2022年10月末にTwitterを買収したイーロン・マスク氏は、12月中旬に突如自身のプライベートジェットの行方を追跡する「ElonJet」というTwitterアカウントを永久凍結(BAN)しました。この一連の騒動で、マスク氏が欧州連合(EU)の法律に違反した可能性があると欧州委員会が指摘しています。
Elon Musk’s Twitter to face EU sanctions for ‘arbitrary suspension of journalists’ | Mashable
https://mashable.com/article/elon-musk-european-union-sanction-twitter-suspending-journalists
現地時間の2022年12月14日(水)、マスク氏は自身のプライベートジェットの行方を逐一報告するTwitterアカウント「ElonJet(@ElonJet)」および、ElonJetの作成者である大学生のジャック・スウィーニー氏の個人用TwitterアカウントをBANしました。これに合わせて、Twitterはポリシーを更新して「個人の位置情報をリアルタイムで投稿することを禁止する」という項目を追加。ElonJetおよびスウィーニー氏のTwitterアカウントは、このポリシーに違反したためBANされたと説明しました。
イーロン・マスクのプライベートジェットを追跡するTwitterアカウントがBANされる – GIGAZINE
元々マスク氏はElonJetの存在を認識しており、過去には言論の自由を守るためにElonJetもTwitter上に残り続けると言及していました。しかし、13日の夜に同氏の息子が乗った車に「ストーカーが突撃する」という事案が発生。これを受けマスク氏は「個人の位置情報をリアルタイムで投稿することを禁止する」ことを決めたものと思われます。
さらに、ElonJetのアカウントがBANされたことを報じた複数の著名ジャーナリストのTwitterアカウントが、2022年12月15日(木)に相次いで7日間の一時的なBANを課せられるという事態が発生しました。
Twitterがイーロン・マスクのプライベートジェット騒動について報じたジャーナリストたちのアカウントを次々と凍結 – GIGAZINE
一時的にアカウントをBANされたのは、ニューヨーク・タイムズのライアン・マック氏、CNNのドニー・オサリバン氏、ワシントン・ポストのドリュー・ハーウェル氏、政治評論家のキース・オルバーマン氏、ジャーナリストのトニー・ウェブスター氏、The Interceptのマイカ・フリー氏、Voice of Americaのスティーブ・ハーマン氏、ジャーナリストのAaron・Rupar、Mashableのマット・ビンダー氏など。アカウントが一時BANされたジャーナリストの中には、マスク氏の息子がストーカーに襲われた事件に関するロサンゼルス市警察の公式声明を拡散していた人もいたそうです。
突如多くの著名ジャーナリストのTwitterアカウントがBANされたことを受け、EUの政策執行機関である欧州委員会のValues and Transparencyでヴァイスプレジデントを務めるベラ・ヨウロバー氏は、「Twitterでのジャーナリストのアカウントが恣意的に停止されたというニュースを心配に思っています。EUのデジタルサービス法はメディアの自由と基本的権利の尊重を求めており、これはEUのメディア自由法により強化されます。イーロン・マスク氏はこのことに注意する必要があります。超えてはならない一線は目の前まで来ています。ラインを超えればすぐに制裁が科されることとなります」とツイートし、Twitterによる一方的なアカウントBANに対して制裁が科される可能性を示唆しました。
News about arbitrary suspension of journalists on Twitter is worrying. EU’s Digital Services Act requires respect of media freedom and fundamental rights. This is reinforced under our #MediaFreedomAct. @elonmusk should be aware of that. There are red lines. And sanctions, soon.
— Věra Jourová (@VeraJourova)
アカウントが一時BAN処分となったMashableのビンダー氏によると、15日の夜にCNNのオサリバン氏からスクリーンショット付きのツイートが共有されたのち、同氏のアカウントが一時BANされたとのこと。このスクリーンショットはマスク氏の息子がストーカーに遭遇した事案に関するロサンゼルス市警察の公式声明だったそうです。ただし、ビンダー氏とオサリバン氏のツイートには位置情報が含まれておらず、ElonJetのURLなども含まれていなかったため、アカウントがなぜ一時BANされなければいけなかったのかは不明です。
なお、一時BAN処分となったジャーナリストが拡散していたロサンゼルス市警察の公式声明は以下の通り。ツイートには「LAPD(ロサンゼルス市警察)の脅威管理ユニットは、イーロン・マスクによる状況とツイートを確認しており、彼の代表者およびセキュリティチームと連絡を取り合っています。現在のことろ、犯罪報告はまだ提出されていません」と記されているのみで、位置情報などは含まれていません。
Regarding @elonmusk situation everyone’s been talking about, LAPD statement:
“LAPD’s Threat Management Unit is aware of the situation and tweet by Elon Musk and is in contact with his representatives and security team. No crime reports have been filed yet.”
— Phil Helsel (@PhilHelsel)
Mashableが欧州委員会に問い合わせたところ、広報担当者のチャールズ・マヌリー氏から「欧州委員会はデジタルサービス法が発効したら、関連する他のすべてのオンラインプラットフォームと同様に、Twitterが規則に従っていることを確認するために、事態の監視を行います」という返答があったそうです。
マヌリー氏はEUのデジタルサービス法について、「すべてのプラットフォーム、特に大規模プラットフォームに適用され、立法者が採用した規則によって公共の議論に対するプラットフォームの権限が確実に規定されるようにする」と述べています。
デジタルサービス法を施行する主な目的のひとつは、「オンライン上での表現の自由を保護し、プラットフォームの利用規約を明確で、理解しやすく、透明性があるものにし、ユーザーがコンテンツモデレーションに対して苦情や救済の権利を有することを保証する」というものです。
なお、デジタルサービス法に準拠していないオンラインプラットフォームは、罰金やEU圏内でのサービス停止といった罰則を科される可能性があります。
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