ジェネレーティブAI はGoogle検索とその広告機能をどう変えるのか?

DIGIDAY

マイクロソフト(Microsoft)が行ったオープンAI(OpenAI)への数十億ドル規模の投資が成果を上げている。「ジェネレーティブAI」という言葉が一般的になり、ChatGPTが記録的なペースで利用者を増やすなど、最新のデジタル革命と一部で呼ばれる現象に拍車をかけているのだ。

1990年代のワールドワイドウェブの普及や、2000年代後半~2010年代前半におけるスマートフォンやソーシャルメディアの大規模な普及と同じく、オープンAIの成功によって、ジェネレーティブAIの技術は間違いなくマーケティング業界の課題として位置付けられることになった。

また、この1月に1億人のユーザーを獲得したとされるChatGPTの採用で、マイクロソフトは業界の主導権も握ったようだ。5月上旬には、サードパーティのパブリッシャーに広告マネタイズツールを提供するチャットAPIをデビューさせている

Googleの新機能も広告枠を用意

「Bing(ビング)」のチャットAPIは、業界の重鎮であるGoogleの発表やピッチに先立つ形で発表された。Googleは、開発者向けカンファレンス「Google I/O」を5月10日に、17日にはYouTube広告の先行販売イベント(「Brandcast[ブランドキャスト]」と呼ばれる)を開催したのに続き、「Google Marketing Live」を23日に控えている。

Google I/Oではサーチラボ(Search Labs)の実験が紹介されたが、最後に披露された新機能「サーチ・ジェネレーティブ・エクスペリエンス(Search Generative Experience:以下、SGE)」は似たようなチャットインターフェイスを採用するなど、マイクロソフト陣営の最近の成功を模倣しようとするものだった。

SGEは簡単にいえば、ユーザーがAIを活用した検索結果に対してフォローアップの質問をするだけで、調べたいトピックに関する情報をすばやく入手できるようになるという機能だ。また、マーケターにとって最も重要なこととして、ページ全体で利用できる専用の広告枠を備えたプロモーションスペースが用意される予定だ。この広告は、オーガニック検索結果に「スポンサー」ラベル付きで挿入されるという(ただし、まだテスト中だ)。

Google広告のバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるヴィディヤ・スリニヴァサン氏は米DIGIDAYに対し、現在のSGEプロジェクトは、どのようなネイティブ広告フォーマットが広告主に優れたパフォーマンスをもたらすのかを観察する「実験的枠組み」の一部だと話す。

「私たちが(これまでの新しい広告フォーマットのテスト方法とは)少し違ったやり方で試しているのは、異なる組み合わせや順列をよりオープンにテストしてみるというものだ」と、同氏はいう。「ユーザーもこの使い方を学んでいるさなかであり、検索そのものがジェネレーティブAIによって大幅に強化されるなか、私たちも遅れずについていきたいと考えている」。

チャットボットにおける広告の可能性

ニュース・ストリート・リサーチ(New Street Research)のパートナーであるダニエル・サーモン氏は投資家向けの書簡で、Googleのアプローチは「攻撃と防御の両面に対応する」ものだとしたうえで、「マイクロソフトが検索市場の覇権を脅かしているとよくいわれるが、Googleも攻勢に出ているようだ」と付け加えた。

実際、Google I/Oで5月10日に行われたピッチは、「バード(Bard)」のプレゼンテーションと比べてうまくいったように見えたと、同氏は述べている。今年初めに行われたバードのプレゼンは失敗に終わり、Googleの株価を下げる結果となっていた。

とはいえ、複数の情報筋が指摘しているように、今回のハイプサイクルは、マーケティングや広告の世界でAIを応用できる可能性をアピールした初の試みではない。過去には、ロケットフューエル(Rocket Fuel)やサイズミック(Sizmek)などが同様のことを試みたが、期待外れに終わっている。

コグニティブ(Cognitiv)でCEOを務めるジェレミ・フェイン氏は米DIGIDAYに対し、同社のような企業(機械学習を利用して広告キャンペーンのブラッシュアップを支援するアドテク新興企業)は、失敗に終わった事業と比較されないようにするため、マーケティングで「AI」などの用語を使うのを意図的に避けてきたと述べている。

「業界は基本的に、AIや機械学習を利用していると話す人に懐疑的だ」と同氏は述べたうえで、今年に入って認知度が高まったことが、そうした冷笑を跳ね返すのに役立っていると付け加えた。

さらに同氏は、「ジェネレーティブAI、とくにチャットボットの現状は広告に適していない」としながらも、Googleがオンライン広告の分野で支配的な地位を維持するには、こうした技術が新しいオーディエンスの発見にどう役立つのかを広告主に示す必要があるとの考えを示した。

検索広告機能は安定?

また、ChatGPTのような技術によって、オンライン広告市場におけるGoogleの支配的地位を揺るがす挑戦者が現れるとの見方が巷に溢れているようだが、時代とともに前進するGoogleの能力の高さを信じている人も多い。

マーケテクチャー(Marketecture)でCEOを務めるアリ・パパロ氏は、チャットボットの機能が今の検索エンジン体験を上回っている分野はないため、Googleは検索の世界で防御壁に守られている状態だと指摘した。ただし、Googleが検索広告機能でこれまで享受してきた高い利益率を維持することは難しくなるかもしれない。

「彼らが(チャットボットを)今と同じように収益化できる可能性はかなり低いと思われる」と、同氏はいう。「このような方法で検索結果を提供するのにかかる実際のコストは、今よりはるかに高いからだ」。

[原文:Google tests generative AI in Search Lab experiments that are key to defending its digital crown

Ronan Shields(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:)

Source

タイトルとURLをコピーしました