ナイキ の「D2Cと卸売の方向性」を女性の小売業者との初コラボから探る

DIGIDAY

ナイキ(Nike)はスニーカー業界においてもっとも幅広いジャンルで多くのコラボレーションを行っている1社である。レブロン・ジェームズ氏などのアスリートからジャックムス氏のようなラグジュアリーデザイナーまであらゆる人々とコラボした新しいシューズを定期的にリリースしている。ナイキは、女性の小売業者との初コラボレーションとなるプレミアムグッズ x ナイキ エアフォース1(Premium Goods x Nike Air Force 1)を1月20日にリリースした。

女性経営者がコラボした女性向けスニーカー

ジェニファー・フォード氏が経営するプレミアムグッズ(Premium Goods)はテキサス拠点のスニーカー小売業者で、20年以上にわたり女性用スニーカーの重要な小売業者としての地位を確立している。フォード氏自身のファッション業界での経歴はそれよりも長く、ロード&テイラー(Lord & Taylor)のジュエリーバイヤーとしてキャリアをスタートし、2004年にプレミアムグッズをオープンした。プレミアムグッズはヒューストンと南部全体で大勢のオーディエンスを抱えており、インスタグラムには10万人のフォロワーがいる。フォード氏にとって、ナイキと自社のコラボレーションは女性向けスニーカービジネスがようやく正当な評価を得たことを意味する。

「20年前には大規模なブランドが展開していた女性用スニーカーは年に1〜2点だった」とフォード氏。「スニーカーは履きにくくて質も低かった。当時はエアフォース1よりもハイヒールの方が快適だったほどだ。どれもがピンクかフクシャ色だった」。

フォード氏は、ナイキのために新しい靴をデザインしただけではなく、その流通に関する決定も支援した。フォード氏は、自分がデザインした2つのカラーウェイ(同氏の娘と姪にちなんでソフィアとベラと名付けられた)の流通に女性が所有するスニーカー小売業者や店舗を選んだ。トロントの女性用スニーカーストアのメイクウェイ(Makeway)やロサンゼルスのサリーズ(Sally’s)などだ。フォード氏が北米での取扱店を決めたのに対して、ナイキが海外での取扱店を選んだ。

D2Cに移行するナイキに対する小売パートナーの不安

ナイキが2021年にD2Cへの移行を発表してザッポス(Zappos)のような長年の小売パートナーから離れ始めて以来、ナイキシューズの流通問題は多くのスニーカー小売業者の心に重くのしかかっている。ナイキにとって最大の小売パートナーらでさえも影響を受けている。フットロッカー(Food Locker)は今後ナイキの占める割合は全在庫の55%未満になると2022年3月に発表している。

ナイキは世界のスポーツウェアの40%以上の市場シェアを持ち、スニーカーストアでもっとも取り扱われているブランドの1社だ。2022年の第3四半期にD2Cの売上が15%増加したことで、同社はD2C戦略を強化し続けている。売上高の50%以上は依然として卸売が占めているが、(卸売と小売の)バランスは変化しつつある。D2Cは2011年の総収益の16%から2021年には35%へと成長。直近の収益報告によると総収益は127億ドル(約1.6兆円)で、直販は51億ドル(約6552億円)と収益の約40%である。

だが、フォード氏はこれまでのところナイキの変更は自分が恐れていたほど大問題ではなかったと述べている。

「(D2C戦略が)最初に発表されたとき、私を含めて皆が恐れを感じた」とフォード氏。「『ナイキから直接購入できるのに、自分の店に来てくれる人などいるのだろうか』と思った」。

フォード氏は、ナイキの担当者と個人的に話して、プレミアムグッズへの納品はほぼ変わらないと保証され、実際にそうだったと述べている。

「我々は依然として新発売のナイキ製品を多く受け取っており、ナイキは直接チャネルでの販売の前に当社に販売するチャンスをくれる」とフォード氏。「我々は協力しており、大きな混乱はない」。

機敏性の高いナイキの戦略

ナイキが12月に発表したように同社の戦略は小売業者への卸売注文を引き続き減少してゆき、新規のパートナーシップを締結しないというものだ。ただし、プレミアムグッズのような既存の小売業者との緊密な協働は計画されている。それにより、ナイキは価値の高いパートナーと良好な関係を維持しながら、D2C販売を強化することができる。

「ナイキのアプローチの優れた点は市場開拓のアプローチで機敏に対応できる点だ」と述べているのは、リテールテック企業、アケネオ(Akeneo)のグローバルマーケティング・戦略担当バイスプレジデント、クリスティン・ナラゴン氏だ。「企業が戦略全体をカスタマーエクスペリエンスにフォーカスする場合、顧客が気まぐれで購入行動が絶えず変化している中でそのフォーカスを維持するのは難しい。なので、方向転換して投資を絶えず微調整したり、市場への様々なルートを重視できる能力を持つことが必須だ」。

[原文:Nike’s first collab with a women’s retailer reflects its DTC-wholesale direction

DANNY PARISI(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

Source

タイトルとURLをコピーしました