アルファ世代 を理解するのは「時期尚早ではない」:急速に「Z世代の次」の調査を進めるエージェンシー各社

DIGIDAY

この10年近く、(メディアエージェンシーも含めた)メディア業界は、Z世代に多大な関心と資金を注いできた。では、アルファ世代(2010年代以降に生まれた世代)にフォーカスするのは早すぎるのだろうか?

エージェンシーやマーケターのなかには、そんなことはないと考える人もいる。Z世代に続く世代は、完全なデジタル社会で育った初の世代であり、生まれた時から人工知能、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)コンテンツ、ソーシャルメディア・インフルエンサーといった新しいデジタルイノベーションに囲まれ、そうした世界を生きている。アルファ世代はまた、世界的なパンデミックのなかで成長しているため、リモートの職場、ソーシャルディスタンシング、ハイブリッドまたはバーチャルなイベントや活動をより快適と感じるだろう。

エージェンシーはいま、2010年以降に生まれた世代について調査し学ぼうとし始めている。専門家たちは、将来の世代とつながるために、こうした活動は非常に重要だという。アルファ世代について学ぶことは重要だが、それはいますぐその世代に対してマーケティングを行うということではなく、「将来を見据えたアプローチ」であるべきだと、ピュブリシスグループ(Publicis Groupe)傘下のインタラクティブエージェンシーであるレーザーフィッシュ(Razorfish)の最高経営責任者(CEO)、ジョシュ・カンポ氏は述べる。

アルファ世代についての研究は、今後出遅れないための戦略

「そう遠くない将来、この世代は大人になるので、ブランドにとってはその準備をすることが重要だ」とカンポ氏は話す。「陳腐な言い方だが、アルファ世代はそれまでの世代とはまったく違うし、企業がアルファ世代について学び、理解し始めなければ、彼らが消費者として購買力を得たときに、その行動がわからなくなる可能性がある」。

オムニコム(Omnicom)の文化情報コンサルティング企業であるスパークス&ハニー(Sparks & Honey)にとって、アルファ世代への関心は5年も前から始まっていた。顧客戦略担当シニアバイスプレジデントで若者文化の実践部門責任者であるハンナ・ヒックマン氏は、アルファ世代をいまから理解すれば、マーケターやブランドは、Z世代文化の時がそうだったように、必死で追いつく努力をしなくてすむだろうと述べる。

ヒックマン氏は米DIGIDAYに次のように語っている。「次の世代でそのような経験をしないようにするための鍵は、インサイトとデータシステムの開発を始めることだ。子供である彼らが現在行っていることと、それが将来的に彼らの行動、信念、態度にどのように影響するのかを追跡し理解するためだ。我々は、多くのマーケターがZ世代に対応するために奔走する姿を見てきたが、それを避けるために、来るべきもののために色々と準備しておく必要がある」。

アルファ世代の市場への影響

マクリンドル・リサーチ(McCrindle Research)によると、アルファ世代には2010年から2024年のあいだに生まれた子どもたちが含まれ、現在、毎週約270万人が誕生しているという。彼らはこれまでで最大数の世代になると予想され、8歳から11歳の子どもの大半がスマートフォンを使いこなす。マクリンドルは、2030年までにこの世代が労働力の11%を占めると予想しており、その仕事にはドローンパイロット、ユーザー体験マネージャー、ブロックチェーン開発者などが含まれるという。

アルファ世代の習慣、行動、心情の多くを特徴づけるのは時期尚早かもしれない――何しろ彼らはまだ子どもなのだから。しかし、我々が測定し始めることができる分野のひとつは、彼らの購買力と家族に対する影響力だとヒックマン氏はいう。というのも、アルファ世代は、それまでの世代とは異なる価値観を持ち、テクノロジーへのアクセスも容易なミレニアル世代の両親の下で育っているからだ。たとえば、アルファ世代の子どもたちは、年上の子どもたちよりも、小さい頃からブランドの責任やサステナビリティを意識する傾向がある。

「アルファ世代は、同じライフステージにある前の世代よりも、家族の購買決定に大きな影響を与えるという研究結果が出ている」とヒックマン氏は語る。「これは、ミレニアル世代が構築しようとしている家族構成が異なることを示しており、そのなかではアルファ世代が意思決定においてより大きな発言力を持っている。(中略)また、アルファ世代は、親たちが環境保護や経済的な公平性を提供するブランドの道徳的義務について多くの議論をするような文化的背景のなかで育っていることもわかる」。

同氏はこのような動きにより、ミレニアル世代やZ世代が10代や20代になってこれを意識するのに対し、「より早い時期から自分の購買決定がもたらす影響に敏感な消費者が生まれるだろう」と考えている。アルファ世代は自分が商品を買うことで、ブランドが世界にどのような影響を与えるかについての会話に自然に関わるようになる。

WPP傘下のワンダーマン・トンプソン(Wunderman Thompson)もまた、デジタルショッピングと小売に関する研究を通じて、過去3年間アルファ世代について調査してきた。この調査では、将来の仕事について考えるとき、この世代の59%が人命を救いたいと考えており、66%がポジティブな影響を与えるブランドから購入したいと回答している。また、商品をより早く受け取りたいと考えており、平均配送日数の期待値は2.23日となっている。この調査によると、16歳以下のアルファ世代の5人に1人が、翌日に配達されないものはオンラインで買わないと回答しているという。

マーケティングの専門家で、ハドソン・デービス・コミュニケーションズ(Hudson Davis Communications)のCEOであるアマンダ・ハドソン氏は、「彼らはまったく異なる購買行動をとっており、これからのブランドの強みは、デジタルファースト、テクノロジーファーストの世代をどれだけ深く理解し、彼らとつながりを持てるかにかかっている」と話す。

メタバース、ソーシャルメディア、ゲームの役割

アルファ世代は、デバイスやオンラインプラットフォームへのアクセス・露出が非常に多い。これは、彼らのネット上での習慣や社会的つながりが、彼らが消費するメディアに大きな影響を与えることを意味する。市場調査会社GWIによると、近年、デバイスの所有率が急増しているという。2022年には、スマートウォッチを所有するアルファ世代の消費者が27%、スマートTVが19%、携帯電話が6%と、それぞれ増加した。

ヒックマン氏はメディアミックスに関して、「親会社を持つメディアエージェンシーの世界では、クライアントの多くはアルファ世代にリーチするため、どのチャネルが最適かよりもチャネルの幅にフォーカスしている」という。

また、「アルファ世代は、かなり早い時期からソーシャルメディアやゲーム、コンテンツ制作のプラットフォームと関わりながら育っている」と続け、「我々にとってそれが意味することは、本当にニッチな興味やニーズに合った多様なデジタル空間やデジタルコミュニティに引き寄せられると予測できることだ。彼らは12~15の異なるプラットフォーム(Discord[ディスコード]、ロブロックス[Roblox]、Googleの教育現場向けツール群)を使っており、それらを使うことが彼らにとって自然だからだ」と語った

この多様なエコシステムのなかで、エージェンシーは没入型コンテンツとソーシャルメディアが引き続き彼らとの主要なつながりの場になると期待している。そして、パンデミックはこうしたトレンドを部分的に加速させてきた。そのよい例がビデオゲームだ。レーザーフィッシュの調査によると、Z世代のゲーマーは週に12時間以上ゲームをするのに対し、友人と直接会って過ごすのは6~7時間だという。

「幼い頃からこのような没入型体験をしているアルファ世代にとって、この傾向は強くなると予想される」とカンポ氏は述べる。「アルファ世代の体験に対する期待値は革新的なもので、それはメタバースやソーシャルメディアのようなチャネルにどれだけ触れているかと、(アルファ世代のメンバーが)ゲームやゲームを基にした没入体験にどの程度関わっているかに大きく左右される」。

さらに、TikTokとロブロックスは、アルファ世代が引き続き支配的な勢力となると予想される。GWIによると、13歳から15歳の子どもたちが2022年に最も好んだプラットフォームはTikTokで、インスタグラムとワッツアップ(WhatsApp)がそれに続いている。また、ゲームについては、オンラインゲームが最も人気で、現在、8歳~11歳の半数以上、12歳~15歳の3分の1がロブロックスをプレイしている。これは、2021年から2022年にかけて、各世代でそれぞれ27%、30%の増加となる。

「彼らは、ドルではなくロブロックスのゲーム内通貨『ロバックス(Robux)』でお小遣いを要求し、パンデミックによって加速した非接触型デジタル決済技術にも精通している」とカンポ氏はいう。アルファ世代をみると、ブタの貯金箱やリサイクル缶の貯金箱からずいぶんと遠ざかったということが明らかだ。

[原文:Media Buying Briefing: Here’s why agencies say it’s not too early to understand Gen Alpha

Antoinette Siu(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:島田涼平)

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