プログラマティック の不透明感、ISBAによる調査はどう見たか

DIGIDAY

英国広告主協会(The Incorporated Society of British Advertisers、以下ISBA)とPwCの調査によると、プログラマティック・メディア取引を取り巻く不透明感は徐々に改善しているようだ。しかし、本調査外では研究者らは、完全な透明性を達成するまで長い道のりがあることを強調している。

2020年初頭、上記の二団体は画期的な報告書を作成した。それによると、プログラマティック広告技術を使った広告費のうち、最終的にパブリッシャーたちの懐に入るのは半分以下(49%)であり、サプライチェーン内でアトリビューション不明の「謎の差分」は15%も占めていることが分かった。

調査は大幅に合理化

「謎の差分」という言い回しは広告主の支出の15%が一体誰の懐に入っているのか、監査団体も説明できない現象を言い表したが、この発見は北米、英国両方のCMOたちの間で大きな懸念を引き起こした。その後彼らは、透明性を求める大々的な取り締まりを展開した。

ISBAの「プログラマティック・サプライチェーン透明性調査(The ISBA Programmatic Supply Chain Transparency Study)」は、オンライン出版社協会(Association of Online Publishers、以下AOP)と共に実施され、監査人はDIGIDAYに対し、彼らによるプログラマティック財務監査ツールキット(Programmatic Financial Audit Toolkit)の採用により報告が大幅に合理化されたと報告した。

例えば、最新の調査では作成に9カ月を要したのに対し、初期の調査では18カ月を超えていた。より標準化された報告形式が導入されたことで、監査人による広告インプレッションのバイサイドとセルサイドのプラットフォーム間での比較が改良された。

主な調査結果は次のとおりだ。

  • マッチ率は58%、2020年は12%であった。
  • 帰属不能な広告費、通称「謎の差分」は平均3%に減少。
  • 広告主の支出のうちパブリッシャーの懐に入る金額の割合は8%上昇。

「謎の差分」は解消されたのか

より具体的には、オープンマーケットプレイス(3%)とPMP(約1%)の間で、謎の差分の割合に顕著な違いがあることが明らかになった。このことは、適切にキュレーションされた監査可能なPMPに広告主、エージェンシー、テックベンダー、そしてパブリッシャーが投資することの利点を示している。

PwCのサム・トムリンソン氏は米DIGIDAYに対し、最終的にこのようなレポートを作成する時間を5カ月に短縮することを目指しており、テックベンダーは監査人から要求されたデータフィールドの約80%を提供することができたと述べた。

「(2020年の調査では)多くのテックベンダーはログレベルのデータを共有できず、インプレッションの集合しか提供できなかったが、今回はすべてのテックベンダーがログレベルのデータを提供しており、このことはインプレッションのマッチングに非常に重要だ」と付け加えた。

「80%という数字は完璧ではないが、かなり良い。どのインプレッションもデータ品質はほぼ同じだ。今日のテック運営方法を考えると、全てをマッチすることはできないだろう」。

トムリンソン氏はさらに、DSPとSSPのデータの間で起きる時間のズレから生じる複雑さのために、監査人が特定のインプレッションを照合することが困難になることを説明した。特に異なるプラットフォーム間で広告インプレッションを追跡するための固有のトランザクションIDが存在しない場合はそれが顕著だ。

「短期間に大量のインプレッションが単一のサプライパスに沿って送られた場合、同一のタイムスタンプを持つ複数のインプレッションが発生することになる(中略)データの量が多いことが分析に役立たないという珍しい例だ」と述べた。

容易に実施可能な監査方法の開発に取り組む

ISBAのメディア担当ディレクターであるスティーブ・チェスター氏はDIGIDAYに対し、広告インプレッション間のマッチ率を改善するためにはさらなる作業が必要であり、その結果、調査の精度が向上するだろうと述べた。また、2020年の調査があったことで、ISBAの個々のメンバーによる調査を促したと述べた。

「業界はデータ転送などのプロトコルを、容易に監査できる方法では開発してこなかった。そこで、我々はそれに対処するための標準を開発しようとしている」と同氏は述べ、2020年の調査結果発表以降、広告主によるサプライパス最適化の取り組みが強化されていると付け加えた。

「これらの監査は一度きりではなく、この種の調査はなくならないだろう。実際、ますます一般的になりつつある」とチェスター氏は付け加えた。「多くの広告主は、結果を見て、OMP(オープンマーケットプレース)と比べてPMP(プライベートマーケットプレース)が改善されているのを見ている。PMPの透明性が向上する中で、それらを通じて(より多くの)資金を投入し始めている」。

エビクイティ(Ebiquity)のグループ最高プロダクト責任者であるルーベン・シュラーズ氏は、今回の調査結果について次のようにコメントしている。「実際のところ、ほとんどのブランドは依然としてアドテックプロバイダーからの適切なデータへのアクセスをほとんど奪われており、バイサイドとセルサイドから簡単、かつ構造的にデータを照合することができない」。

「選び抜いたパブリッシャーたちと積極的にPMPをキュレートすることで、より直接的な方法でメディアオーナーと協力することが、この状況を迅速に改善する方法だ」。

いくつかの注意事項も

報告形式に改善があったことは、DIGIDAYがアプローチした全ての情報源から歓迎されたが、重要な注意点を指摘する者もいた。調査につけられた見出しの結論に関しては、ちゃんと文脈の中で解釈されなければならないだろう。

例えば、この分析では、業界大手のプラットフォーマーによるウォールドガーデンの中で費やされた広告費は考慮されていない。これはデジタル広告費全体の約半分であるため、監査人はこのようなプラットフォームが所有・運営する場所(YouTubeなど)での広告費のかなりの部分を分析できなかったことになる。

複数の情報筋がDIGIDAYに語ったところによると、このような大手企業はプライバシー契約を引き合いに出すことが多いため、監査人は個々のパブリッシャーにデータアクセスを要求するなど、より手間のかかる方法を取らなければならない。

監査人がDIGIDAYに確認したところによると、Googleはディスプレイ&ビデオ360などのアドテクウェアのデータを分析のために提出しているが、最新のものには関連する広告サーバデータの分析は含まれていない。

支出追跡における顕著な改善

アダリティクス(Adalytics)のクリジストフ・フラナセック博士はDIGIDAYとのインタビューで、広告主はこのような研究の方法論をさらに精査するべきだと述べた。特に、ログファイルのデータが関連する財務データと一致するかどうかを検証すべきだと指摘した。

さらに、フラナセック博士は、広告費がどのように使われているかをより正確に測定するために、DSPとSSPのデータをパブリッシャーの広告サーバーのログファイルや検証ベンダーのログファイルと相互参照する必要があると主張した。

「デジタルメディアのサプライチェーンにおけるお金の流れを真に理解するには、監査人はログファイルのデータと銀行の明細書または請求書の両方を相互参照する必要がある」と付け加えた。

英国のスーパーマーケットチェーン、テスコ(Tesco)の最高顧客責任者であるアレッサンドラ・ベリーニ氏は、DIGIDAYに送ったEメールの声明において、今回の調査結果は支出の追跡可能性における顕著な改善を示していると述べた。

「2020年の最初の研究の参加者として、これらの結果がデータアクセスと品質の大幅な改善を示していることを非常に喜ばしく思う。私たちは、業界が前向きな変化をもたらすために共に協力してきたことに非常に感銘を受けており、監査プロセスをさらに改善するためのさらなる発展を期待している」と述べた。

[原文:ISBA’s latest programmatic transparency report points to a reduction in the ‘unknown’ ad spend delta, but more work is required

Ronan Shields(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)

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