パブリッシャーの第1四半期広告売上、予測を下回る結果に:「広告主が財布のひもを緩めないまま3月になるのか」

DIGIDAY

2023年の第1四半期、パブリッシャーの広告事業は前途多難な出足となっている。経済の状況を考えれば、市場の逆風を想定した上で収益見通しを立てたメディア幹部たちにとっては特に驚くべきことでもないのかもしれない。

だが、この記事の取材に応じたメディア幹部の3人は、1月の実績が予想を10%から25%下回っていると話し、残り3人の幹部も、業績は2022年に比べほぼ横ばいだと述べている。

匿名を条件に率直に語ってくれたあるデジタルメディア企業の幹部は「2022年第4半期は素晴らしくて、直接的な広告売上が30%から31%の伸びを見せた。今は、競合他社が第4四半期に抱えていた問題が第1四半期に当社にもやってきたということなのだと思う。第1四半期は、予測を20%から25%も下回っている」と話す。その会社では、2020年第2四半期のパンデミック初期の3カ月以外に業績が下がった四半期はこれまでなかったそうだ。

目標を大きく割り込む

大手デジタルメディアパブリッシャー2社も、第1四半期で埋まっている枠は1月25日時点で約75%だと、匿名を条件に米DIGIDAYに語った。そのうちのひとりによれば、これは通常の四半期開始時点でのインベントリー販売目標を大きく割り込んでいるという。もう一人の幹部の会社では、同四半期内の取引が多いため、この数字は実は前年に比べて10%高いそうだ。

四半期目標を下回っているという2人目のメディア幹部は、セオリーとしては四半期の「初日に目標の80%を達成している状態でありたい。そうでない場合、その期は最後まで厳しい日々が続く」と語った。「四半期の最終月まで、というのが鉄則。次の四半期に向かって完全に方向転換できていなければ、それをやらなければならない。四半期のあいだに何があったとしても対応し、その上で方向転換をしなければならない」。

4人目のパブリッシャーも、匿名を条件に、業績が2022年第1四半期比でマイナス約10%の状態で推移していると米DIGIDAYに語った。とはいうものの、最終的には前年と同等で終えられることを願い、期待しているそうだ。

「この四半期はかなり低調だった。最初の2週間は閑古鳥が鳴いていて、その後は完全に途絶えてしまった。少々不安を感じていたところだった」とこの4人目の幹部は話す。営業チームがダボス会議で直接会って話すことができたおかげもあり、1月16日の週が「最初に雪解けを感じた週だった」そうだ。

クライアントとのミーティングの報告書は週ごとに倍増し、営業チームはようやく1週間に5件のクライアントミーティングという個人目標を達成できるようになった、とこの4人目の幹部は語った。

2023年の計画は遅れ気味

今は、第1四半期内に実施されるキャンペーンの獲得に皆が必死になっている。あるパブリッシャーの営業チームの2022年第4四半期の状況にとてもよく似た状況だ。

当時、年度内の予算消化を目指す広告主と、暗雲立ち込める第1四半期を前に今のうちにできるだけの売上を確保しようと動くパブリッシャーとのあいだで、プログラマティックキャンペーンや準備期間の短いキャンペーンが極めて重要な意味を持った。

先ほどの2人目のメディア幹部は次のように話している。「2023年の不透明感を前に、誰もが2022年の第4四半期に手当たり次第稼げるだけ稼いでおこう、というモードにあった。だが、それが第1四半期に悪影響しているとは思っていない。1年のうち、この四半期だけ、つまり第4四半期から第1四半期にかけてだけは繰り越しの影響が極めて少ないからだ」。

とはいえ、2023年の通期計画の商談は例年よりやや遅れ気味で、第1四半期はクライアントの予算が通常より遅れて投入されていることを受けて話が進められている、とこの2人目の幹部は付け加えた。現在、この状況に営業チームが必死に対応しているところだという。

「同四半期内」の動きが活発化

「第4四半期は、同じ四半期内に実施する駆け込みの取引が多い結果となった。おそらく従来と比べても多かったと思う。第1、第2四半期も同様の傾向が続くと考えている」とこの記事の取材に匿名で応じてくれた5人目のメディア幹部は語った。ただ、2023年第1四半期が不振であったにもかかわらず、2022年同期比では、広告事業がわずかながら上昇傾向にあるそうだ。

米DIGIDAYのこの記事の取材に応じた他のパブリッシャーとは異なり、この幹部の会社の広告事業にはプログラマティック広告やディスプレイ広告は含まれない。広告主の短い日程に合わせて手早く簡単に実行できるものとして、短尺の縦長動画やソーシャルメディアでのキャンペーンが活用されているという。

この記事で2人目に取り上げた幹部は、同四半期内に実施する広告についてはディスプレイ広告やプレロール広告などの軽いタッチのキャンペーンに引き続き注力し、マーケティング予算の効果を証明しなければならないクライアントには投資対効果の高いプログラマティックキャンペーンに今後も力を入れていく、と話す。

「このような観点から、プライベートマーケットプレイスやプログラマティックギャランティードに大きく重点を置いていくことになるだろう。2023年の経済の不透明性を考えると、あまりにもトップオブファネル重視の超巨大な、内容の濃い、体験型のキャンペーンが見られることはないと思う」。

この2人目の幹部は1月の最後の週を「第1四半期の最後のあがき」と呼び、そこで第1四半期は見捨てられ2月の初めからは第2四半期に注意を向けることになる、と続けた。唯一の難点は、第1四半期に実施する場合もRFPを3月に出してくることで知られる、メディアおよびエンターテインメント業界のクライアントだ。

通年キャンペーンは過去の遺物に

2022年とは異なり、通年契約を結ぼうというクライアントは減っている。より正確には、2023年の早い段階で通年のキャンペーンに資金を投じようというクライアントが減っている。トップクライアントの約30%に過ぎない、と5人目のメディア幹部は語る。

だが、それらのクライアントに不満を持たれることのないように、この幹部の会社では「従来なら承認しなかったような通年契約向けの割引や特典の供与」を営業に承認したそうだ。たとえば、キャンペーンに関してさらに深い知見を提供したり、新企画のキャンペーンサービスや経験型の追加オプションなどを先駆けて知らせたりしているという。

「通年契約を更新する場合でも、これまで以上に価値を証明する必要があるといって、内容をもっと充実させることを求められる」と5人目の幹部は述べた。

4人目のメディア幹部は、通年契約の広告主に対して2023年は四半期ごとの支払いを認めていると話した。一般的には行っていないやり方だが、ヘルスケア系と通信系のクライアントに特に人気があるそうだ。

この4人目の幹部によれば、あるヘルスケア系のクライアントは「一年分の予算の承認は得ているが、IO(広告掲載申し込み)は四半期ごとにしか送ってこない」いう。「自分たちを守っているのだろうが、当社としては全体の金額で契約を結び、パートナーシップ精神に基づいて割引や特典も付けている。途中で切られたら損失が出ると思うが、今はこのようなことをやるしかない」。

RFPは多いが、遅すぎる

この記事のために米DIGIDAYの取材に応じたパブリッシャーの多くは、RFPの量は2022年と同等または増えているといい、300%増加したという話もあった。だが、そのタイミングがずれているそうだ。特に金融・テック系で顕著だという。

「金融系はかなり遅れていて、例年であれば11月に来るRFPがようやく1月の第3週に届いたくらいだ」と4人目のパブリッシャーは話す。「つまり第1四半期には計上できないかもしれないが、来ただけありがたい」。

その上、クライアント側でレイオフその他のコスト削減策が実施されているにもかかわらず、RFPの予算は削減されていないのが嬉しい驚きだった、とこの4人目の幹部は語る。

この幹部の会社は、セールスフォース(Salesforce)、Google、Amazonなど、広告のテック系のトップクライアントとの商談がどうなるかを恐れていたが、レイオフやテック業界での逆風にもかかわらず、どの企業も1月第4週に第2四半期の広告費投入を約束してくれたそうだ。

2人目のパブリッシャーは、今期はブランデッドコンテンツなどのRFPに比べてプログラマティックギャランティードのRFPが非常に多くなっていると話した。

まだ始まったばかりだが

全体的に見ると、パブリッシャーたちは2023年を好調に終えることができると楽観的であるようだ。総売上では対前年比で増えることすらあるかもしれない。だが、予算の遅れからの巻き返しを図るには「1月に懸命に売り込んでいかなければならない」と2人目の幹部は付け加えた。

最初のメディア幹部は次のように話す。「まだ始まったばかりで、今と同じくらい悪い状況で終わるのかは見えていない。状況を変えることのできる期間は2カ月残っているが、広告主が財布のひもを緩めないまま3月になって、第2四半期にまた今と同じ話をしているかもしれない」。

[原文:Publishers report Q1 ad revenue is pacing 10-25% behind forecasts

Kayleigh Barber(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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