落胆の結果と記録的売上という両極端が隣り合わせた2022年第4四半期の状況を踏まえると、楽観視を許さない状況で2023年の幕は開けたと言える。
独立系パフォーマンスマーケティングエージェンシーであるティヌイティ(Tinuiti)の分析によれば、ストリーミング動画や有料ソーシャル、有料検索、eコマースなど、デジタルメディアの大半の分野は収支面で輝かしい業績は見られなかった。
信頼が置けるチャネルやプラットフォームにフォーカス
ただし、マーケティングのパフォーマンス側に傾倒するデジタルチャネルはどこにも、好調を期待できるそれなりの理由があると、ティヌイティのリサーチ部門VPアンディ・テイラー氏は説明する。「パフォーマンスを引き出せる力があることが証明済みのそうしたチャネルやプラットフォームーーつまり、広告支出に対するリターンという点で、有効性が立証されている類のキャンペーンは、有意な成長を遂げた。そして、私が思うに、2023年度最初の数カ月間は、確実に結果をもたらしてくれる、との信頼が置けるチャネルやプラットフォームに、多くのマーケターがフォーカスするに違いない」。
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ティヌイティの「Q4 2022 Digital Ads Benchmark Report(2022年第4四半期広告ベンチマーク報告書)」は、同社がクライアントのために扱っている、Google、Meta、Amazonの3社による約30億ドル(約3900億円)のメディア支出と、ストリーミングビデオへの支出を非特定化分析した結果に基づいている。
第4四半期における注目点の1つは、サイバーファイブ(感謝祭からサイバーマンデーまでの期間)にバーチャルなレジがどれだけ大きな音を立てたか、だった。「消費者は長年の経験を通じて、ブラックフライデーとサイバーマンデーおよびその前後に最大の安値および割引を期待するのが当然となっている」と報告書は記している。「従って、インフレが多くの購買決定に影響を及ぼすなか、買物客が1年の内で最重要であるそれらの日を活用するのは、驚きではない」。
ただし、同報告書における明白な朗報は、基本的にここまでとなる。以下が、同報告書の主要セクションおよびその分析結果だ。
ストリーミング動画
ストリーマーを含む動画の2022年第4四半期スキャッター(アップフロントにおける売れ残り)市場はきわめてソフトであり、そのため広告主勢はそれまでできなかったプレミアムインベントリにアクセスできたと、ティヌイティのテイラー氏は指摘している。2021年第4四半期の場合、プレミアムインベントリはリアルタイム入札(以下RTB)での購入によるインベントリよりも86%高かったが、2022年第4四半期はこの差が62%に縮まった。たとえば、HuluのCPMは2021年第4四半期と比べて22%減だったが、総ストリーミングCPMはわずか4%減であり、これは広告主が予算をRTBインベントリから、より従来的な購入でのインベントリに移行させたことによる。この低需要が続くことを考えると、市場はまださほどひっ迫していないため、ストリーミング動画広告主にとっては、2023年初頭も安値の継続が期待できる。
「我々が仕事をしているブランドの多くは、より高額なインベントリへの移行を始めている。そうしたインベントリがかつてないほどのディスカウント価格で手に入るからだ」とテイラー氏はいう。「ディスカウント価格で提供されている理由は、非常に多くの人々がそうしたプレミアムインベントリが持っていた縛りから自由になりつつあるからにほかならない。そうしたインベントリを求める広告主にとっては、いまは絶好の機会だ」。
有料ソーシャル
2022年第4四半期におけるメタのさまざまなインベントリの平均CPMは、前年比22%減であり、2四半期連続でのマイナスとなった。そしてこれは、広告主にとっては朗報だった。とはいえ、前年比減にもかかわらず、Facebookの2022年第4四半期のCPMは2020年の第4四半期よりも26%高いままであり、インスタグラムのCPMも15%高かった。同社にとっての大きな救いは、絶好調のライバル、TikTokへの対抗策であるリール(Reels)プロダクトの堅調の持続だ。メタのプロパティ全体のインプレッション数は9%増と、2020年以来最大の伸びを見せており、これは主にリール由来のインベントリのおかげであり、同インベントリは2022年第4四半期における広告インプレッションの8.3%を占め、第3四半期の4.7%を大きく上回った。
メタは「パフォーマンスを上げるための最良のツールを広告主に提供しようと努め、革新に励んでいる。2023年の広告主の支出額に関して、そこはかなり重要な部分になると思われる」と、テイラー氏は話す。
ペイドサーチ
Google検索の広告クリック数は過去1年半の間、大きな変動を見せず、そのため価格の伸びは弱く、Googleのテキストおよびショッピング広告の成長パターンも鈍いものだった。全体として、米国におけるGoogle検索支出は2021年第4四半期に比べて10%増(クリック数は8%増)だったが、クリック単価(CPC)はわずか2%増だった。高インフレと金利上昇、そしてソフトランディングな状態ではなく景気後退の気配が濃厚という困難な経済情勢のなか、Googleのテキストおよびショッピング広告の成長レベルは、2021年に比べて小さくなるだろう。
マーケットプレイス
2022年第4四半期のAmazonスポンサープロダクトの支出は前年比17%増で、第3四半期の成長率24%を下回り、同プロダクトのCPCは全体として、2020年以来初めて下がった。スポンサープロダクトのCPCは10の主要プロダクト分野で下がっており、最も顕著な下落が見られたのが、美容、ベビー用品、ペット用品だった。
一方、ウォルマート(Walmart)のスポンサープロダクトのクリック数は、2021年第4四半期に比べて98%増と急成長を見せたが、平均CPCは59%下がったと、同報告書は記している。ROAS(広告の費用対効果)は2022年第4四半期の毎月、最低2倍の高さを見せ、「最も高かったのが11月であり、2022年4月の記録を3倍超上回った」という。
ローカルメディア企業のオムニチャンネルメディアソリューションは、かつてないほど、デジタル化が進んでいる。メディアソフトウェア企業フリークエンス(Frequence)のCEOオリヴァー・ジェイコブ氏は、「デジタルは今後も主要レベニュードライバーであり続けるだろう」というティヌイティの結論に同意する。ただし、「運営費の削減を求める圧力は今後も目にすることだろう」とも、同氏は言い添える。
[原文:Tinuiti’s Q4 digital ads report shows soft pricing but promise for performance channels]
Michael Bürgi(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)