干ばつと豪雨がもたらす深刻さ:食糧争奪戦やインフラ機能不全の懸念

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「神様は意地悪である。コロナの次はウクライナ問題に物価高、その次は干ばつと豪雨ではちっとも落ち着けないではないか」という怨嗟の声も聞こえてきそうです。日本は局地的な豪雨が見られるもののまだ極端な状況には陥っていませんが、世界の気象状況はより厳しくなっています。

RomoloTavani/iStock

ここバンクーバー。平年ならば8月の初旬で夏は終わり、中旬にはひんやりし、雨もそれなりに降るのですが、今年はカンカン照りが続き、8月も終わるこの時期でさえ30度近くになるのは記録的であります。湖水の水量は減り、いつもは水を湛えた湖は遠くまで干上がってしまっています。これがアメリカになるとさらに酷く、デンバーからロスに繋がる2300キロに及ぶコロラド川は渇水で厳しい取水制限が敷かれています。

ただ、それでも北米はいい方で欧州になると目も当てられない状態です。特にドイツのライン川は航行不可能な状態になり、物資などの輸送を含めた経済的打撃が襲いかかります。また農業用水の確保も厳しくなっており、穀倉地帯での不作の危機が迫っています。もともと欧州の穀倉地帯であるウクライナでの収穫と輸送が十分ではない状況の中、世界各地で不作が生じた場合、食糧危機は現実のものとなりかねないわけで更なる物価押上げの可能性も出てきます。

農業では欧州全般でトウモロコシや大豆が平年より15%前後収穫が少なくなるとみられているほか、フランスでは原子力発電所の冷却用の川の水が利用できないほど高温となっているようです。欧州では原子力発電所で使う水は海水ばかりではなく、川の水に依存しているところもあるため、冷却水の不足は深刻な問題となりえます。報道では500年ぶりの異常気象ともされます。

中国では厳しい干ばつでしたが、一転して一部では豪雨となり、水力発電の電力規制などは解除に向かっているようです。ただ、農作物への影響は深刻で作物の切り替えを推奨していますが、それもたやすいことではなさそうです。

一方のパキスタンには6月来のモンスーンで豪雨をもたらしており、既に国の1/3が浸水被害を受けたとされます。そもそも同国はスリランカに次いで破綻リスクの高い国家であり政権の不安定さもある中、自然災害も重なり非常に厳しい対応を迫られています。今般、IMFの1500億円規模の追加支援が決定しましたが、2.2億人の人口を抱える同国の再建には焼け石に水のような感じもします。そもそもパキスタンにはスリランカ同様、中国がテコ入れしていたわけですが、雨の日には傘を引き上げるような状態であります。

今年の夏はラニーニャ現象で異常気象になると予想されていました。ただ、当地の春頃の長期予報は「冷夏」でした。実際は真逆となってしまっています。このラニーニャ現象は過去の事例からすると2年連続で起きることが多く来年にかけてこのような異常気象が続くとみられています。

異常気象は世界各地で起き、戦争のような特定地域での問題ではないことからコロナと同様、地球規模での影響が懸念されることになります。例えばカナダは水力発電が主流ですが、湖水が干上がったらどうやって電力供給をするのか、と考えるだけでぞっとする事態です。

そういう点からは今後、食糧争奪戦の可能性やインフラの機能不全といった混乱が未然に防げるという確証はなく、対策が急がれる事態になるかもしれません。今のところ、日本は異常気象ではあるもののそこまで深刻ではないのが何よりですが、蓄えをしておくことは必要かもしれません。特に水源の確保という点では日本は世界的にも恵まれているわけでこれを大事にすることが何より重要になるとみています。

異常気象は昨日今日に始まったわけではありませんが、年々確実に悪化しているように思えます。数十年スパンで見た場合、温暖化はより進み、地球環境に絶大なる変化が訪れるのかもしれません。地球の生物界は繊細であり、微妙な環境変化にも強く反応します。サンマが高級魚になるのはそのごく一例でしかありません。

その環境変化がなぜ、引き起こされたのか、単に人類の引き押した環境破壊だけの問題なのか、地球の生命というもっと遠大なレベルの話なのか、奥深いものがありそうですが、今に生きる我々がどれだけの英知を集められるのか、試されているともいえます。地球環境への着目は否が応でも関心を引き付けるでしょう。我々はそこから目を背けてはいけないともいえます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年8月31日の記事より転載させていただきました。

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