「えこひいき」が組織の成功に役立つとの研究が発表される

GIGAZINE
2023年02月17日 06時00分
メモ



自分が気に入った人物に肩入れし、優遇する「えこひいき」は明らかな不公平であるため組織運営における問題点と思う人が多いはずです。しかし、スティーブンス工科大学のハオイン・シェイ氏らは、「明確な構造化がされていないチームでは、えこひいきをする上司がいる場合、チーム全体の調整とパフォーマンスが向上し、より良い結果が得られます」との研究結果を発表しました。

LMX differentiation as a double‐edged sword: A social hierarchy perspective for understanding the beneficial and detrimental effects of LMX differentiation on team performance – Xu – Personnel Psychology – Wiley Online Library
https://doi.org/10.1111/peps.12564

For leaders, playing favorites can be a smart strategy
https://phys.org/news/2023-02-leaders-playing-favorites-smart-strategy.html

さまざまなチームで、上司が一部の従業員を他の従業員よりも厚遇するなどのえこひいきが行なわれることがあります。自身が上司にえこひいきされていない場合、これらの処遇を不公平と感じる可能性があります。しかしシェイ氏らの研究によって、えこひいきを行なう上司は、その対象者だけでなく、チーム全体にも良い結果をもたらす可能性があることが明らかになっています。

シェイ氏は「チームのリーダーにとって、えこひいきすることは必ずしも悪いことではありません。しかし、えこひいきを行なうことはリスキーです。チームに悪影響を及ぼす可能性がありますが、適切に行なうことでチームの成功にも役立ちます」と述べています。

シェイ氏らの研究チームは、さまざまな業界を代表する中国企業において、200以上の異なるチームを分析しました。シェイ氏らは、従業員とその上司の両方に職場でのパフォーマンスと、チームの雰囲気について聞き取り調査などを行ない、職場における人間関係がさまざまな要因と相互作用することで、チーム全体のパフォーマンスを向上または妨げる方法を明らかにしようとしました。

調査の結果、一部の従業員が権限のある地位に置かれる、または高度な技術を持っているなどの適切な構造化が行なわれているチームにおいて、上司がえこひいきを行なった場合、全体のパフォーマンスが低下しました。

しかし、明確に構造化されていないチームにおいて、えこひいきを行なう上司が存在する場合、チーム全体の協調性やパフォーマンスが向上するなどの良い結果が得られたとのこと。


シェイ氏は「これまでの研究のほとんどは、職場におけるえこひいきの悪影響にのみ焦点を当てていたため、これは重要な発見です。リーダーシップの偏見が現実世界でどのように展開するかについて、より詳細な見方が可能になりました」と述べています。

シェイ氏は今回の調査に「上司が個々の従業員をどのように評価するかについて、期待以上の成果を出すメンバーに対しては『高い評価』を、期待以下の成果を出すメンバーや、挽回や改善の兆しが無いメンバーには『低い評価』を行う」というリーダー・メンバー交換理論を応用しました。

社会的階層がすでに確立されたチームでは、えこひいきはチーム内で不協和音を生み出し、対立の原因となる可能性があります。一方で明確な社会的階層がないチームでは、上司によるえこひいきによって、チームに階層が生まれ、全員がチームに効果的に協力するようになることが判明しています。

シェイ氏は「社会的階層がないチームでは、えこひいきを行なうことで、各メンバーが果たすべき役割を明確にすることが可能です」と述べています。

一方でシェイ氏は「えこひいきを行なうことは、チームに対してプラスの影響もマイナスの影響もあるため、上司は自身のえこひいきがチームにどのように影響しているかについて注意を向けることが重要です」と忠告しています。


さらに、「結成して日が浅いチームは、えこひいきをおこなった場合不安定になる可能性が高いなどの、さまざまなレベルのチームにおいて上司によるえこひいきがどのように作用するかについて、さらなる研究が必要です」とシェイ氏は述べています。

シェイ氏らの調査は、チームのスーパーバイザーや管理職に対して、チームのパフォーマンスを最適化するための明確なガイダンスを提供しています。また、チームのリーダーに対しては、従業員との適切な接し方を行なうことでメンバーと良好な関係を築くことを推奨しています。

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