ニュースを消費する若い世代への接点に、WSJが TikTok チャンネルを開設:「コンテンツをTikTokで配信しないと、チャンスを逃すことになる」

DIGIDAY

ウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal:以下、WSJ)は、最近導入したTikTok(ティックトック)チャンネルで、ほかの多くのレガシーパブリッシャーに続き、Z世代や若いミレニアル世代のオーディエンスにアプローチしようとしている。これらの世代の消費者の多くが、TikTok(ティックトック)でニュースを入手しているためだ。

WSJは2022年10月3日にTikTokチャンネルを開設し、それ以来、チャンネルは3万7,000人以上のフォロワーと60万個の「いいね!」を獲得するまでに成長した。このチャンネルは、キャリア、パーソナルファイナンス、テクノロジーという3つの柱を中心に構成されている。また、Twitterの最近の変化やテイラー・スウィフトのコンサートチケット販売などといった、トレンドのニュースを取り上げた動画もある。

パブリッシャーもTikTokを有効活用

先日発表されたロイター研究所(Reuters Institute)とオックスフォード大学の調査報告では、18歳~34歳までの人の15%がニュースを目的にTikTokを使っていることが明らかになった。この調査によると、現在、世界のニュースルームの上位約半数がTikTokに定期的に投稿しているという。ワシントン・ポスト(The Washington Post)の人気TikTokチャンネルには150万人のフォロワーがおり、Voxバイス(Vice)、BuzzFeedロサンゼルス・タイムズ(The Los Angeles Times)、コンデナスト(Condé Nast)も最近、TikTokでの取り組みを拡大させている。

WSJのTikTokチャンネルは、ソーシャル担当チームの下にあるビジュアル・ストーリーテリング・チームによって管理。このチームは、動画やライブジャーナリズムのチームなど、ニュースルーム内のさまざまな部署と定期的にコラボレーションしている。2021年春にダウ・ジョーンズ(Dow Jones)全体でオーディオと動画の取り組みを拡大するために創設されたニュー・ベンチャーズ(New Ventures)チームも、WSJのTikTokチームと連携している。

ニュー・ベンチャーズのシニアバイスプレジデントであるアン・マクゴーワン氏は次のように話す。「我々はWSJというブランドを、ほかの方法では関わらないようなオーディエンスに紹介する必要がある。テキスト報道だけでは、その機会を逃してしまう」

グループエム(GroupM)のエージェンシー、ウェーブメーカー(Wavemaker)でコンテンツ担当グローバル責任者を務めるアダム・プチャルスキー氏も、この意見に同意している。「番組をTikTokで配信しないと、チャンスを逃すことになるだろう。TikTokは人々がニュースを求めてアクセスし、エンターテインメントを消費する場所でもあるからだ」と同氏はいう。

TikTok内におけるパブリッシャーと広告主の関係性は未知数

WSJはTikTokとレベニューシェア契約を結んでおらず、同プラットフォームでの広告主との連携もまだ行っていない。「いまはただ、コンテンツ制作に取り組み、適切なコンテンツを発信し、オーディエンスとエンゲージし、そこからどうなるかを見ているところだ」とマクゴーワン氏は述べる。

プチャルスキー氏は、wavemaker(ウェーブメーカー)のクライアントである広告主がWSJと協働する機会は大いにあると話す。「それがプラットフォームにおいて真正なものであるならば(中略)異なるフォーマットでプラグアンドプレイするだけではない」

金融サービス、人材紹介、雇用者ブランディングなどの分野で、過去にWSJと仕事をしたグループエムのエージェンシーであるMMIのクライアントが、TikTokで協働するのに適したパートナーを探しているという。MMIのグループディレクターであるダナ・バシック氏は電子メールでそう書いている。また、「彼らにとってTikTokで(パブリッシャーと)協働する機会は、非常に魅力的だ。さらにWSJやほかの大手パブリッシャーのようなプレーヤーは、ほかの多くのブランドがこの空間での活動を検討できるようにするための扉を開くと思う」と補足する。

フォロワーやエンゲージメントを高めるための手段

TikTokは、WSJのジャーナリストたちに報道用の別のプラットフォームも提供している。たとえば、「パーソナルファイナンス担当記者のジュリア・カーペンター氏は、TikTokで給与交渉について議論したことがある」とWSJのシニアプラットフォーム・エディターであるジュリア・マンスロー氏は述べる。また、グラフィック担当記者のエマ・ブラウン氏は、ワールドカップに関するWSJの記事のために作成した地図について議論する動画に登場している。さらに「2022年10月の中間選挙の期間中には、WSJのTikTokチームはワシントンD.C.支局の数人の記者と協力してアプリ用の動画を制作した」とWSJのオフプラットフォーム・エディターであるパトリック・ヘッドランド氏は話す。カメラには映りたくないがTikTokの熱心なユーザーである記者たちも、TikTokで目にしたトレンドにフラグを立て、編集者たちはTikTokのオーディエンスに響くと思われるストーリーにフラグを立てている。

「(WSJは)現在の出来事についての投稿を増やしている。これは、現在の文化的な瞬間やトレンドに乗り、フォロワーやエンゲージメントを高めるための賢明な方法だと思う」とバシック氏はいう。

マンスロー氏によると、WSJがTikTok動画を公開するまでの時間は、トピックやコンセプトの複雑さによって、1時間以内~1週間と幅があるという。動画は、平日は1日に2回ほど、週末は1日に1回投稿される。動画撮影は、ニューヨークのオフィス(「リングライトを持ち歩いている時点で、我々が何をしようとしているかはバレている」とマンスロー氏はジョークをいった)、自宅、屋外で行われる。

「コンテンツ戦略や計画は迅速かつ定期的に変更できるように」

TikTok動画の多くは、WSJの特定の記事と関連付けられ、その記事のスクリーンショットが掲載される。WSJのTikTokチームはまた、自社のライブイベントから、より多くの動画を制作したいと考えており、そこではチームのメンバーが講演者やゲストにインタビューを行う。WSJの「テック・ライブ(Tech Live)」カンファレンスからのコンテンツは150万以上、「WSJマガジン・イノベーターズ(WSJ Magazine Innovators)」イベントは120万以上の動画視聴をそれぞれ記録したとマンスロー氏はいう。

また、「WSJのTikTokチームは、TikTok動画で質問に答えるなどして、動画のコメント欄にもっと関与し、エンゲージメントを高めたいと考えている」とマンスロー氏は続ける。さらに今後は、より多くの報道領域で実験を行う予定だという。一方でヘッドランド氏は「我々は、人々が我々に期待すること、我々のジャーナリズム、ビジネスや金融など我々の中核をなす報道を提供したいと思う一方で、人々がすぐにWSJと結びつけないものに触れてもらう素晴らしい機会だと考えている」と述べた。そうした領域にはスポーツやライフスタイルなどがある。

また、バシック氏はこう語る。「アプリでは、ほかのソーシャルメディアよりもトレンドや話題の移り変わりが早い。パブリッシャーはコンテンツに関する戦略や計画をかなり迅速かつ定期的に変更できるように準備しておく必要がある」。

[原文:How The Wall Street Journal hopes to reach young news consumers on TikTok

Sara Guaglione(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:島田涼平)

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