パンデミックで市場が急拡大 ミールキット宅配企業が成長維持に苦戦中

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ミールキットの宅配サービス各社は、パンデミックのあいだに需要の急増を経験したあとで、成長力を維持するために苦闘している。

D2Cのミールキット宅配企業であるフレッシュリー(Freshly)は自社ウェブサイトで、1月17日の注文を最後に「営業を終了する」と告知した。一方でブルーエプロン(Blue Apron)は2022年12月後半にニューヨーク証券取引所(New York Stock Exchange、NYSE)から、上場基準を満たしていないことを理由に、上場廃止の警告を受け取った。同社は株式ごとに1ドル(約130円)の平均終値と、最低5000万ドル(約65億円)の株式時価総額を維持することを要求されていた。

パンデミックにより人々が自宅で過ごし、より利便性の高い食事オプションを選ぶようになっていったとき、ミールキットの宅配に多くの新たな関心が向けられた。2020年7月、パンデミックによる最初のロックダウンが行われたあとで、ブルーエプロンの収益は第2四半期に110万ドル(約1億4300万円)増加した。そして数カ月後には、商品のさらなる拡大を発表した。食料と飲料の複合企業であるネスレ(Nestlé)も、2020年に9億5000万ドル(約1320億円)の契約でフレッシュリーを買収したことで、ミールキット宅配のカテゴリーに参入していった。一方でハローフレッシュ(HelloFresh)は、2020年度第4四半期のアクティブな顧客数が260万人と、前年に比べて46%増加したが、EBITDAは減少していると報じられていた。

パンデミックが主導した成長

ミールキットは、外出できない状況のときに料理に熱中した人々の恩恵を受けたが、その約3年後に人々がパンデミック前の習慣に復帰すると、ミールキットへの需要を維持するのは困難であることがすぐに明らかとなった。さらに、クローガー(Kroger)やアルバートソンズ(Albertsons)のような食料品店がこの分野に参入してきたことで、ミールキット業界での競合は激化した。現在、ミールキット企業のいくつかはレイオフを行い、運用の規模を縮小しつつある。

エモリー大学(Emory University)のビジネススクール(Business School)で助教授を務めるダン・マッカーシー氏は次のように述べている。「これらの企業は、パンデミックにより判断を誤ってしまってしまったのかもしれない。これらの企業は、COVID主導の成長のピークに合わせて生産能力を拡大してしまったのだと考えられる」。

たとえばフレッシュリーは2021年2月、パンデミックにより主導された成長をサポートするために、13万4000平方フィート(約12400平方メートル)の配送センターをジョージア州オーステルに開設し、運営を拡大した。当時同社は週ごとに100万食を超える食材を配達していたと報じられていた。同社が業務を終了するとき、メリーランド州ハワード郡の配送センターの454人の従業員や、フェニックス南西部にある倉庫の329人の従業員など、数百人の従業員がレイオフされた。

消費行動の変化への対応

同様に、ハローフレッシュも近年に配送センターの数を増やしてきた。しかし2022年10月、カリフォルニア州リッチモンドの施設を閉鎖すると公表し、600人の従業員が職を失った。

「施設の老朽化を考慮し、当社は新しくより効率的な拠点に労力を集中し、エブリープレート(EveryPlate)の生産を当社のほかの配送センターに移行する」と、同社は以前、米モダンリテールに語った。ブルームバーグセカンドメジャー(Bloomberg Second Measure)のデータでは、ハローフレッシュは米国のミールキット市場全体の69%を占めている。最新の決算発表では、収益が前年比31.4%増だったと明かしたが、調整後EBITDAは10%減少した。同社はこの利益の減少を、顧客を維持しようと試みたことでマーケティングコストが増加したことが理由としている。

ブルーヨンダー(Blue Yonder)の食料品およびコンビニエンス担当グローバル業界ストラテジストを務めるベン・ウィンクープ氏は次のように述べている。「これらの企業は、理想的な環境ではうまく機能する。問題がないときにはうまく機能するが、サプライチェーンが停止したときや、消費者の行動が変化したときも同様にすばやく適応できるわけではないかもしれない」。

ブルーエプロンがNYSEから上場廃止の警告を受けた数日前、同社は経費を削減し、従業員の10%をレイオフすると語った。2023年には、約5000万ドル(約65億円)相当の経費削減を行うと語っていた。同社の株価は2023年、約90%も下落した。

求められる食料品業界の知識

食料品店各社がミールソリューションのカテゴリーに投資したこともまた、消費者の支出金額をミールキットから奪うことになったと、カンター(Kantar)の食料品小売インサイトのディレクターを務めるロス・クロイド氏は語る。クローガーのミールキットおよび食品配達企業であるホームシェフ(Home Chef)は、2021年の時点で年間売上が10億ドル(約1300億円)を超えていた。「食料品業界には現在、買い物客にとって便利な新しい目的地がある」と、同氏は述べている。ミールキットは多くの場合、食料品店と同レベルの利便性を実現するために苦戦していると、同氏は付け加えた。

ウィンクープ氏は、これらのミールキット企業の多くは、本質的に「食品サービスの分野に入り込んだテック企業」だと語る。同氏は、これらの企業はテックの知識が非常に豊富だが、腐りやすい商品や食品の不足を取り扱うときには特に、サプライチェーンの知識が不可欠であることがこの数年で明らかになったと付け加えている。

実際に、食料品業界の知識は極めて重要だ。デイリーハーベスト(Daily Harvest)は8月、同社の「フランス産レンズ豆とネギのクランブル」が100人近くの入院患者を出した直後、従業員の15%を削減すると語った。食品のリコールの危機があったにもかかわらず、同社はレイオフの原因を経済的状況のせいにしていたと報じられた。

[原文:Why meal kit darlings are struggling to maintain momentum]

MARIA MONTEROS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Blue Apron

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