D2Cマケプレのザ・ファシネイション、スタックコマースが買収:D2Cブランドは認知向上のチャンスに

DIGIDAY

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D2Cマーケットプレイスのザ・ファシネイション(The Fascination)は4月28日、デジタルパブリッシングベンダーのスタックコマース(StackCommerce)に非公開の金額で買収された。

ザ・ファシネイションは、実質的にはD2C分野におけるワイヤーカッター(Wirecutter:ライフスタイル製品のレビューメディア)として2020年に創設され、育毛ブランドのキープス(Keeps)や敷物ブランドのラガブル(Ruggable)といった新興企業の商品をレビューしてきた。その後、レビューコンテンツとともに、厳選されたD2C商品のマーケットプレイスを追加し、マーケットプレイスのパートナーのためのドロップシッパーの役割を果たしてきた。これに対してスタックコマースは、たとえば、CNNストアなどパブリッシャーストアの構築と管理を行い、ブランドに対してパブリッシャーへの有料掲載の交渉を行ってきた。

ザ・ファシネイションの共同創設者であるマット・ヘイズ氏は、今回の買収契約により、ザ・ファシネイションのブランドパートナーは従来のデジタルメディアのパブリッシャーに有料で記事を掲載できるようになると述べている。一方、スタックコマースは、ザ・ファシネイションのパートナーシップを活用し、同社のD2Cクライアントリストにアクセスすることができる。

一流メディアの読者を取り込むチャンス

ヘイズ氏は次のように述べている。「当社が苦労してきたことのひとつが、大規模な配信を行うこと、つまり、サイトへの注目を集めることだ。スタックコマースとのパートナーシップは、当社がアントレプレナー(Entrepreneur)やマッシャブル(Mashable)のような一流の出版物の読者を取り込むチャンスなのだ」。

この買収は、マーケットプレイスをはじめから構築し、オーディエンスを惹きつけようとすることの難しさを浮き彫りにしている。ザ・ファシネイションのようなサイトが、これらのより伝統的な刊行物に匹敵する規模まで拡大するには何年も必要だろう。ヘイズ氏は以前にモーニングブルー(Morning Brew)に対して、ザ・ファシネイションのレビューコンテンツとD2Cのクロス販売の機会は「自社では製造できないブランドの検証」を可能にすると述べた。しかし、その検証もサイトへのトラフィックなしでは不十分だ。

実際にこのパートナーシップは、多くの点で、D2Cブランドに対するザ・ファシネイションの本来の価値提案、すなわち、ブランドの顧客基盤やメインストリームでの認知度を安価に拡大することに役立っている。

レコンリテイル(Rekon Retail)の創設者でマネージングパートナーを務めるレベッカ・コンドラット氏は、すべてのブランドが顧客獲得コストの高騰に苦しんでおり、その理由の一部はAppleのiOS14のプライバシーアップデートの最中にパフォーマンスマーケティングのコストが上昇していることだと説明している。

同氏は、これらのコスト増大は、認知度が高く、小売店や実店舗を持つ大手ブランドよりも、D2Cブランドに強く影響を及ぼす可能性があると付け加えている。

同氏は次のように述べている。「D2Cブランドは、十分に認知されていないため、より大きな影響を受ける。D2Cブランドにとっての困難な戦いとなるのは、シンプルな発見、ブランドへの親近感、ブランドへの認知だ」。

コスト増大への防止策に

ヘイズ氏は、ザ・ファシネイションがこれらの問題の一部の解決策となり得ると語る。

同氏は次のように述べている。「現在、CAC(顧客獲得単価)の増大が叫ばれている。ザ・ファシネイションと提携しているブランドは、極めて明確に定義された層に属することが知られているオーディエンスに浸透できる。これは標準的な、CPC(クリック単価)に資金を費やすというチャネル戦略に対する防止策となる」。

ザ・ファシネイションによる流通を申請したD2Cブランドは1000を超えるが、同社は自らブランドを積極的に採用してもいると、ヘイズ氏は語る。現在のところ、同社は自社マーケットプレイスで約125のブランドを販売している。

ワイヤーカッターやザ・ストラテジスト(The Strategist)と同様に、ザ・ファシネイションはレビューとコマースとのあいだの境界線を注意深く進む必要がある。ザ・ファシネイションは自社マーケットプレイスとアフィリエイトリンクの両方から売上を得ている。同社のチームはすべての商品のテストとレビューを行うことで、この状況を改善しようとしている。

ヘイズ氏は次のように述べている。「当社は、ザ・ファシネイションに掲載するすべての商品を自分でテストしようと試みている。自分たちが毎日使用するような商品でないなら、当社のほかのオーディエンスに勧められるような商品でもない」。

買ってくれなければ意味がない

これに対してスタックコマースは、ロゼッタストーン(Rosetta Stone)のようなブランドのために、編集記事の掲載や、パブリッシャーのマーケットプレイスへの掲載を管理している。しかし、ザ・ファシネイションを買収したことにより、より小規模なD2Cビジネスとのつながりができるようになる。

ヘイズ氏は次のように述べている。「スタックコマースから見れば、当社を買収したことで本当のプレミアムブランドにアクセス可能となり、それらのブランドをこの流通と結びつけることが可能になるだろう。これは我々のすべてにとって有意義なことだ」。

プレミアムD2Cブランドを掲載したマーケットプレイスを構築することで、消費者が気に入ったD2Cブランドをほかのブランドと関連付けづけるようになることが期待できる。

コンドラット氏は、消費者を生み出すためのこのような技法は現在特に重要だと説明している。

同氏は次のように述べている。「10年前は、D2Cブランドをはじめることがいまより簡単だったように感じられる。技術は当時よりはるかに進歩しており、現在ではあらゆるツールがすぐに使用可能なのに、これは奇妙なことだ。優れたショッピファイ(Shopify)ウェブサイトを持つのは良いことだが、人々が自社の商品を買い求めるようにならなければ何の意味もない」。

[原文: DTC marketplace The Fascination is being acquired by digital publishing vendor StackCommerce]

Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via The Fascination

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