「 ブランデッドコンテンツ とその配信こそ、ソーシャルが最大の価値を持つところ」:バイス・メディア・グループ コマーシャルおよび売上戦略部門グローバルEVP ジェフ・シラー 氏

DIGIDAY

バイス・メディア・グループ(Vice Media Group:以下、VMG)の2022年は、自らの予想を下回る結果で幕を閉じた。同社の首脳陣は年頭に、7億ドル(約900億円)の売上目標を掲げていたが、結果はそこに約1億ドル(約130億円)届かなかった。VMGでコマーシャルおよび売上戦略部門のグローバルエグゼクティブバイスプレジデントを務めるジェフ・シラー氏は、それでも2023年に対して楽観的な見通しを立てている。イベントやIP(知的財産)、デジタル動画といったアセットが売上を伸ばし、VMGを前進させてくれるはずだと考えているのだ。

というのも、シラー氏が同職に就いて最初の四半期(同氏は昨年6月、約3年間勤めたグループ・ナイン[Group Nine]/ボックス・メディア[Vox Media]を離れて、9月にVMGに合流した)、これらのプロダクトが広告主の注目を集めていたからだ。マイアミで開催されたアート・バーゼル(Art Basel)では、一部の広告主がVMG傘下のブランドと提携を結んでいる。ほかのパブリッシャー各社が、第4四半期におけるプログラマティックなど、即効性のあるキャンペーンや広告の成長を報告しているが、いまなおバイスのクライアントたちが真っ先に思い浮かべるのは、そのブランデッドアセットだと、シラー氏はいう。

リファイナリー29(Refinery29)のTwitch番組といった、2023年に発表されるVMGの最新プロダクトなどを、同氏のチームはどのように販売していくつもりなのか? ソーシャルメディアのレベニューシェアプログラムを取り入れることの難しさを、同氏はどう思っているのか? その哲学を、シラー氏は「Digiday Podcast」の最新エピソードで語ってくれた。

なお、読みやすさを考慮して、以下のハイライトには若干の編集が加えられている。

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ソーシャルメディアの価値の吟味

受動収益や直接収益に対する私のアプローチは、予測可能性を取り入れることだ。あちこちで行われているアルゴリズムの変更は別として、ネット関連企業と、ディスプレイとプレロールをベースとする間接的なプログラマティックは、安定したビジネスであり、その上に企業は予測可能な収益を積み上げていくことができる。大きなネット関連企業を抱えている企業のほうが、収益の変動は少ない。

プラットフォームのレベニューシェアについては、「人目に付くのは一番いい部分」の典型だ。だから私は、これがパブリッシャーを救う第2の収入源になる可能性を秘めた包括的な方法だとは思っていない。実際には、よほどよいコンテンツがあって、それが視聴回数を稼いでいるのであれば、レベニューシェアを手にできるだろう。そうでなければ、改良は難しいと思う。

ここ6~7年は、そんな状態が続いている。Facebookに「いいね!」が何個ないといけないのか、再生回数が何回ないといけないのかをめぐって、激しい競争が繰り広げられている。そして、そこにあるのは、メタ(Meta)によるアルゴリズムの毎年の微調整と、それに合わせてコンテンツの改良を試みるブランドという構図だ。

くどい言い方をすれば、ディスプレイ、プレロール、プログラマティック……どれも「いいね!」だ。受動的な収入源としてのソーシャルは、最高に面白い差別化されたコンテンツを配信していないパブリッシャーには、その確立はまず無理だと私は思う。その観点からいわせてもらえば、ブランデッドコンテンツとその配信こそ、ソーシャルが最大の価値を持つところだ。こちらが及ぼす効果のほうが大きい。

独自の体験的路線

VMGの第4四半期は、(ほかのパブリッシャー各社が報告しているものとは)やや異なっていたのではないだろうか。その中心にあったのは、シームレスでトランザクショナルなメディアではなく、フランチャイズに対する体験に関するブランデッドコンテンツだったからだ。

昨年はマイアミでアート・バーゼルが開催され、VMGがアート・バーゼルとパートナーシップを結んだ最初の年だったが、そこには人々が実際に顔を合わせることで生まれる、おなじみの社交的でフレンドリーな光景があった。VMGにとって、これはよい兆候だ。ブランデッドコンテンツに大きく依存している一部のパブリッシャーは、逆風による影響を目の当たりにしているからだ。クライアントは、「簡単なものにしかフォーカスしたくない。自社のアセットがあるから、それを押し出したい」とよくいう。

マーケットシェアの拡大というコンセプトについては、VMGはアート・バーゼルとそこでの活動を通して、グループ全体でパートナー3社を獲得した。キャッシュ・アップ(Cash App)とエクスペディア(Expedia)、マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)だ。その取引を見れば、すべてがプログラマティックに導くものであることがわかると思う。こうしたことで、2023年に限らず、VMGは絶好のポジションを獲得できたと思う。

大型キャンペーンでも迅速なスケジュール

体験関連に関して、リードタイムがあることは確かだが、アート・バーゼルの密度は間違いなく高かったと思う。うまくいけばリードタイムは半年だが、今回はそうではなかった。

アート・バーゼルと物理的なスペースで共同作業していたため、いつもより少し遅れての投入になった。今回の経験は、四半期が終わる前にアクティベーションをという考えがいまもクライアントの念頭にあるという事実を示す、いい指標だと思う。何か大きなことがしたい、アーンドメディアを立ち上げたい、その土台を受賞歴のあるクリエイティブにしたいと思えば、バイスと提携したいというクライアントが出てきてくれると思う。彼らの心をつかむのは、ほかにはない市場差別化だ。

2023年に入り、高度な販売手法に関しては、可能な限り戦略性を重視していくつもりだ。しかし、これらとは別に、VMGにとっての最高のアセットは、そのフランチャイズといえる。フランチャイズを抱えているということは、予測が可能であるため、早い段階で人を集められるということでもある。

[原文:How Geoff Schiller is pitching Vice Media Group to the ad market amidst an economic downturn

Kayleigh Barber(翻訳:ガリレオ、編集:島田涼平)

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