パタゴニア の再生戦略の影響力がより明らかに。精神を引き継ぐブランドが飛躍【ファッションブリーフィング】

DIGIDAY

ブラックフライデーやそれ以降に関して、各ブランドはパタゴニア(Patagonia)の戦略を参考にしている。

創業50年のアウトドアアパレル企業のパタゴニアは、環境と社会的責任を長らく象徴してきたブランドであり、ブラックフライデーに向けたディスラプティブな取り組みのパイオニアという歴史がある。今年、各ブランドがショッピングのホリデープランを発表するにあたり、その影響力が明らかとなった。

2011年、パタゴニアはニューヨーク・タイムズ紙の一面に「Don’t Buy This Jacket(このジャケットは買わないで)」という広告を掲載、より少なく、より思慮深く購入するよう人々に呼びかけた。今年は、スニーカーブランドのカリウマ(Cariuma)などが、同じメッセージの発信となることを期待して、ブラックフライデーのプロモーションを実施しないことを選択している。2013年、パタゴニアは消費者に対し、新しいものを買うのではなく、すでに所有しているものを修理するよう促した。同様に、ファッションブランドのフライターク(Freitag)、マッドジーンズ(Mud Jeans)、レイバーン(Raeburn)は、ブラックフライデーにECサイトを閉鎖する一方で、衣類の交換や修理ワークショップといった反消費イベントを開催している。そして2016年にはパタゴニアがショッピングホリデーで得たすべての利益を草の根の環境保護団体に寄付、その額は1000万ドル(約13.4億円)に上っている。それよりも小さな規模ではあるが、カスタムアクセサリーブランドのストーニークローバーレーン(Stoney Clover Lane)は、ギビングチューズデー(米国の感謝祭明けの火曜日)に、専用コレクションからの純利益の100%を非営利団体サルード(Salood)に寄付すると発表している。

「パタゴニアはサステナビリティの方法をリードしており、それは賞賛に値する」と語るのは、サステナブルショッピングプラットフォームのソフトリー(Softly)のCEOモリー・ヒューズ氏だ。「とはいえサステナブルなブランドは、責任ある消費を促しつつ、ブラックフライデーのディスカウントにも参加することができる」。

もちろん、体質に逆らった、しばしば衝撃的でもあるパタゴニアの動きは、ホリデーシーズンに限ったことではない。9月、創業者のイヴォン・シュイナード氏は家族とともに、30億ドル(約4020億円)の価値がある会社の所有権を造作もなく非営利団体に譲渡し、話題を呼んだ。今後、この団体は年間1億ドル(約134億円)と推定されるパタゴニアの利益の100%が環境保護に使われることを保証することになる。

パタゴニアの精神に続くオーストラリアのブランド、ナグナタ

意識の高い消費者の台頭と、ソーシャルメディアが消費者にブランドへの新たなアクセスを提供したおかげで、ブランドの価値観、倫理観、プロセスはかつてないほどに細かく観察されるようになっている。しかし、環境を真に自らの使命の中心に据えているブランドは希少な存在だ。創業8年となるオーストラリアのアクティブウェアブランド、ナグナタ(Nagnata)の創業者でクリエイティブディレクターのローラ・メイ・ギブス氏も、シュイナード氏の精神を引き継ぐひとりだ。

「パタゴニアが行ったことは驚くべきことだ」とギブス氏は言う。「環境問題との闘いに専念する環境プログラムとコミュニティに対し、純粋に資金を提供するビジネスを持つ。それこそが今後20年のナグナタの私のビジョンだ」。

パタゴニアに続いて、サステナビリティ、質の高い労働条件、多様性、インクルージョンへのコミットメントを確約し、B-Corp認証を受けたブランドは増えている。2016年以降、前述のカリウマをはじめ、トムズ(Toms)、オールバーズ(Allbirds)、ファッションブランドのアナザートゥモロー(Another Tomorrow)、アンダーウェアブランドのトムボーイX(TomboyX)、そしてアヌカジュエリー(Anuka Jewelry)などがそうだ。

これまでナグナタは、多くの投資オファーがあるにもかかわらず、ギブス氏が全額出資している。その大きな理由は、ナグナタが専念する慈善事業やコミュニティ活動を、正当化するというプレッシャーを感じずに守っていきたいとギブス氏が考えているからだ「他人から見れば、私はいつも最善の決断をしているわけではない。だが、ナグナタのすばらしい面のひとつは、私たちはとても人間的なブランドで、コミュニティを優先している点だ」。

どんなファッションもサステナブルとは呼べない

ギブス氏は、全体的な状況において自分なりのルールで動いている。たとえば、ブランドのサステナブルな生産工程には長いリードタイムが必要だが、それを許容してくれる卸売パートナーに限ってのみ一緒に仕事をしている。そして「天然繊維を使用し、長く愛用できて年齢を問わない、ヨガスタジオからストリートスタイルまでのブランド」という独特なコンセプトでブランドをローンチすることを決定してからというもの、マーケティングよりも製品を優先させてきた。そのビジョンを検証するために、彼女はオーストラリアのニットウェアメーカーと連携しているが、そのメーカーの無駄のない生産工程が決め手となった。そしてほかの天然素材からパフォーマンスウェアを作ることの難しさを実感した彼女は、メリノウールをブランドのシグネチャーとした。ナグナタが初めて販売可能なアイテムを開発するのに2年を要している。

「私は19歳からファッションの仕事をしていて、たくさんの工場や製造所を回り、水路やデニム工場の汚染を目にしてきた」と彼女は言う。「この業界について知れば知るほど、自分の信念とは一致しないことがよくわかってきた」。

ギブス氏は、どんな種類の新しいファッションを生産しても、サステナブルとは呼べないことを認めている。そのため、彼女は自らの焦点を「サステナブルなマインドでのデザイン」と呼ぶ。

「生地選びにいたるプロセスのすべてにおいて、あらゆることを検討してできる限りベストを尽くしたい」と彼女は言う。ナグナタは小さなTシャツコレクションを製造するのに一部オーガニックコットンを使用した以外は、既製の生地の使用はゼロだという。ギブス氏によれば、2023年末までには100%天然繊維を使用するという目標に向かって努力を続けている。 いまのところ、伸縮性を高めるためにリサイクル合成繊維を一部使用している。

オーガニックな成長を遂げ、ネッタポルテによって飛躍

ナグナタは、本社のあるオーストラリアのバイロンベイとロサンゼルスの人々のウェルネスを重視したライフスタイルに対応している、とギブス氏は語る。もちろんサステナビリティと同様に、パンデミックの最盛期には地域を超えてウェルネスが優先された。それがブランドにも功を奏した。2020年には売上が2倍になったのだ。

ナグナタは最近になってようやく、デジタルチャネルでの広告を開始している。それまではギブス氏の友人である写真家による、親しみやすく関連性のある美しいイメージとブランドの価値を示すメッセージに牽引されて、オーガニックな成長を遂げてきた。さらにオーストラリアのファッション業界におけるギブス氏の評価は高く、たとえばアリス・マッコール(Alice McCall)のデザイナーを務めたり、また地元メディアにもブランドが取り上げられたりしている。

しかし、このブランドの飛躍を本当の意味で助けたのは、早くから確保していたネッタポルテ(Net-a-Porter)とレーン・クロフォード(Lane Crawford)という大手小売である。ギブス氏は、ニューヨークとパリで年2回開催されるバイヤーズマーケットに参加しており、また、通常はオーストラリアとロサンゼルスを頻繁に行き来している。

同社の米国での事業は伸びており、現在売上の20%を占めている。そのため、米国での専用のeコマースサイトやサードパーティロジスティクスの立ち上げが優先事項となっている。そして12月上旬には、LAでポップアップを開催する。将来的にはLAの店舗をオープンする計画だ。

ほかの店舗については、ナグナタは11月初め、オーストラリアのバイロンベイで仮設店舗から初の常設店舗へのアップグレードを行った。次はシドニーに出店したい、とギブス氏は考えている。

現在、ナグナタの社内チームは6人の社員で構成されており、それに加えてロサンゼルスを拠点とするCOOと、CEOを務めるビジネスアドバイザーが2名いるとギブス氏は述べた。ナグナタは小売スタッフも雇用している。

ギブス氏は今後、ナグナタの新たなメンズ事業を拡大し、品揃えを拡大させたいと考えている。買い物客の要望に基づいて、同社はより従来の既製服に近い形に進化してきたという。すでにニットのセーターを発表し、2月にはアウターウェアとスキーコレクションをデビューさせる予定だ。ギブス氏によれば、ナグナタのネッタポルテの売上が急増したのは、ギブス氏がバイヤーを説得して、アクティブウェア以外のカテゴリーで同ブランドのスタイルをフィーチャーしてもらったことがきっかけだった。

[原文:Fashion Briefing: The Patagonia playbook is catching on]

JILL MANOFF(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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