アメリカ・カリフォルニア州のサンフランシスコ・ベイエリアで、大気汚染の観点から、2029年までにすべての住宅からガス給湯器を撤廃し、電気給湯器に交換する法律が2023年3月に採決される予定です。この法律によって、サンフランシスコ・ベイエリアでは2023年3月からガス給湯器の販売が事実上違法となり、住宅の給湯器は順次電気給湯器に交換することが求められます。
Bay Area plan to bar natural gas devices sparks fierce pushback
https://www.sfchronicle.com/climate/article/bay-area-gas-heater-debate-17769394.php
2023年3月に採決される予定の法律は、2027年までにすべての新築住宅で電気給湯器を設置し、2029年までに暖炉の代わりにヒートポンプ式の暖房を設置することを規定します。さらに、既存の住宅に設置された古いガス給湯器が故障した際にも同様のスケジュールで電気給湯器に交換することが求められます。
ガス給湯器から発生する窒素酸化物(NOx)は、光化学スモッグやぜんそく、心血管疾患などの健康問題に関連する化合物で、大気汚染や温室効果、オゾン層の破壊につながると考えられています。
サンフランシスコ・ベイエリアには約180万世帯の住宅が存在しますが、これらの住宅から排出される窒素酸化物のうち、約90%はガス給湯器によって生成されていると考えられています。大気汚染規制当局によると、ガス給湯器を撤廃することでこの地区では、窒素酸化物の削減によって年間89人の死亡を防ぐことができるとのこと。
2023年3月に採決される予定の法律は、明確にガス給湯器を禁止していませんが、期限までに窒素酸化物を排出しない給湯器を設置するように義務化されています。そのため、燃焼によって窒素酸化物の放出が避けられないガス給湯器は撤廃が必要です。
地域住民からのパブリックコメントは、その多くがこの法律を支持するものでしたが、全530通のパブリックコメントのうち160通はこの法律に反対するものでした。反対住民は、設置費用や計画の実行可能性について強い懸念を表明しています。地域住民のマイク・トンプソン氏は「ガス給湯器が壊れた場合、電気工事士から電気給湯器に交換してもらうまでお湯を使うことができないことは本当に公平ですか?」と述べています。
また、光熱費がインフレの影響で高騰することや、暴風雨や火災などで停電することのある電力に、生活する上で必要不可欠な給湯器が依存することに対して不満を漏らす声もあるそうです。
しかし、ベイエリア地区の政策担当副責任者のグレッグ・ナッド氏は「各世帯のガス給湯器による窒素酸化物はそれほど大きな汚染源ではありませんが、約180万世帯ともなると、大きな環境問題につながります」と述べています。また「古いガス給湯器から電気給湯器に交換する際には、アメリカおよびカリフォルニア州の補助金が利用可能です」と述べています。
一方で、交換請負業者や配管工、家庭用暖房の設置業者は、電気給湯器を求める顧客の大規模なニーズに対応する準備ができていないとのこと。ペンシルベニア州に本社をを置くブラッドフォード・ホワイト・コーポレーションのエリック・トラスコキー氏は「電気給湯器製品のサプライチェーンが多くの需要を満たす準備ができていません。この法律は過度に楽観的です」と述べています。
しかし、サンフランシスコ在住のアダム・バック氏は「この法律による電気給湯器への移行は、持続可能なクリーンエネルギーの代替案の開発と展開を市場で明確に活発化させることができます」と述べています。
この法律の制定に関するサンフランシスコ・ベイサイドでの住民投票は、2023年3月15日に実施される予定です。
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