ChatGPT はどのように使用されているのか、現時点でわかっていること

DIGIDAY

ChatGPTを利用して仕事を早く済ませる方法は、誰でも何かしらある可能性が高い。オープンAI(OpenAI)が開発したこのAIチャットボットの活用は、マーケティングから教育まで、多種多様な業界で進んでいる。

ChatGPTはメール、台本、ソーシャルメディア用のコピーの作成など、さまざまな作業に使用できる。利用するためのアカウント作成も簡単で、メールアドレス、電話番号、氏名だけあればいい。

「うまく機能することに毎回驚かされる」

活用方法は次々と見つかっており、LinkedInやTwitterがその披露の場となっている。グロースマーケティング戦略を提供するマーケティング・エグザミンド(Marketing Examined)の創業者アレックス・ガルシア氏がTwitterに投稿したマーケターのChatGPT活用術には、開封率アップのためのキャッチーな件名を作成してもらう、SEO向上のために特定のトピックに関連するキーワードを探してもらう、ブログ記事のメタディスクリプションを書いてもらう、などが示されている。ゴーストライターのマット・ミック氏がまとめたChatGPTの使い方リストには、「5歳児が相手であると想定せよ」というプロンプトで複雑なトピックの記事を要約した簡潔な説明文を書いてもらう、コンテンツのリサーチのための新しいアイデアを見つけてもらう、などが挙げられている。

仕事での利用があまりにも広がったことから、ChatGPTが書いた文章であるかを検出できる、プリンストン大学の学生が開発したアプリも登場している。

だが、オープンAIが生み出したこの技術はもうすっかり定着したといえる。オープンAIに10億ドル(約1300億円)投じたマイクロソフト(Microsoft)は、同社の検索エンジン、ビング(Bing)にChatGPTを組み込もうと動いている

プロフェッショナルたちがChatGPTをどのように活用しているのか、ChatGPTに対してどのような希望や懸念を抱いているのかについて話を聞いて回ったところ、今はパニック状態を巻き起こしているかもしれないが、そのうちExcelと同じくらいありふれたツールになるだろうという意見が一部で見られた。

クラウドコミュニケーションプラットフォームのシンチ(Sinch)でAIおよびMLの開発ディレクターを務めるピーター・バトニアズ氏は「とてもうまく機能することに毎回驚かされている」と話す。

皆のアシスタント

2022年12月、動画配信サービスのウィスティア(Wistia)でプロダクション責任者を務めるクリス・ラヴィーン氏は、自分のような動画制作者の仕事をジェネレーティブAIが奪えるのか、ちょっとした実験を試してみた。ChatGPTから始めていくつかのAIツールを使用し、15分ほどで動画を制作したのだ。アップルパイの作り方を教えるハウツー動画の台本を求めるプロンプトに対し、ChatGPTは数秒で台本を書き上げた。

「このテクノロジーは、iMovieを初めて使用したときや、iPhoneを初めて手に持ったときと同じ印象を思い出させる」とラヴィーン氏は話す。「現時点でこれは実際に活用できるし、私の台本作成のやり方を今後完全に変えてしまうだろう」。ラヴィーン氏によれば、ChatGPTは、特に自分がスランプに陥った場合の台本作成などで補助的な役割を果たせる。だが、一度設定すればあとは自動化できる、というものではない。

「ChatGPTは0から1に持って行くための素晴らしいたたき台を提供してくれる」とラヴィーン氏は語る。「おかげで作業を早く進めることができる。そこから先は自分の出番。クリエイティブとして、またブランドを守る者として、台本に手を加え、自分の言葉でブランドの声とトーンに仕上げていかなければならない」。

ラヴィーン氏は歯科医である妻の医院のために新しいウェブサイトを制作しているが、そのコピーの作成にもChatGPTを使用しているそうだ。「プレースホルダーとしてテキストを置いて、それを更新できる。『Lorem Ipsum〜』で始まるようなダミーテキストはもう必要ない」とラヴィーン氏は話す。

ラヴィーン氏は現在ChatGPTを毎日使用しているわけではないが、それでも一部の作業は確実に楽になっているという。一方、ウィスティアのYouTubeチャンネルを担当する同僚は、キャッチーなタイトルを生み出すためのブレインストーミングに日々使用しているそうだ。

バトニアズ氏は、Googleは便利ではあるが、求めているものにどのようなキーワードが含まれるのかについてある程度の知識が必要、と指摘する。ChatGPTではそれがまったく必要ない。Googleの場合は結果の絞り込みも難しいが、ChatGPTではプロンプトを使用していくらでも詳細な情報を求めることもできれば、「100ワード以内にまとめて」という方向にも進める。

「検索では、自分が探している内容を取り上げている記事が運よく存在する必要がある」とバトニアズ氏は話す。「ChatGPTでは即、答えが返ってくる」。

PR会社リレントレス・アウェアネス(Relentless Awareness)のマネージングパートナーでシニアメディアディレクターのジョー・ボニーヤ氏も、ChatGPTを利用している一人だ。ボニーヤ氏は「ChatGPTは棚上げしていた物事を前進させることを可能にする」といい、「ベースラインとなるコピーを提供してくれるので、そこから手を加えていくことができる。効率性向上という意味で、経営管理的にはとても重要なツールだ」と語った。

「質より量」に注意

仕事に役立つポテンシャルはさておき、インタビューに応じてくれた人々が共通して口にする原則がある。「ChatGPTの答えをコピーペーストはしてはならない」というものだ。

ラヴィーン氏は「そのまま使用すれば、ブランドへの利益以上に害をもたらすことになる」と話す。

たしかに、ある製品に関するソーシャルメディアのコピーやブログのコンテンツを求めれば、ChatGPTはそれを吐き出してくれるだろう。だがそこには、そのブランドやオーディエンスをよく知っている人が書いた場合と同じようなアイデンティティ感はない。こうした用途では、ChatGPTは最終的なコピーのためではなく、ブレインストーミングの手段として使用するべきだ。

「今後、二流の平凡なコンテンツが大量に出てくるだろう」とラヴィーン氏は語った。「ブランドの重要性はかつてないほど高まっている。そして、適切な情報をキュレーションできるという信頼を獲得することも、かつてないほど重要になっている」。

ChatGPTは求職者の条件を対等にできるか

ラヴィーン氏は「私のような動画制作のベテランが0から1に行くことにChatGPTが役立つのであれば、それは大きなメリットだ」と話す。では、それが新しい分野に挑戦する人たちや、さらには初めての就職に臨む新社会人にどう役立てるかを想像してみよう。ChatGPTは面接後のお礼や連絡がない場合に問い合わせるためのメールテンプレートの最初の草稿づくりにも使用できる。

移民第一世代の低所得世帯の学生を中心に新卒者の就職を支援するフューチャーマップ(FutureMap)の創業者であるシュルティ・バーラト氏は、ChatGPTが求職者にとって大きな変革をもたらす可能性があると感じている。

「私立と公立の両方の大学の経験があるが、私立大学のほうが面接のコーチング、バーチャルAI、履歴書添削などでハイテクのリソースを備えている」とバーラト氏は話す。「公立大学やコミュニティカレッジではこのようなツールは利用できないこともあるが、そうしたノウハウを一部だけに囲い込むべきではない」。

バーラト氏は、履歴書作成に無料で簡単に利用できるChatGPTを使用することを学生たちに勧めている。たとえば、求人情報をChatGPTに入力し、履歴書や送付状に入れるべきキーワードを抽出させる、という使い方ができる。

「簡単なことでもどうしてよいかわからないということがある。就活コーチであれば何度も扱った経験があっても、学生にとっては初めてのことだったりする。ChatGPTではその問題を解消できる」とバーラト氏は話す。「求職活動に関する基本知識という点で、すべての人が同じ土俵に立つことを可能にするツールだと思う」。

若い求職者にとって、面接後のフォローアップや面接を申し込むためのメールテンプレートが役に立つだろう。

注意すべき短所

ChatGPTが強力なツールであるのは明白だ。ただし、利用者が心に留めておくべき短所はある。

ニューヨーク州北部のある新聞社はChatGPTを試すため、地域のニュースや将来的な展望について何を知っているかを尋ねてみた。「ニューヨーク州のウェストチェスター郡かパトナム郡について面白い話は」という質問を投げかけたところ、ChatGPTはそれぞれの郡について簡単な概要を返したが、それにはウェストチェスター郡のヨンカーズがニューヨーク州で4番目に人口の多い市であるという誤った情報が含まれていた。

新聞の編集者はその地域に詳しかったおかげで情報の間違いに気が付くことができたが、誰もが同じようにできるとは限らない。

バトニアズ氏は「情報を見たときに文法的に正しくない、情報が間違っている、とは思わないだろう」という。「文法的には完璧であるだろうし、その話題に本当に詳しい人でない限り、かなり説得力があるように見える。それが最大の難点だ」。

ChatGPTのトレーニングには2021年末までのデータしか使用されていない。つまり、現時点では2022年や2023年に関しては何も知らないということになる。出典や参考資料へのリンクがないため、情報の正確性を確認するすべもない。

「何を尋ねるかについてはとても慎重にならなければならない」とバトニアズ氏は話す。

[原文:What we know about how workers are using ChatGPT so far

Cloey Callahan(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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