ビッグテック での大量解雇が人材市場に及ぼす影響:「2023年に大きなリセットがあるだろう」:

DIGIDAY

高まる経済的な逆風が、企業の財務状況に不安を投げかけている。

このような環境下で、レイオフやリストラといった言葉は残念なことによく聞かれるものになっている。第3四半期にじわじわと発生し始めた人員削減の波は、年末が近づくにあたって大きな津波に変わりつつある。

今回のレイオフは、ビッグ・テックと呼ばれる業界の有名企業が、かなりの人数を解雇している点で注目に値する。人によっては、解雇数は前例にない規模だというかもしれない。このことは、今後の景気後退の痛みが広範囲に感じられる可能性が高いことを示している、と考える業界人たちがいる。

大手ハイテク企業群、数週間で2万人以上解雇とのデータも

結局のところ、業界ウォッチャーたちは、以前の景気低迷期に売上高が逆に伸びたようなFacebookやGoogleなどの企業の報告に慣れてきた。彼らは依然として市場の大多数を占めている。ものの、第3四半期決算の最終ラウンドでは、広告業界におけるこれらの企業による複占の支配がいかに弱りつつあるかを示した。

人事関連サービスを提供するスタートアップ企業コンペンセートがまとめたデータによると、市場が厳しい状況に備えるなか、大手ハイテク企業はここ数週間で2万5000人近くの従業員を解雇したことが示されている。

これらの人員削減の直接的な理由はケースバイケースである。たとえば、メタ(Meta)とスナップ(Snap)の最近のレイオフは、Appleでのプライバシー保護対策の更新により、広告主がiOSデバイスのユーザーをターゲットにして追跡することが困難になっている。ことが影響していると考えられる。一方、Twitterの場合、混沌とした事態はいうに及ばず、より全社的な問題に対処している。そんななかで、広告主は(たとえ一時的なものであっても)同プラットフォームから離れつつある

情報筋がDigidayに語ったところによると、Amazonでは1万人の人員削減が報じられたが、急成長している同社の広告部門にはほとんど影響していないという。最近人員削減がそれほど厳しくなかったマイクロソフト(Microsoft)も、広告部門の拡大を計画していると見られている。一方で、Googleのオーナーであるアルファベット(Alphabet)は人員削減に乗り出すのではないかとの噂が絶えない。

これらの措置は、COVID-19のパンデミックが世界中の経済の「デジタル化」を加速させ、メディア部門の雇用需要が旺盛であった2020年末から2021年初頭とは対照的である。

膨れ上がった人材プール

そして今、2万5000人を超える元ビッグテック従業員の流入が人材市場にどのような影響を与えるのか、多くの人が思索している。シリコンバレーの有名企業での勤務経験が履歴書に書かれていれば、採用者の目に止まることは間違いない。しかし、それらの候補者が業界の最大手企業以外でどのように活躍できるのか疑問視する者もいる。

結局のところ、アモビー(Amobee)、インフォサム(Infosum)、ライブランプ(LiveRamp)、ネクストロール(NextRoll)、パーミュティブ(Permutive)、クアントキャスト(Quantcast)、タブーラ(Taboola)、ビデオアンプ(VideoAmp)などの企業が最近同様の削減を行ったように、「企業の効率化」の犠牲となって小規模企業で解雇された元従業員によっても、利用可能な人材のプールは膨れ上がっている。

もちろん、ビッグテックの人員削減は多くの部門におけるものである、エンジニアリング、製品管理、営業チーム、と多くの人材分野にまたがっている。このような業界ではエンジニアの人材は常に求められているが、別の情報筋がDigidayに語ったところによると、大手テック企業で開発されたスキルセットは、リソースの少ない組織で運用する場合には必ずしも適用できない可能性があるという。

エンジニアはいつでも人気だが、マーケターは市場の回復待ちか

2020年後半から2021年にかけての人材獲得競争が市場に一定の激しさをもたらす前でさえ、市場での大手テック企業の優位は、Facebook、Google、Twitterなどがスタッフ、とくに営業スタッフに業界における最高額の給与を支払うことを意味していた。

最近の一連のレイオフを考えると、これは市場の「調整」と捉える人もいるかもしれない。ある新興企業のCEOは「FacebookやTwitterのようなサービスが給与のインフレを招いた。2023年に大きなリセットがあるだろう」と述べた。

デジタルメディア業界のベテラン幹部で、大企業からスタートアップまで勤務経験を持つジェイ・スティーブンス氏はDigidayに対し、現在の市場の状況は2000年のドットコムバブル崩壊と金融危機の余波に匹敵すると述べた。

「エンジニア人材はいつでも人気があるだろう」と彼はいう一方で、マーケティング人材は、適切な役割ができるようになるまで、市場が回復するまでしばらく待たなければならないかもしれないと付け加えた。

元ビッグテック社員も給与のデフレが懸念される

複数の情報筋によると、2010年初頭まで遡っても、Googleなどと人材をめぐって競争することは、とくに意欲的な企業にとっては高くつく競争であったという。

この時期にルビコン・プロジェクト(Rubicon Project:現マグナイト(Magnite))の国際マネージング・ディレクターを務めていたスティーブンズ氏は、Googleのような組織からスタッフを採用することは「(これらの人材が)非常に高い報酬を得ていたため困難であった」と述べているが、デジタル広告の成長が頭打ちになり始めた現在、市場の力学は全く異なっている。「(レイオフの一環として)Facebookから出てきた人たちの多くは、おそらく給料を減らさざるを得なくなるだろう」と彼は付け加えた。「(給与における)ある程度のデフレは確実に起こるだろう」 。

一方、3ピラーズ・リクルーティング(3 Pillars Recruiting)のマネージング・ディレクターであるダン・ゴールドスミス氏は、「業界における力関係の構図がこうなるのは見たことがない」と語った。そして、人材獲得競争で採用候補者の給与期待が急上昇した1年前の市場の状況と比較した。「(ビッグテック出身の)多くの人が、キャリアの逆境という、彼らが今まで経験したことのないことを経験しようとしている」と彼は結論付けた。

[原文:‘A big reset in 2023’: After Big Tech’s mass layoffs, job candidates face intense competition

Ronan Shields(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)

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