エスティローダー、 TikTok の使用を「義務化」:きっかけはインスタグラムでの新規リーチ数の伸び悩み

DIGIDAY

エスティローダー(Estée Lauder)のインスタグラムでのリーチが、EMEA(欧州/中東/アフリカ地域)において伸び悩み始めたとき、担当マーケターはTikTokに目を向けた。

むろん、それだけが理由ではない。TikTokで同ブランドのグローバルアカウントが立ち上げ早々から成功を収めていたこともある。それでも、マーケターがTikTokに進出する決断をした大きなきっかけは、インスタグラムだった。

一部のオーディエンスにしかリーチできず

エスティローダーのマーケターたちは、メタ(Meta)傘下のインスタグラムでより多くの人にリーチするために、どれだけ大々的に取り組んだとしても、リーチしたいオーディエンスの限られた一部としか接触できないことに気づいたと、エスティローダーのソーシャルメディアおよびコンテンツマネージャーを務めるルブナ・モーシン氏は話す。しかも、同じコホートの中心にいる同じ人たちに何度もリーチする結果になっていたという。

これはインスタグラムでのマーケティングがうまくいかなくなったということではなく、今でも同社のコアオーディエンスにリーチするためには、インスタグラムは重要な位置を占めている。ただし、新規の、Z世代のオーディエンスにリーチするにはそれほど効果的ではないということだ。

「特に過去2~3年、我々はインスタグラムを中心的かつ効果的なマーケティングチャネルとして使いこなすために多くの投資を行ってきており、それは今後も続けられる」とモーシン氏は言う。「インスタグラムは我々のコアオーディエンスにエンゲージし、既存及び新規の顧客との関係を深めるための鍵になるが、我々は新しい方法で境界を押し広げ、新たな人たちにリーチしたいと考えた。当然ながら、既存の取り組み以外にも目を向け、TikTokには、より若い層の新規かつより多くのオーディエンスを獲得するためのユニークな機会があると考えた」。

つまりエスティローダーにとって、EMEAにおけるインスタグラムでのブランドマーケティングは飽和状態に達していたのだ。「さらに多くの人にリーチする必要があった」とモーシン氏は話す。

そこで、モーシン氏は代替手段を探し始め、すぐさまTikTokにたどり着いた。モーシン氏のチームはすでに、2021年夏に開設したTikTokアカウントにおけるグローバルチームの活動に注目していた。いうまでもなく、グローバルチームは早くから成果を上げており、EMEAチームにTikTokでのマーケティングを試してみる気にさせるには十分だった。2022年の春にはグローバルアカウントに最初の投稿が流れ、それ以来、彼らは失われた時間を取り戻しつつある。

2022年からはTikTokの使用が義務に

直近では、エスティローダーは「My Shade, My Story」と題するキャンペーンを開始し、現在まで1カ月あまり継続している。最初の2週間だけで、5800万ビューを記録したとモーシン氏はいう。同キャンペーンは、ブランドがTikTokでのマーケティングに自信を深めるための、ある種のリトマス試験紙となった。第一に、マーケターが人選により注力し、時間をかけるのが正しいことを証明したと、モーシン氏は話す。キャンペーンでは、CEOからミュージシャンまで、さまざまなコミュニティの人を取り上げ、特定のシェード(色)のファンデーションを使う理由を率直に語ってもらいたいというのが同氏の考えだった。

「昨年は、TikTokにおけるエスティローダーのプレゼンスは不安定だったが、2022年に入ってからは使用が義務となっている。我々のソーシャルメディアにおける最大の目的は、人材を集めることだからだ」とモーシン氏は、同氏が起用するエージェンシーのファンバイツ(Fanbytes)が主催するイベントで米DIGIDAYに語った。「すでにマーケティングプランにおける『常時オン』の要素となっている」。

ただしそれはTikTokが、エスティローダーのメディアプランにおける「常時オン」の要素になったことを意味しない。マーケターたちは、ほかのメディアチャネルに対するのと同じように、年間を通してTikTokにメディア費用を投じているわけではない。それでも、TikTokでは常にマーケティングを行っている。

その方法は、インフルエンサーへの製品提供、すなわち、製品について投稿してくれることを期待して、特定のインフルエンサーに無料で製品を送るブランドの手法だ。時には、これらの投稿を有料広告で補強することもあれば、エスティローダーがクリエイターと契約を結ぶこともある。ただしどちらも、TikTokに関するブランドの計画の中心にはない。TikTokの役割は、今のところ、オーガニックマーケティングに限られている。

「とはいえ、我々の主要なキャンペーンはすべて、地域レベルで集めるクリエイターのチームを通じてにせよ、あるいは特定の市場で活動する場合に、その地域に関連のあるクリエイターを起用するにせよ、有料パートナーシップの要素を備えている」とモーシン氏は明かし、「EMEAに特化したブランドのTikTokチャネルがないので、我々と同じ価値観を共有する人たちを起用することが重要だ」と話す。

レガシーブランドに共通する長年の課題

しかし時代は移り変わる。現在、TikTokにEMEA専用のアカウントを設ける予定はないが、過去の事例からみて、いずれはそうなるだろう。実際インスタグラムでは、エスティローダーは17の市場で15のプロフィールを開設している。ただし、それは数年かけて起こったことであり、モーシン氏は、最近の同ブランドにそんな時間の余裕はないように感じている。現在のビューティカテゴリーはそれほどに競争が激しい。TikTokであまり悠長に構えていると、そこにエスティローダーの居場所はなくなるかもしれない。

「新しいブランドは、若いミレニアル世代にふさわしいブランドを一から構築することができるが、レガシーブランドは、そのレガシーと価値観を損なうことなく、同じことをする方法を考え出さなければならない」とモーシン氏はいう。

これは、レガシーブランドに共通する長年の課題だ。若いオーディエンスのために自らを改革するのは難しいことだが、マーケターが幾度となく証明しているように、不可能なことではない。重要なのは、文化という手がかりを通じて、レガシーを現在のトレンドにつなげることだ。ある意味、TikTokではそれがやりやすい。パーソナライズされたアルゴリズムのおかげで、人々が自分の興味のあるものに触れるようになっていて、ブランド支持者を獲得しやすい環境が育まれるからだ――少なくとも、そのような共通認識がある。

「TikTokは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と、そのパンデミックを通じて大きな成長を遂げ、ブランド認知において非常に優れた仕事をするだけでなく、D2C(direct-to-consumer)のパフォーマンスにとっても非常に優れた仕事をすることを示し続けている」と、グラビティ・ロード(Gravity Road)のマネージングディレクター、ジャシンタ・フォール氏は述べている。

「したがって、自社のブランドや提案について消費者に影響を与えたり、考えを変えさせたりするためには、素晴らしい出発点だと思われる。また、コンバージョンの面でも大きな価値があることがわかっている。このプラットフォームで得られるクリエイターとオーセンティシティ(真正性)は、売り上げにつながり、また、ブランドが実際に追跡して測定できるパフォーマンスの結果をもたらすからだ」。

[原文:‘We’re mandating its use’: Estée Lauder turns to TikTok marketing after reach on Instagram stalls

Seb Joseph | and Krystal Scanlon(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:黒田千聖)
Illustrated by Ivy Liu

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