ウニが骨格だけになって大量死する事態が発生、サンゴ礁の「庭師」が消えてサンゴ礁が大ダメージを受ける可能性も

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紅海の北部に位置するイスラエルのエイラト湾(アカバ湾)で、ウニの一種であるガンガゼ(Diadema setosum)が大量死する事態が発生しています。ウニはサンゴ礁の健康を維持する上で重要な役割を持っているため、地元のサンゴ礁に大ダメージが及ぶ可能性もあると指摘されています。

Mass mortality of the invasive alien echinoid Diadema setosum (Echinoidea: Diadematidae) in the Mediterranean Sea | Royal Society Open Science
https://doi.org/10.1098/rsos.230251


Within just a few months a deadly epidemic ki | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/990130

Mystery pathogen is stripping sea urchins of their flesh and turning them to skeletons — and it’s spreading fast | Live Science
https://www.livescience.com/animals/mystery-pathogen-is-stripping-sea-urchins-of-their-flesh-and-turning-them-to-skeletons-and-its-spreading-fast

ガンガゼは毒を持つ細くて長い針が特徴のウニの一種であり、日本を含むインド太平洋海域に広く分布しています。近年では紅海のエイラト湾からスエズ運河を通って地中海にも進出し、ここ20年ほどでイスラエル北部やトルコ南部の地中海沿岸でも、外来種として個体数を増やしてきたとのこと。

ところが2023年の初頭から、地中海でガンガゼの大量死が報告され始め、その数カ月後には紅海でも同様に大量死が確認されるようになりました。ガンガゼなどのウニはサンゴ礁の健康維持にも重要な役割を果たしているため、この事態がサンゴ礁に影響を及ぼす可能性も危惧されています。

エイラト湾で発生したガンガゼの大量死について報告したテルアビブ大学のオムリ・ブロンスタイン博士が問題について語る動画が、YouTubeで公開されています。

Deadly epidemic killed all the black sea urchins in the Gulf of Eilat – Great threat to the reef – YouTube
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外来種について研究しているブロンスタイン博士のチームは、地中海で個体数を増やしているガンガゼに以前から注目してきたとのこと。


ガンガゼは2006年にトルコ南部で、2016年にはイスラエルの地中海沿岸でも発見され、2018年以降は指数関数的に地中海での個体数を増加させています。


ところが2023年初頭から、地中海でガンガゼの大量死が報告されるようになりました。やがて大量死は紅海にも広がり、エイラト湾ではガンガゼがほぼ絶滅状態になってしまったそうです。


ガンガゼはサンゴ礁に生える余分な藻類を食べることでサンゴに当たる日光を増やし、サンゴ礁の健康を保つ役割を持っているため、ガンガゼの大量死はサンゴ礁にも悪影響を及ぼす可能性があるとのこと。ブロンスタイン博士は、「ガンガゼはサンゴ礁の健全な機能にとって重要な種と考えられています。ウニはサンゴ礁の『庭師』であり、サンゴと日光を奪い合う藻類を食べ、藻類がサンゴを占領して窒息させるのを防ぐのです。残念ながらガンガゼはもはやエイラト湾には存在せず、紅海のさらに南でも急速に姿を消しつつあります」と述べています。


エイラト湾でガンガゼの大量死が確認された当初は、海域がホテルや工業地帯に近かったため、何かしらの化学物質が原因なのではないかと推測されていました。しかし、すぐに大量死が非常に広範囲にわたっていることが報告され、原因は一部地域に限定されたものではないことが判明。研究チームは、1983年にカリブ海のウニに大打撃を与え、2022年にも流行した病原性を持つ寄生性繊毛虫が原因ではないかと考えているとのこと。


カリブ海でウニが一掃された後は、サンゴ礁の藻類が制御不能なほどに増加してサンゴ礁全体が大きな被害を受けたため、エイラト湾でも同様の事態が発生する可能性が危惧されています。


病気になったガンガゼはわずか48時間以内に大量の組織を喪失し、骨格だけになってしまうそうです。


大量死は大学関連の研究所や水族館など、陸上の施設で育てられているガンガゼにも波及しています。これはポンプでくみ上げられた海水を通じて病原体が侵入したためだと考えられています。


ブロンスタイン博士は、関係者らが事態の深刻さを認識して迅速にガンガゼの繁殖個体群を保護し、将来的に自然に戻せるようにする必要があると主張しました。


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