一見シンプルな「道路のコンクリート製防護柵」には高度な安全対策メカニズムがある

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by B.C. Ministry of Transportation and Infrastructure

高速道路や大きな道路には、中央分離帯や車止めとしてコンクリート製の車両用防護柵が設置されています。一見ただのコンクリートブロックに見えるこの防護柵ですが、実は車両事故をできるだけ軽減させるために計算された形状だと、アメリカの連邦道路管理局のエンジニアであるチャールズ・マクデヴィット氏が語っています。

Basics of Concrete Barriers | FHWA
https://highways.dot.gov/public-roads/marchapril-2000/basics-concrete-barriers

New Jersey Median Barrier History
http://www.roadstothefuture.com/Jersey_Barrier.html

コンクリート製防護柵として最もよく知られているのが、ジャージー・バリアと呼ばれているタイプです。これは、ニュージャージー州の交通当局が1955年に初めてコンクリート製防護柵を中央分離帯として使用したことにちなんだ名称とのこと。


ジャージー・バリアは下部の傾斜面が浅くなっており、ここにタイヤが乗り上げることで板金の損傷を最小限にします。さらに、衝突がより激しい場合はバンパーが上部の傾斜面にぶつかって上方向にスライドし、車体が浮き上がります。そしてタイヤと路面との摩擦を減らして車両の方向を変え、対向車線への突入を防ぎます。これが、ジャージー・バリアが持つ多段防護効果です。


コンクリート製防護柵には他にも、ジャージー・バリアに比べて下部の傾斜面が終わる位置が高い「ゼネラルモーターズ(GM)型」というバリエーションがあります。GM型は大型車が流行していた時期には有効でしたが、小型車の場合は車体が過剰に浮き上がって横転しやすくなる問題が発生したため、程なくして使われなくなりました。

下部の傾斜が終わる位置が高いGM型とは逆に、低いタイプも存在します。それが、「F型バリア」です。F型バリアの名前は、テストのためにA~Fまで作られたバリエーションの最後だったことに由来しているとのこと。


F型バリアはテストでジャージー・バリアよりも良好な性能を示しましたが、普及には至りませんでした。これは、各州の交通当局が標準的なジャージー・バリアの性能に満足していたことや、ジャージー・バリア製造のために多大な投資をした業者が形状の変更を渋ったのが理由だと言われています。

ジャージー・バリアなど複数の傾斜面を持つコンクリート製防護柵は優秀な性能を持ちますが、舗装や工事などで路面の高さが変わってしまうと性能に影響が出るという欠点がありました。そこで、複雑な形状の防護柵が持つ課題を克服するために登場したのが角度が一定の「定常傾斜バリア」です。


傾斜面の角度は州によって微妙に異なりますが、例えば垂直線に対する角度が10.8度の「テキサス定常傾斜バリア」はジャージー・バリアに匹敵する性能を備えているほか、角度が9.1度の「カリフォルニア定常傾斜バリア」はF型に近い性能を持つことが、テストで示されています。

このほか、道路工事の作業員の安全を守るために使用される可搬式の防護柵や、逆勾配をつけることで車体の浮き上がりを抑えるロープロファイル・バリアなどさまざまな形状の防護柵が考案され、ニーズに合わせて使い分けられています。

by Roadside Safety Pooled Fund

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