“店舗のIoT”導入は意外とお手軽かも! 温度やCO2濃度などをデータ化&活用できる「Gravio」を試してみた【柳谷智宣の「働き方改革に効く!デジタル士魂商才」】

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 店舗経営をする際、温度やCO2濃度などのデータを確認したいことは多い。できれば、アナログではなくデジタルデータに残し、ログを取ったり分析したりしたいところ。とはいえ、個別のソリューションをそろえていては、管理が煩雑になるし、コストもかかる。

 そこで今回は、温度も湿度も大気圧もCO2濃度も計測でき、ドアの開閉や人・物体の動き、ボタンのプッシュなども検知して、そのデータを管理できる「Gravio」を使って店舗データを可視化する方法を紹介する。

エッジウェア「Gravio」で店舗の情報をデータ化する

活用はアイデアしだい。さまざまなセンサーのデータを処理可能

 アステリア株式会社が提供しているGravioは、さまざまなセンサーやネットワークカメラなどのIoTを処理するエッジソリューション。センサーなどからデータを収集し、活用できるエッジ用のミドルウェアで、さまざまな用途で活用できる。

 現在、12種類のデバイスをラインアップしており、ニーズに合わせてレンタルする仕組みだ。今回、いろいろなセンサーやスイッチをお借りできたので、いろいろと使ってみた。

 今回は、温度センサーを冷蔵庫にセットし、内部の温度や湿度の変化を計測して、Excelに記録していく。さらに、故障などで温度が上がったときにはアラートメールが飛ぶように設定したい。これだけでも、飲食店としては助かる機能だ。

 CO2センサーは個室にセットし、CO2濃度によって換気を促す仕組みを構築してみる。ワイヤレススイッチはテーブルに置き、お客さまがスタッフを呼ぶときに利用してもらう。いちいちお客さまに「すいませーん」と呼んでもらうのはお互いにストレスになってしまうからだ。

 今まではトイレの利用回数を知ることはできなかったが、ドア・窓開閉センサーを利用すれば数値化できる。分析すれば、顧客体験を向上できる知見が得られるかもしれない。センサーのデータをどのように活用するかはアイデア次第だ。

さまざまなセンサーを利用できる

ノーコードで利用可能。まずは初期設定の手順を詳しく紹介

 Gravioはノーコードで設定できるので、プログラマーでなくても利用できるのがうれしいところ。とはいえ、初期設定の手順数は多いので、最初は戸惑うかもしれない。

 まずは、センサー類と接続する「Gravio Hub」をセットアップする。「Gravio Hub」のWi-FiにPCを接続し、ブラウザーから「http://192.168.100.1:8080」を開き、初期設定を行う。

 会社や自宅のWi-Fiを選び、接続パスワードを入力すれば、「Gravio Hub」単体でWi-Fiに接続できるようになる。うまく接続できれば、「Gravio Hub」のLEDが白色に点灯する。

 続けて、PCをインターネットにつなぎ直し、「Gravio Studio」という設定・管理アプリと「Gravio HubKit」をインストールする。

 ちなみに、「Gravio Hub」を利用せず、無償貸し出しされるUSB接続GravioセンサーレシーバーをPCにつなぎ、PCをハブにすることもできる。もちろん、この場合はPCを常時起動しておく必要がある。

Microsoft Storeから「Gravio Studio」をインストールする

「Gravio HubKit」をダウンロードしてインストールする

ブラウザーで設定画面にアクセスする

「Gravio Hub」のLEDが白色に点灯すればOK

作業手順は基本的に「3ステップ」

 作業手順は基本的に、3ステップ。1ステップ目で、Gravio Studioでセンサーをペアリングさせてレイヤーを作成する。2ステップ目で、センサーのデータをどうするのかという「アクション」を作成する。3ステップ目で、どのような条件のときにどのアクションを実行するのかという「トリガー」を作成する。

 シンプルではあるが、それぞれのステップで多くの設定項目があるので、マニュアルやGravioのブログなどを参考にして操作していこう。

 今回は、冷蔵庫の中に温度センサーを設置し、取得した温度と湿度を30分ごとにExcelに記録し、温度変化を分析できるようにする。同時に、冷蔵庫の故障などで異常な温度になった場合は、緊急対応が必要なのでメールで報告が飛ぶようにする。

 例えば、仕入れ直後に冷蔵庫がぱんぱんになるとなかなか温度が下がらないので、「しまう場所を工夫しよう」とか「営業前に詰め込むのはやめよう」という知見が得られるかもしれない。アルバイトが誤って電源を切ってしまっても、食材が全滅する前に気が付ければ被害を回避できる。

ステップ2:アクションを設定する

 アクションでは、まず30分おきに取得データをExcelファイルに書き込み、そのファイルをメールで送信するようにしてみる。メールを送信するのは、ローカルファイルはGravio Hubの中に保存されるので、いちいちダウンロードするのが面倒なためだ。

 アクション名は分かりやすく付ければいい。ここでは「温度センサー→Excel」とする。ファイル名を英数字で付けて、設定画面を開く。「ステップの追加」の「+」をクリックすると、利用できるコンポーネントライブラリが開く。その中から「Sensor Data DB」を選択する。

 プロパティが開いたら、エリアやレイヤーを選択。同じセンサーを複数使うなら物理デバイスIDも選択する。「From Previous」と「タイムスケール」で取得間隔を30分ごとに設定する。このとき、必ず「追加」にチェックしておくこと。チェックがないと毎回新しいファイルで上書きされてしまうことになる。

 続けて、ステップを追加し、「Write To excel(Local)」コンポーネントを追加。ファイル名と記録するシート名などを入力する。この状態で再生ボタンを押して、手動実行してみよう。

新しいアクションを作成する

コンポーネントライブラリから「Sensor Data DB」を追加する

センサーを指定し、取得間隔を設定する

「Write To excel(Local)」コンポーネントを追加する

ファイル名などを指定したら、右上の再生ボタンをクリックする

 Excelファイルにデータが書き込まれるのだが、センサーが吐き出す全てのデータが表示されてしまい、ちょっと使いにくい。そこで、アクションの2ステップ目に、「Join」コンポーネントを追加し、「Pre Mappings」のところに以下の2行を追加する。

av.Timestamp = [ToLocal(cv.Payload.Timestamp)]
cv.Payload = {“time”:av.Timestamp,”temperature”:cv.Payload.Data}

 これで、Excelに入力するのは「time」というタイムスタンプと「temperature」という温度だと指定できる。

センサーの出力データをExcelに書き込めた

「Pre Mappings」に出力データを絞り込むコマンドを書き込む

再利用可能な状態でExcelファイルを出力できた

 同じように、湿度センサーを追加し、アクションを作成。Excelファイルに書き込むシートを「Sheet2」に設定し、「Pre Mappings」のところに以下のの2行を追加する。

av.Timestamp = [ToLocal(cv.Payload.Timestamp)]
cv.Payload = {“time”:av.Timestamp,”humidity”:cv.Payload.Data}

 これで、湿度も30分おきにExcelファイルのSheet2に記載されていくようになる。

湿度センサーのアクションも作成し、異なるシート名を指定する

 次に、メールを送信するアクションを作成する。新しいアクションを作成し、「MailSend」コンポーネントを追加。宛先や差出人、添付がファイル、送信サーバーの設定を行う。

 今回は、温度記録のレポートと温度に異常があったときの通知に使うので、アクションを2つ作成。それぞれに適した件名を付けておく。もし本文も送りたければ、「Pre Mappings」に以下をを入力する。

cv.Payload = “内容”

 今回はGmailを設定したのだが、セキュリティ設定で安全性の低いアプリのアクセスを有効にする必要があった。2段階認証も利用できなくなるので、Gmailユーザーの場合は、メール以外の通知方法を選んだ方がよいかもしれない。

「MailSend」コンポーネントを用意する

ステップ3:トリガーを設定する

 いよいよ最後。トリガーを設定して、どのようなタイミングでアクションを実行するのかを設定する。今回は、レポートはタイマートリガー、異常値通知はイベントトリガーで実行する設定を行なう。

 まずは、定期レポートの設定をするので、右上のアイコンから新しい「タイマートリガー」を作成する。「スケジュール」タブで「実行間隔」を設定し、「アクション」タブで作成したExcelに書き込むアクションを選択する。

 続いて、同じようにレポートを報告するメール送信アクションのタイマートリガーを設定する。こちらは、問題がなければ1日1回でよいので「繰り返し」で「毎日」を選択し、「開始時刻」を設定すればいい。これで30分ごとに記録した温度と湿度のデータ1日分が午前10時にメールで届くようになる。

タイマートリガーの設定を行う。実行間隔は30分にする

「アクション」タブで作成したアクションを設定する

 続いて、新しい「イベントトリガー」を作成し、「条件」タブで「冷蔵庫」の「温度」が「10度以上」になったら温度異常を知らせるメール通知を実行するように設定する

デバイストリガーの設定画面で条件を設定する

メール送信のトリガーを選択する

 これで準備は完了。トリガーのスイッチをオンにすると、30分おきにレポートが届き、温度以上があればメールが届くようになる。

トリガーをオンにする

業務に合わせたシステムに仕立てられる「柔軟性」が魅力

 手順は細かいが、大きく3ステップなのでそれほど難しくない。他のセンサーも基本的には今回の手順に似ている。IoTからのデータをもとに、分析したり通知を出す仕組みを自分で構築できるのがとても楽しい。そして、業務に合わせた柔軟なシステムに仕立てられるのも便利だ。

 データを取るタイミングも通知する条件も全てユーザーが自由に設定できる。今回はExcelとメールを利用したが、Office 365やSlack、LINE WORKSなどさまざまなツールを使うこともできる。この柔軟性がGravioの魅力と言える。

 気になる料金プランは、月額500円で4個のセンサーを利用できる「ベーシックプラン」と、月額2万2000円で20個のセンサーおよびエッジ端末のGravio Hubを利用できる「スタンダードプラン」が用意されている。

 今回は、一通りの設定を紹介したので、次回(4月13日掲載予定)は実際に店舗で運用した様子やビジネスチャット連携などのカスタマイズ技を紹介する。

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