Twitter が新たなブランドセーフティツールを提供:広告主は支出を増やすか?

DIGIDAY

Twitterは、広告検証を手がける企業ダブルベリファイ(DoubleVerify)とブランドセーフティに関する新たな契約を結んだ。広告主を引きつけるのが目的だが、広告支出に占めるTwitterのシェアを増やすにはテックパートナー以上のものが必要だというマーケターもいる。

Twitterとダブルベリファイは、ユーザーのタイムライン内で広告が掲載されている位置を分析する手法を展開し、どのツイートが各広告の上下に表示されているかを把握できるよう、マーケターにより多くのコンテクストを提供しつつある。この機能についての検討は、イーロン・マスク氏にTwitterを売却する数カ月前の2022年6月に始まっており、過去数年間にわたる両社の契約を拡大し、ビューアビリティとアドフラウドに対処するツールを提供する。

新機能は、人工知能(AI)ツールを利用してコンテンツを理解するダブルベリファイの「セマンティックサイエンス(Semantic Science)」チームによって開発されており、1月26日に公開。米国の広告主を対象として、最初はユーザーのホームフィード内の広告、その後にプロフィールや検索広告のようなTwitterのほかの部分に導入される(Twitterは1月第4週、検索結果に表示される広告の新たなベータテストも発表した)。

売上減の予測から、建設的な前進へ

ダブルベリファイのCEOであるマーク・ザゴルスキー氏によると、広告主は、さまざまなトピックに関連するテキストや画像の隣に広告が表示されるタイミングを把握し、キャンペーンに関するリアルタイムのコンテクスト情報について理解を深めることができるようになる。この基準は、メディアのグローバル連盟(Global Alliance for Responsible Media:GARM)といった業界団体が定めたガイドラインに従っている、とザゴルスキー氏はいう。

持株会社のメディアエージェンシーでソーシャル投資を担当する責任者は、「この動きはTwitterにとって建設的かつ合理的な前進だ」と述べる。また、「隣接するものの検証は、我々がこれまで強く求めてきたことであり、頼もしい一歩だ」と、所属を明かすことは避けつつ話した。

「ソーシャルは最近、リスクのあるビジネスになった。ブランドは、隣接するものやコンテクスト、環境に敏感であり、サードパーティツールを備え、投資を保護し適格性を維持することが重要だ」と、インデックスエクスチェンジ(Index Exchange)で南北アメリカ大陸担当シニアバイスプレジデントを務めるマット・バラッシュ氏はいう。

このアップデートの前には、Twitterの売上高が前年比で40%減との予測や、あるいは70%減になるとの予測が報じられていた。株式非公開化前に公表された決算では、2022年第2四半期の広告売上は10億8000万ドル(約1400億円)だった。

未解決なブランドセーフティ問題

一方、マスク氏に買収されて以来、Twitterでヘイトスピーチが増加していることが、研究者によって明かされている。ドイツで起こされた新たな訴訟では、Twitterはこれまで反ユダヤ主義のコンテンツに対して規則を施行していないと主張されている。それでも、一部のマーケターは、ブランドセーフティ面での懸念があるにもかかわらず、Twitter広告をまだ好んで購入しているようだ

ザゴルスキー氏は、今回のローンチからコンテンツの検証が静的環境だけでなく、フィード内環境でも可能なことが示されたと述べている。また、ブランドセーフティ問題は「ユーザー生成コンテンツやソーシャルメディア環境といった最も必要な場に回帰しつつある」という。さらに、「広告主はそこを求めている。ニュースフィード環境の規模と範囲が理由で、実現は容易ではないが、広告主にとっては非常に重要なことだ。エンゲージメントの水準は素晴らしいが、リスクの水準もかなり高い」と付け加えた。

ダブルベリファイとの新たなディールが、Twitterの広告売上増加につながるかどうかも未解決の問題だ。ザゴルスキー氏は、「新機能をベータテストした一部のブランドは支出を再開したか、Twitterに初めて広告を掲載し始めた」と述べながらも、詳細を尋ねられると、ブランド名やさらなる詳細を明かすことを避けた。

だが、過去にTwitterに広告を出稿したことがある企業の最高マーケティング責任者は、同プラットフォームの「リーダーシップの欠如」を理由に、マーケターは支出を控え続けていると語る。ほかのマーケターは、広告が効果を上げなかったため、ブランドセーフティ問題をめぐる広告手控えを正当化するのがさらに容易になっていると述べた。調査会社フォレスター(Forrester)の最新リポートでは、デジタル広告費全体に占めるTwitterのシェアは1.3%にとどまると指摘されている。

Twitterへの支出は増えつつも未来は読めない

監視団体メディア・マターズ(Media Matters)のプレジデントであるアンジェロ・カルソーネ氏によると、「静かに出稿停止する企業のグループ」に含まれる広告主がいた一方で、Twitterに広告販売担当の最高幹部がいなくなったことで、広告主は自身の懸念を伝える場がなくなったという。「まだ出血は止まってすらいない。だが、その傷に対処する者がひとりもいない」と同氏は11月に行われたインタビューで述べている。

広告支出を追跡している企業のなかには、Twitterで進行中の物語が、同社にとって完全に悪材料というわけではないと述べているところもある。広告追跡企業メディアレーダー(MediaRadar)の新たなデータによると、Twitterの広告主の総数は2022年10~12月に増加している。米国市場では、Twitterの第4四半期の広告主は、第3四半期の3000社に対して3700社と増えている。ただし、Twitterに毎月支出する広告主の数は一貫していない。

「Twitterで目にしていることは、ほかのソーシャルプラットフォームとよく似ているが、微妙な差もある」と、メディアレーダーのCEOであるトッド・クリゼルマン氏は、声明で述べている。「多くの大手ブランドがTwitterから手を引いたが、そうでない大手ブランドも多く、支出が増加している例もある。より小規模なTwitterの広告主も、これまでより支出を増やしており、料金面での機会を感じ取っている」。

「安全なプラットフォーム」となり得るか

ブランドにとって安全なプラットフォームとしてのTwitterの未来は、不確かなままだ。マスク氏がTwitterの所有権を得てからわずか数日後に、「信頼および安全性担当チーム」の従業員のうち15%が解雇された。同チームの元責任者は11月に退職し、マスク氏からの批判と同氏の支持者からの脅迫を受けて、自宅から避難したとその後に報じられている。

2022年12月には、2016年に設立され、さまざまな市民・人権団体や他の団体の外部顧問100人などで構成されていた信頼・安全協議会も解散させた。ザゴルスキー氏は、マスク氏自身がTwitter向けのダブルベリファイの新たな測定ツールに関与するかどうか尋ねられ、「関与しない」と述べるとともに、Twitterの新たなオーナー兼CEOには「ほかにもっと重要な仕事がある」と付け加えた。

「編集室のフロアに任された多くのプロジェクトがTwitterにはあるが、これがそのひとつでないのは確かだ。我々はそれを推進し続けてリリースにこぎ着け、Twitterはそのリリースに関わっている」とザゴルスキー氏は語った。

[原文:Will advertisers care about Twitter’s brand safety tools under new DoubleVerify deal?

Marty Swant(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:島田涼平)

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