「シリアルが売り買いされるすべての場所に存在する」:オンライン専業から卸売に進出したマジックスプーン

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昨年の夏、シリアルブランドのマジックスプーン(Magic Spoon)はオンラインでのみ営業していた。現在は、初期のデジタル専業からの拡大を求め、大規模な卸売業務を開始している。

同社は昨年6月、ターゲット(Target)の1300店舗で販売を開始することから、実店舗小売を開始した。9月にはスプラウツ(Sprouts)の300店舗でも販売を開始した。そして1月、ターゲットとのパートナーシップを深めるとともに、ウォルマート(Walmart)、クローガー(Kroger)、アルバートソンズ(Albertsons)の数千店舗にも販売を拡大した。同社の色鮮やかなボックスは現在、米国全体の6800の店舗で販売されている。

可能な限り多くの人々に販売する

マジックスプーンは2019年、「子どもの頃に食べた昔からあるシリアルを、たんぱく質を増やし、糖分と炭水化物を減らして作りなおす」ため、最初はオンラインで営業を開始したと、共同創設者のギャビー・ルイス氏は米モダンリテールに語った。同社のシリアルにはフルーティー(Fruity)、ピーナッツバター(Peanut Butter)、ココア(Cocoa)、シナモンロール(Cinnamon Roll)など各種のフレーバーがあり、ボックスごとに約10ドル(約1310円)で販売されている。同社はパンデミックの初期、自宅で食事をとる人が増えたことから売上が急増し、2020年の春から秋までに3倍に達した。2021年にAmazonでの販売を開始した同社は、足跡を広げ、食料品を対面で買い求めることを望む、またはオンラインで従来ほど多くの品物を購入しなくなった顧客と接触するため、卸売に傾倒しつつある。

ルイス氏は次のように述べている。「めざすのは、全国で可能な限り多くの人々にマジックスプーンの商品を販売することだ。また、そのための手段として、オンライン販売に加えて実店舗小売の割合を増やすことだ」。現在のところ、売上のほとんどは依然としてオンラインによるものだと、同氏は説明している。

マジックスプーンがD2Cブランドとして営業を開始したのは、創設者であるルイス氏とグレッグ・スウイッツ氏が以前、クリケットプロテインバーの会社を設立したことがあり、D2Cチャネルを使い慣れていたのが理由だ。ルイス氏とスウイッツ氏は、顧客ベースを獲得するためにはD2Cがもっとも簡単な方法だと考えており、シリアルをオンラインで宣伝するためのインフルエンサーのネットワークも保有していた。「しかし、我々は最初から、シリアルが売り買いされるすべての場所にこの商品を置くことをめざしていた」と、ルイス氏は述べる。

ルイス氏によれば、マジックスプーンは早期から小売業者の関心を集めていたが、オンラインビジネスを微調整するため展開を延期していた。また、Amazonでも成功を収め、サイトで常に上位にランクインするシリアルブランドとなった。

そして、「我々は、業界とカテゴリーが成熟しつつあることに気づいた。他社が同じような商品を出しはじめていた。そして、オンラインの顧客から、『いつになったら店舗で買えるのか?』毎日のように聞かれるようになったのだ」と、ルイス氏は述べている。

実店舗でのプレゼンス

朝食用のシリアルは、この数年間で飛躍的に増加した。アライドマーケットリサーチ(Allied Market Research)によると、全世界の朝食用シリアル市場は2020年に909億ドル(約11兆9000億円)で、2030年にはそのほぼ2倍の1803億ドル(約23兆6000億円)に達すると予測されている。この分野の成長とともに競争も激しくなり、マジックスプーンのように、糖分の多いシリアルに代わる品を売り出しはじめた企業も現れた。2019年に創設されたスリーウィッシュズ(Three Wishes)も、そうしたブランドのひとつだ。同社のシリアルはひよこ豆から作られるので、グルテンも穀物も含まれていない。同社の商品は、Amazonに加えて全米のウェグマンズ(Wegmans)、ホールフーズ(Whole Foods)、スプラウツ、エレウォン(Erewhon)の店舗で販売されている。

どのようなブランドにとっても、オンライン専業から卸売に移行することは利益になりうると、リコンリテール(Rekon Retail)の創設者であるレベッカ・コンドラット氏は米モダンリテールに語った。「リーチの範囲が広がるし、実店舗でのプレゼンスを高めることができる」と、同氏は述べている。シリアルの場合、「ブランドは商品の隣接性によって評価を受ける。つまり、たとえば商品棚でハニーナッツチェリオス(Honey Nut Cheerios)の隣に置かれることで、消費者の頭のなかではそのブランドが健康的なシリアルだろうと認識されるわけだ」。

プレミアムブランドとして、マジックスプーンはシリアルの棚にあるほかの多くのシリアルよりも高価だ。同社のボックスは、ハニーナッツチェリオスのボックス2つ分の価格だ。マジックスプーンのパッケージは目立つように赤、紫、黄、青などの鮮明な色を使用している。これらはフルーティーペブルス(Fruity Pebbles)やフルーツループ(Froot Loops)といった、糖分が多いシリアルのボックスで一般的な色合いだ。このつながりはマジックスプーンにとって好都合なものになりうる。同社は、顧客がボックスを購入するときに「子どもに戻ったような、強い懐古の気分を味わって」ほしいからだと、ルイス氏は語る。マジックスプーンは、自社の鮮やかな色のパッケージが、より落ち着いた色を採用しているほかの健康志向のシリアルと比べて際立つことに期待している。

さらに、「マジックスプーンはほかのシリアルより高価なことは事実だが、当社の顧客のほとんどはそのような比較を行っていないことが判明した」と、ルイス氏は述べている。「顧客はその代わりに、マジックスプーンをプロテインバー、グリーンジュース、ギリシャヨーグルトなど、ほかの健康食品の代わりにしている。当社の商品は一般的なシリアルであるコーンや穀物入りのボックスとは違う。当社はまったく異なる材料や多量栄養素を使用して完全に新しいシリアルを作り出しており、顧客もそのことを理解している」。

卸売の課題

卸売への展開にはそれなりの課題がある。ブランドは、店舗の棚をすぐに補充できるよう、十分な寮の商品を手元に確保する必要があるため、在庫が問題になることがある。さらに、D2C企業は、顧客が自社商品とどのように接しているかを、自社ウェブサイトで的確に把握できる。しかし店舗では、「顧客が自社のことをどこで知るのかを把握することは困難だ」と、コンドラット氏は話す。「単に商品のそばを通りかかって購入したのか、それともオンラインでブランドを見つけ、店舗に買いに来たのか? 卸売に移行すると、ファーストパーティーデータのつながりが、ある意味失われることになる」。

マジックスプーンは当初D2C企業だったため、展開を計画したとき、2〜3年間の顧客データにアクセスできた。トランザクションや、ヒートマップ、顧客へのアンケートを通じて、人々がどのフレーバーを好んでいるか、そして、たんぱく質が豊富であることや、糖分が少ないシリアルにどれだけの価値を見いだしているのかを知ることができた。このフィードバックをもとに、同社は卸売をする際にも商品を変更しなかった。パッケージや材料はそのまま維持されたと、ルイス氏は述べている。

マジックスプーンは当面シリアルのみに注力し続けるが、将来的に、多くのカテゴリーに進出する可能性を否定していない。

ルイス氏は次のように述べている。「当社はシリアルに大きな可能性があると考えており、ほかの商品やカテゴリーに労力を割く必要を感じていない。5年後、10年後に新たな商品に手を伸ばすかもしれないが、それまではシリアルだけに集中していく」。

[原文:Being ‘everywhere that people buy and sell cereal:’ How Magic Spoon went from online-only to wholesale in six months]

Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Magic Spoon

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