メイクと音楽のコラボレーション。「 コレクタブル体験 」を作成するヒップドット

DIGIDAY

インディメイクアップ企業のヒップドット(HipDot)にとって、コラボレーションは主な収入源であり、そのインスピレーションには事欠かないようだ。

最新コラボはロックバンドとのアイシャドウパレット

2019年の創業以来、ヒップドットは、ラーメン、スポンジボブ(SpongeBob)や『アダムス・ファミリー(原題:The Addams Family)』、ボードゲームのモノポリーなどに関連したメイクアップコラボレーションを多く実施している。だが、2020年にエモロックバンドのマイ・ケミカル・ロマンスとのコラボが大ヒットした後、音楽をテーマにしたビューティコラボレーションに特化したニッチも開発している。ヒップドットは1月17日(火曜日)に音楽テーマの最新ビューティコラボをリリース。これは、ロックバンドのエヴァネッセンスとコーンとのコラボで、CDのような形をしたアイシャドウパレット2点である。

バンドが積極的に関与したコラボ製品

「音楽とメイクは完璧にマッチする。なぜならどちらも自己表現だからだ」と語るのは、ヒップドットの共同創業者兼CEO、ジェフ・セリンジャー氏だ。「音楽は美容と同じようにムードや感情を呼び起こすので、我々は(感情と)絡ませて音楽と美容の体験を結びつけることができる」。

セリンジャー氏は同社の収益、成長、資金調達についてコメントを控えた。Glossyが同社について最後にレポートしたのは2020年12月であるが、同年のヒップドットの収益は300%増加し、2019年にはシード資金で250万ドル(約3.2億円)を調達したという。バンドとのコラボレーションはライセンス契約だが、(ブランドとして)バンドは積極的に関与している。コーンは自分たちのチャネルでこのコラボを宣伝し、1月17日の発売日の時点で製品はすでに売り切れている。ヒップドットによると、どちらのバンドもクリエイティブ、製品、コミュニケーション資料に関与したという。

ヒップドットはパレットを「コレクタブル体験」と呼び、購入客にアルバムのような没入型要素を提供することを狙っている。セリンジャー氏はアルバムのアートワークと配色には聴覚に限定されない音楽制作の長い歴史があると語る。しかし、アルバムやディスコグラフィーがダウンロード可能なMP3やストリーミングになったためにそのような要素は失われている。コーン(のコラボ製品)はアルバム「フォロウ・ザ・リーダー(Follow the Leader)」のジャケットを使い、崖の先端に向かって石けりをしている子どもとその子の後ろに控えているほかの子どもたちが描かれている。パレットの色はアーストーンブラウンとガンメタルシェードだ。エヴァネッセンス(の製品)の「フォールン(Fallen)」アルバムはバンドの共同結成者・リードシンガーのエイミー・リー氏が21歳の誕生日に撮影したクローズアップ写真で、パレットにはさまざまなブルーやグレー、ブラックが揃っている。

マイ・ケミカル・ロマンスのファンの関与

ヒップドットの新しいパレットのインスピレーションの多くは、マイ・ケミカル・ロマンスコレクションの大成功から誕生した。2000年代半ばのこのパンクバンドは2010年以降アルバムを発表していないにもかかわらず、ヒップドットのインスタグラムでマイ・ケミカル・ロマンスが同社のパートナーとして発表されたとき、12月9日の投稿に熱狂的なファンが殺到した。当時、ヒップドットのインスタグラムのフォロワーは16.6万人だったが、この投稿には18.5万回を超えるビューと3600以上のコメントが寄せられた。このコレクションにはシャドウ9色の標準的なスクエアパレット、リキッドアイライナー、両先がブラシになっているアイシャドウブラシが含まれていた。

マイ・ケミカル・ロマンスの製品ローンチのユニークな側面は、ヒップドットがマーケティング資料でファンと協働した点だった。同社はバンドとパレットにインスパイアされたメイクアップルックをファンから募集したり、ファンのフォトグラファーたちにユニークな写真撮影を依頼したり、ソーシャルチャネルでメイクアップに関するマンガを再投稿したりした。ヒップドットは最初のコレクションに続いて、2021年7月に、マイ・ケミカル・ロマンスのアルバム「デンジャー・デイズ(Danger Days)」にフォーカスした別のコレクションを発表。また、アルバム「ザ・ブラック・パレード(The Black Parade)」にインスピレーションを得たパレットは2022年7月にローンチされた。

バンドの世界観を取り入れたコラボ

「役立っているのはバンドがアルバムにまつわるストーリーを作成していることで、マイ・ケミカル・ロマンスは実にこれをうまく行っている。(彼らの)世界が展開しており、そのおかげで我々が使える要素がたくさんある」と述べているのはヒップドットのCMO、モー・ウィンター氏だ。「スーパーファンは典型的な美容インフルエンサーではないが、バンドのストーリーを語るのが大好きで、それはオーセンティックなものだ。そのおかげで、ありきたりになったり、当社を前面に押し出しすぎることが避けられる」。

エヴァネッセンスとコーンのパレットについてもヒップドットは同様のマーケティング戦略を起用するという。たとえば、メイクアップルックをファンに共有するように呼びかけたり、既存のファンのフォトグラファーと協働することなどだ。セリンジャー氏は美容分野で音楽コラボレーションの機会が増えると信じているという。ヒップドットは2019年にケシャ・ローズ(Kesha Rose)というケシャの5点からなる製品ラインをローンチした。ケシャのファンのウェブサイト、ケシャペイア(Keshapeia)によるとラインは2022年12月の時点で販売されていないという。その理由についてセリンジャー氏はコメントを拒否したが、ヒップドットは「素晴らしい体験」を提供したと語っている。

セリンジャー氏は次のように述べている。「消費者からは単にロゴが付いている以上のことが望まれている。彼らは(製品と)とつながりたいと思っている。それこそが(アーティストの)DNAをさらに深く掘り下げて引き出して、我々が達成しようとしていることだ」。

[原文:HipDot is creating ‘collectible experiences’ with music-themed palettes

EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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