プログラマティック広告市場は誰もが互いに取引できるオープンマーケットプレイスから、よりコントロールされた場所へと変わりつつある。とはいえ、この動きがすぐに広まることはないというのが、パブリッシャーであるラッドバイブル・グループ(LADbible Group)の考えだ。
多くの業界関係者が考えているように、そう主張するパブリッシャーは彼らが初めてではないだろう。いまのところ、プログラマティック広告から得られる利益は、そのほとんどがオープンマーケットプレイスからもたらされている。
ラッドバイブルが利益を得るのは、同社のインプレッションがGoogleの統合オークション「オープン・ビッディング(Open Bidding)」で販売されたときか、オープンエックス(OpenX)やシェアスルー(Sharethrough)などのアドテクベンダー経由で販売されたときだ。また、インプルーブ・デジタル(Improve Digital)のような再販業者を通じてインプレッションが販売されるケースもある。再販業者はラッドバイブルにとってエージェンシーのような存在で、インプレッションを別のアドテクベンダーから直接買い付けるバイヤーや、再販契約を通じて購入するバイヤーを見つけ出してくれる。
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この状況について、同社は次のように説明している。オープンなプログラマティック市場からの収益は、GoogleのDemand Manager(デマンドマネージャー)のようなマネージドサービスラッパーソリューションと、Amazon TAMのサーバーサイドのヘッダー入札ソリューションを使用した、クライアントサイドとサーバーサイドの統合の組み合わせによって得られている。これにより、インプレッションの入札流動性を高められる。単にオープンマーケットに参加しているだけでは、インベントリー(在庫)からの利益を向上させることはできない。
キュレーテッドマーケットプレイスの進化
「業界は正反対の見方をしているが、我々のプライベートマーケットプレイスの支出額は、オープンマーケットに比べればまだ少ない」と、ラッドバイブルでプログラマティック責任者を務めるロイ・ビーハリー氏はいう。
ラッドバイブルのプログラマティックパートナーに関する情報が記載されたad.txtファイルを見ると、同社のインプレッションの販売を支援しているパートナーは、現時点で23社となっている。
当然ながら、ラッドバイブルのようなパブリッシャーがめざしているのは、より低いコストでより多くの広告を販売できるようにすることだ。だが、オープンマーケットプレイスの現状を考えれば、このままの形で存続することは難しいかもしれない。その根拠は、キュレーテッドマーケットプレイスの進化にある。
「キュレーテッドマーケットプレイスは、パブリッシャー(セラー)と広告主(バイヤー)、およびSSPのあいだに完全な相乗効果をもたらす」と、ビーハリー氏は話す。「ここで(の売買)は通常、オープンマーケット経由ではなくディール(取引)ベースで行われる。キュレーテッドディールでは、バイヤーと広告主が厳選されたプレミアムなサプライにアクセスできるため、ブランドセーフティ、オーディエンスターゲティング、コンテキスト、およびデイバイスタイプの選択が改善される」。
通常、プレミアムパブリッシャーは、SSPから特定のキュレーテッドマーケットプレイスに自動的にオプトインされるように打診されるため、個々のプライベートマーケットプレイスを設定する負担が軽減される。いまのところ、メディアエージェンシーはいくつかのSSPを選択し、キュレーテッドマーケットプレイスを通じて広告費を投じているようだが、オープンマーケット全体と比べると、そうした広告費は比較的小規模となっている。
「自社(ラッドバイブル・グループ)の状況から見えるのは、そのパイプがうまく機能しているということだ。そう遠くない将来には、より多くの予算を投じるエージェンシーが増えることが予想される」とビーハリー氏は語る。
このような動きが広まれば、パブリッシャーにより大きなメリットがもたらされる可能性がある。
エージェンシーに追随しなければ広告費を手にできない
「この新しいイノベーションの波は、サプライチェーン全体にメリットをもたらすものだ。セラーとバイヤーは、どのサプライパスに取り組むのが適切なのかをより細かく管理できるようになる」と、ビーハリー氏は説明する。「『ザ・ワイヤー(THE WIRE)』(ドラッグ戦争など米国の都市が抱える諸問題を描いたテレビドラマ)に登場するギャングのマルロが悪びれることなく言い放ったように、『相場は上がり続けている』といえる。とはいえ、公平に見れば、プログラマティックのエコシステム全体にとって素晴らしい話だ」。
少なくとも、理論上はそう言えるだろう。だが、現実にはそうならないかもしれない。キュレーテッドマーケットプレイスに向かう動きの多くが、メディアエージェンシーによって進められていることを考えればなおさらだ。アドテク業界でこのような動きが起きたときは、エージェンシーに追随しなければ広告費を手にできなくなることが多い。この業界では、いつも同じことが繰り返されるのだ。
WPPのCEOであるマーク・リード氏は2月に行われた決算報告の場で、「このようなテクノロジーの多くは、適切に受け入れれば当社の成長を助けるものとなり、当社を妨げるものにはならないというのが、我々の常日頃からの見解だ」と語っていた。アドテクの点では、いわゆるアドテク税が減少していることが、DIGIDAYがチェックした業績見通しから見て取れる。もっとも、市場の規模が拡大して効率が高まっているなかでは、十分に予想できることだ。
しかし、この最新の動きが行き渡るまでには、まだ時間がかかるだろう。いまもほとんどの広告主は、オンライン広告インベントリーのオークションで多数の広告主と入札競争するというやり方を、プログラマティック広告の大半で続けている。
[原文:LADbible Group expects latest shifts in the programmatic market to benefit publishers]
Seb Joseph(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:島田涼平)