「TikTokを政府のスマホなどで使うことを禁止する条項」がアメリカ議会が発表した220兆円規模の歳出法案に含まれる

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アメリカ上院の歳出委員会が2022年12月19日、1.7兆ドル(約220兆円)の規模となる2023年9月30日までの包括的歳出法案を発表しました。この歳出法案には、ウクライナやNATO同盟国への追加支援費で過去最大となった軍事費のほか、「TikTokを政府のスマートフォンやその他のデバイスで使用することを禁止する」という条項も含まれています。

Lawmakers propose banning TikTok on government devices – The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/politics/2022/12/20/tiktok-ban-spending-bill-china/

Congress attempts to ban TikTok on government devices as part of $1.7 trillion spending bill | Engadget
https://www.engadget.com/congress-attempts-ban-tiktok-on-government-devices-through-17-trillion-spending-bill-204028363.html

Giant Omnibus Bill Mandates Online Seller Transparency, Cracks Down on TikTok | PCMag
https://www.pcmag.com/news/giant-omnibus-bill-mandates-online-seller-transparency-cracks-down-on-tiktok

TikTokは世界中で強い人気を誇るSNSですが、運営企業が中国に本拠を置くByteDanceであることから、中国政府との対立を深めるアメリカ政府および政治家たちは、TokTokに安全保障上の懸念があると主張しています。2020年にはドナルド・トランプ元大統領がアメリカ国内でのTikTok使用を禁止する大統領令に署名しており、この大統領令が後のジョー・バイデン大統領によって撤回された後も、政府はTikTokに厳しい目を向けています。2022年12月にはマルコ・ルビオ上院議員らの超党派議員グループが、国内でのTikTokの営業を禁止する法案「ANTI-SOCIAL CCP Act(反社会的中国共産党法)」を議会に提出しました。

また、12月14日にはジョシュ・ホーリー上院議員らが提出した「政府のデバイスに関するTikTok禁止法」が、全会一致で上院を通過しました。この法案は、「特定の個人がアメリカまたは政府機関によって発行されたデバイスでTikTokをダウンロードあるいは使用すること禁止する」というものです。なお、すでにアメリカでは13州がTikTokの使用禁止に向けた動きを進めているとのこと。

「TikTokを政府のスマホなどで使うことを禁止する法案」が上院で全会一致で承認、アメリカでは既に13州がTikTok禁止措置を講じている – GIGAZINE


そして12月19日に発表された2023年度の包括的歳出法案に、ホーリー上院議員らの「TikTok禁止法」を基にした条項が盛り込まれました。歳出法案が可決されれば、連邦政府機関の従業員は「TikTokと、ByteDanceまたはByteDanceが所有するエンティティによって開発・提供される後継アプリケーションまたはサービス」を、政府のハードウェアにインストールしたり使用したりできなくなります。

法案では、一般サービス局と行政管理予算局が2月中旬までに、政府所有のデバイスからTikTokを削除するためのガイドラインを作成することとなっています。なお、一部の法執行機関や国家安全保障に関する機関、セキュリティ研究などに使用する場合は例外として、TikTokの使用が認められるケースがあるとのこと。

アメリカの戦略国際問題研究所でシニアヴァイスプレジデントを務めるジェームズ・ルイス氏は、「人々は中国が敵対的な大国であるという事実を受け入れています」とコメント。すでに中国は、FacebookやTwitterなどアメリカ企業が開発した一部のアプリの使用を禁止しており、TikTokは有罪であろうとなかろうとこの戦いに巻き込まれていると指摘しています。


ByteDanceは国家安全保障に対する懸念について、長らくアメリカ政府の省庁間委員会である対米外国投資委員会(CFIUS)と協議を重ねてきました。匿名でワシントン・ポストに証言した4人の情報提供者によると、TikTokはByteDanceの意思決定をアメリカ事業から切断し、取締役会やCEOの任命についてアメリカ当局に拒否権を与えるほか、アメリカスタッフの雇用基準もアメリカ当局が設定できるようにするなど、大幅な譲歩を行ってきたとのこと。

また、アメリカのユーザーデータに中国当局やByteDance本社の従業員がアクセスするのを防ぐため、「プロジェクト・テキサス」という内部システムの再構築にも、TikTokは15億ドル(約2000億円)以上を費やしているそうです。しかし、ByteDanceは2022年8月にこれらの計画をCFIUSに提案したものの、当局からの承認は記事作成時点でも得られていないと報じられています。

TikTokの広報担当者であるBrooke Oberwetter氏は、政府が支給したデバイスでTikTokの使用を禁止するという条項について、国家安全保障の利益を守る役には立たないと指摘。「私たちは、議会がTikTokの国家安全保障問題のレビューについて結論を出すよう政権に促すのではなく、政府のデバイスでTikTokを禁止するために動いたことに失望しています」「CFIUSと検討中の合意は、連邦および州レベルで提起されたセキュリティ上の懸念に有意義な対処を行います。これらの計画は、アメリカにおける最高レベルの国家安全保障機関の監視下で策定されたものです」と述べました。

なお、ルイス氏は過去20年間に中国のサイバー活動が増加していることを懸念事項とするのは正当だと認めつつも、「政府のデバイスでTikTokを禁止する」ことについては、セキュリティの状況を大きく変える効果はないだろうとの見解を示しています。

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