレーダー周辺が破壊されました。この結果から、モスクワがターゲット捕捉に64秒以上かかった可能性をWeapons Releaseは指摘しています。


また、Weapons Releaseは、モスクワが20海里(約37km)を飛んでいたバイラクタル TB2を検出できなかったことにも注目し、モスクワがレーダーを無効化していた、あるいは使えない状況にあった場合を仮定しています。また、モスクワに搭載されている3次元レーダーのMR-710「フレガート」は低空目標に対する探知能力を持たず、海面から10m程度の高さを飛んでいくネプチューンに対しては機能しなかった可能性は以前から指摘されていました。

『一番艦のモスクワ、二番艦のマルシャル・ウスチーノフはMR-710「フレガートM」なので低空目標に対する探知能力を持ちません。。。』-Blaze-イオ-氏とかえふ氏によるミサイル巡洋艦モスクワの低空目標探知能力話- – Togetter
https://togetter.com/li/1873918

もしモスクワがレーダーを使えずに電波傍受に頼っていたとすると……


ネプチューンからのターゲット信号を受け取ってようやくモスクワからS-300Fが発射されます。この時、ネプチューンの1発目とモスクワの距離はわずか1800メートル。


このS-300Fでネプチューンの1発目は撃墜できるものの、その後からやってくる2発目はS-300Fを回避してモスクワに命中する結果となったとのこと。


同様にモスクワがレーダーを使えない状態で、さらにターゲット捕捉に10秒多くかかった場合、ネプチューンはモスクワまで3海里まで気づかれずに到達できるとのこと。この場合はモスクワの迎撃も間に合わず、2発ともモスクワに命中する結果となったそうです。

Weapons Releaseは、「シミュレーションの結果、レーダーやセンサーを最低限無効化しない、あるいはOODAループにかかる時間を変えるだけでも、モスクワの生存率はかなり上がるようでした」と述べています。

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