自称「 メタバース 専門家」、本物とペテン師の見分け方

DIGIDAY

景気後退の見通しが現実味を帯びるなか、ブランドは依然として、ソーシャルメディアおよびマーケティングチャネルとしてのメタバースの未来に大きな期待を抱いている。一方、ブランドの予算がメタバースに流入するなかで、実体のない専門性を騙るペテン師たちも急増しており、本物のメタバース専門家を見分けるのはかつてないほど難しくなっている。

メタバース黎明期の現在、メタバースとは要するに何なのか、どんな仕組みなのかについて、バーチャル空間の構築に長年の実績をもつ本物の専門家のあいだでも意見の相違がある。

自称メタバース専門家が自分の話を本当に理解しているかどうかを判断するにはどうすればよいのだろう? 米DIGIDAYは、マーケティング、ゲーム、Web3.0の分野で実績のあるメタバース専門家5人に話を聞いた。

危険信号1:メタバースの狭い定義にこだわる

現時点でマーケターがいう「メタバース」には、複数の重複する概念が含まれる。ロブロックス(Roblox)やフォートナイト(Fortnite)といった、二次元スクリーンからアクセスする三次元ゲーム世界を「メタバース」と呼ぶ人もいれば、ヘッドセットからアクセスする仮想現実体験のことと考える人もいる。あるいはブロックチェーン技術とNFT(非代替性トークン)を基盤としたバーチャルコレクティブルネットワークという定義もある。

これらの定義はすべて、「メタバース」概念の元祖である、SF作家ニール・スティーブンソン氏による1992年の小説「スノウ・クラッシュ」で描かれる世界に、ある程度は一致する。したがって、本物のメタバース専門家はこれらすべてに精通していなければならない。メタバース専門家を自称しながら、こうした競合するビジョンのどれかについて存在や将来性を否定する人は、この世界の本質を理解していない。

「メタバースを単一のフォーマットやメディアとして語る人は、メタバースが何かを理解していないと思う」と、テクノロジーおよびプロダクション企業のマグノプス(Magnopus)でイノベーション担当グローバルディレクターを務めるソル・ロジャース氏はいう。「特定の業界の、特定のタイプのコンテンツに特化したメタバース専門家を雇うのもいいが、そうする場合も、長期的ビジョンに裏打ちされたものであるべきだ」。

危険信号2:的確な質問をしない

本物のメタバース専門家は、現状が完成形とは程遠いことを理解しており、今のところ、メタバースへの適切なアプローチは、ある程度の現実主義を踏まえたものとなる。したがって、メタバースの制作者や専門家であるはずの人が、ブランドのバーチャル空間への参入計画に関して、専門知識に基づく、時に懐疑的な質問をすることなく全面賛成するようなら、その人物が長期的な持続可能性よりも短期的利益に目を向けている証拠と考えるべきだ。

「どの企業もまだメタバースの仕組みに関して、相互運用性やビジネスモデルの観点で試行錯誤している段階だ」と、Web3.0ゲームデベロッパーのイミュータブルX(ImmutableX)で最高スタジオ責任者を務めるジャスティン・フログ氏は述べる。「プレイ・アンド・アーン型なのか、それともプレイ・トゥ・アーン型なのか? あるいはプレイ・アンド・オウン型、はたまたプレイ・トゥ・オウン型なのか? すべての答えを知っているような口ぶりの連中は、率直にいってペテン師だ」。

危険信号3:相応の経験や背景をもたない

「メタバース業界」は10年前には存在しなかった。そのため、LinkedIn(リンクトイン)のプロフィールだけでは、誰が本物のメタバース専門家なのかを見極めるのは難しい。幹部社員としての過去の役職名に「メタバース」が入っている可能性は低いからだ。

しかし、今日のメタバース空間は、ゲーム、マーケティング、仮想現実、ブロックチェーン技術といった、数多くの歴史ある業界の流れをくんでいる。メタバース専門家を雇いたいブランドは、こうした分野での経験に注目すべきだ。業界での実績が2021年10月に急にどこからか降って湧いたような、自称メタバースコンサルタントには要注意だ。

「結局のところ、過去に大企業でイノベーションを担当する役職にいたなら、それなりに話題を理解しているはずだ。ゲーム会社での経験があるなら、ゲーム関連メタバースに関して知識があるだろう」と、フォートナイト・クリエイティブ(Fortnite Creative)の制作スタジオ「クリーターズ・コープ(Creators Corp)」の創業者であるマーゴット・ロッド氏はいう。「ブランドは周辺調査をする必要があり、LinkedInでメタバースの専門家を自称する人々には極めて慎重であるべきだ」。

危険信号4:メタバースを複数形で語る

一部の専門家にいわせれば、メタバースに複数形(メタバースズ、metaverses)は存在しない。インターネットがひとつしかないのと同じで、メタバースは単一の仮想世界である。インターネットが無数の独立のウェブサイトから構成されているように、メタバースも多くのプラットフォームが織り合わさってできているからだ。少なくとも、メタバース概念の生みの親であるニール・スティーブンソン氏は、2022年9月にコードコン(CodeCon)でこのように自身の考えを明らかにしている。

この最後の危険信号については、米DIGIDAYが本記事のために取材した専門家全員が同意するわけではない。たとえば、ロッド氏は、スティーブンソン氏の主張は自身が考えるメタバースの将来像を述べたものであり、現在の実態とは異なると指摘する。しかし、それでも提唱者による言葉には一聴の価値がある。

このような議論や混乱を避けるため、業界の専門家のなかには「メタバース」という言葉を極力使わないよう心がける人々もいる。

「我々は長いあいだ『メタバース』という言葉を使うことを避けてきたし、今でもできるかぎりそうしている。だが、クライアントやブランドがやってきて、『メタバース空間か、メタバースコンテンツの制作について話したい』といわれたら、『なるほど、いいですね』と答える」と、ロジャース氏はいう。

[原文:How to spot the real experts in the metaverse — and avoid the BS

Alexander Lee(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:島田涼平)

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