こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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イケア(Ikea)は小型店舗を全面に打ち出しつつある。
家具の小売業者であるイケアは、過去3年間にわたってプランニングスタジオ(Planning Studios)と呼ぶ小型店舗に取り組んできた。同社は8月、ロサンゼルスのアーケーディアとロングビーチに2つのプランニングスタジオを開設した。また、パリ、モスクワ、トロント、ニューヨーク市にも小型店舗を保有している。
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プランニングスタジオは、同社の標準的な大型店舗が開設されていない地域に住む買い物客にリーチするため開発された。米国内にある新しいプランニングスタジオの面積は約8000〜9000平方フィート(約743から836平方メートル)で、キッチン、バスルーム、ベッドルームなど、都市での生活に不可欠な主要分野に特化している。同社は、ローマ、東京、サンフランシスコなどに、さらに多くのプランニングスタジオ店舗を開設することを計画している。
新しいプランニングスタジオは、イケアの最大のフランチャイズであるインガグループ(Ingka Group)が、新規および既存店舗に投資を計画している30億ユーロ(約32億ドル、約4290億円)の一部だ。この投資は、eコマースの配送センターの役割を果たせる実店舗の開発も主眼としている。イケアは、これまでのプランニングスタジオの業績を示す財務指標を共有していない。
同社の2022年度の合計小売売上額は前年比6.5%増の446億ユーロ(約476億ドル、約6兆3800億円)だった。同社の商品の大半にあたる75%は店舗で販売されたものだ。
ほかの小売業者もイケアと同様に、小型店舗を実験しつつある。たとえばベストバイ(Best Buy)は7月、約5000平方フィート(約465平方メートル)の初の小型店舗をノースカロライナのモンローに開設した。コールズ(Kohl’s)も10月に、ワシントンのタコマに実験的な小型店舗を公開し、現地コミュニティで好まれる娯楽に合わせて、アウトドア用品を幅広く取り揃えている。
米モダンリテールとの対談で、イケア米国法人の(Ikea U.S.)のビジネス開発マネージャーを務めるセルウィン・クリッテンドン氏はプランニングスタジオの展開と、これらの店舗を利用して都市居住者にアプローチする計画について語った。
イケアが小型店舗の運用開始に踏み切った理由は何か?
もっとも重要な点として、イケアが新たな方向性を模索しているのは、小売りの環境が変化しているからだ。
当社はロサンゼルスに2つの新しいタッチポイントを開設した。より大規模な店舗を設置できる地域で多くの人々が訪問しやすいようにするためだ。これら2つの店舗は、ベッドルーム、バスルーム、キッチンという、多くの人々がプランニングやデザインについて支援を必要としている、家庭のなかでも核となる3つの部分にフォーカスしている。
プランニングスタジオがキッチン、バスルーム、ベッドルームに特化する理由は何か?
我々が特化しているのは、人々が理想の自宅を計画してデザインするために、より多くの時間や支援を必要とする部分だ。通常、当社のイケア店舗のを訪れた顧客は、ショールームを見て、これらのエリアのいずれかにたどり着くだろう。
このプランニングスタジオは、小型な店舗であることによって、顧客からの距離が近くなるだけでなく、当社が提供する多くのソリューションを近くで見ることができる。そしてそのために、オンサイトにデザインコンサルタントを常駐させ、顧客をサポートできるようにしている。
イケアは、ホームカテゴリーのあらゆる商品が見つかる大型店舗で知られている。小型店舗をどのように運営するのか?
方法としては、店舗での過去の成功事例を活用する。そのため、耳を傾けて学ぶことを重視している。すべては家庭での生活に関することだ。
当社は、キッチン、バスルーム、ベッドルームが依然として重要な分野であることを知っている。現在のように経済の後退や悪化の可能性に直面している時期でも、人々は自宅での生活の改善を望んでいる。そこで当社は、大型店舗で行っていることから最良の部分を取り入れ、小型店舗に持ち込もうと試みている。
たとえば、当社のイケア店舗を訪問すれば、より多くの種類のキッチンが取り揃えられているのに対して、このプランニングスタジオに置いているのは、その市場に固有のキッチンだ。そのため、我々がサービスを提供する地域のコミュニティが反映されている。都市の中心部に合わせたソリューションや、地域ごとに異なる構成など、顧客にとってより身近な存在になれるのだ。
イケアの大型店舗が小型店舗に置き換えられることはあるか?
我々は、最良のイケアは大型店舗にあると信じている。プランニングスタジオで小型店舗を試みるのは、大型店舗が浸透できない地域に展開するためであり、両社は共存関係にある。今後も重視していく予定だ。
当社が米国全土に展開していくなかで、そのコミュニティに合った最適な、いわゆる当社が「顧客との対面ポイント」と呼ぶものを探し求めていく。プランニングからデザイン、受け取りまでの総合的な体験を提供できる場所や、プランニングスタジオのように、家庭の中でより注意を払わなければならない部分に焦点を当てた、よりきめ細やかな体験を提供できる場所を求めている。
[原文: Inside Ikea’s small-format store strategy: ‘The retail environment is changing’]
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Ikea