Amazon、実店舗でサイネージ表示できる運用型広告スタート:食料品・日用品ブランドに照準

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Amazonは、Amazonの買い物客のあいだで、食料品の価値と買い物の頻度が高まっていることから、食料品店の広告主に対し、新しい広告商品の一部をテストし、ローンチしている。新しい広告の配置と、より優れた最適化ツールにより、テック大手の同社は、その食料品のベンダーからより多くの広告収入を得ることを優先している。

同社は、10月25〜27日に開催された年次広告コンファレンス「unBoxed 2022」において、「DSPのプログラマティック広告キャンペーンツールで作成できるデジタルサイネージ広告を使用し、ブランドが食料品ストアのAmazonフレッシュ(Amazon Fresh)で簡単に広告掲載できるようにする機能を運用する」と語った。同社は、DSPでのデジタルサイネージ広告は「11月から米国の一部の広告主向けに提供される」とプレスリリースで説明している。

この動きが示しているとおり、小売アナリストは「Amazonの広告における野心が、家庭用品や日用品を販売する企業を中心にする傾向が強まっている」という。しかしこれらのアナリストは、Amazonの影響力やリーチは、ウォルマート(Walmart)やクローガー(Kroger)などほかの大手食料品店に大きく及ばないことも指摘した。Amazonは、最新の決算ではeコマース部門での損失が拡大していることを示唆しており、食料品販売業者への注力は、厳しい時期の到来に同社が備えているときに行われたものだ。

オムニチャネル指標のリリースで変わること

Amazon Adsの最高幹部は、unBoxed 2022のオープニングで行われた基調演説で、クラフト・ハインツ(Kraft Heinz)とともに行われたデジタルサイネージ広告のテストにおいて「CPG複合企業である同社は、パウダー飲料ミックスのクリスタルライト(Crystal Light)、濃縮液体ドリンクのミオエナジー(Mio Energy)とクールエイド(Kool-Aid)の売上が6週間前より40%増加した」と述べた。それとは別に、Amazonは、Amazon DSPを使用している食料品や消費財の広告主が、すべてのショッピングチャネルにわたってキャンペーンの影響のより正確なデータを収集できるよう、オムニチャネル指標をリリースする。

Amazon Adsの広告商品およびテック担当のシニアバイスプレジデントを務めるカリーン・オーブリー氏は、次のように述べている。「過去数年間にわたり、当社は実店舗においてさまざまなエクスペリエンスをテストしてきた。現在はAmazonフレッシュの店舗で、店舗の場所、商品のカテゴリー、1日のうちの時間などのコンテキストによるターゲット設定を使用し、デジタルサイネージ広告をテストしている。クラフト・ハインツでこのような結果が得られたことを私は好ましく思っており、実店舗でのパフォーマンスと広告の改善のため、繰り返しテストを行う機会が数多く存在すると思う」。

このオムニチャネル指標のリリースにより、食料品の各ブランドは、Amazon内と外の両方について、オンラインとオフラインを組み合わせた売上指標を標準のAmazon DSPレポートで見られるようになると、同社は語っている。今年初頭には、オムニチャネル指標のベータ版を導入した。

広告測定担当バイスプレジデントを務めるポーラ・デスピンズ氏は次のように述べている。「これによって、広告がほかの店舗やアウトレットでの商品の購入にどのような影響を与えるかを把握できるようになる。さらに当社は、キャンペーンの総合的な影響が、オンラインとオフラインの売上も含めて最良の結果になるよう、自動的に予算を最適化する機能もまもなくリリースする」

「オムニチャネルの指標がキャンペーンの終了時だけでなく途中でも利用できるため、これを採用すれば、キャンペーンの全ての結果を使用して、パフォーマンス測定に基づき予算が予算項目間で自動的にシフトされる」と、デスピンズ氏は付け加えている。Amazonは2023年に、消費財や食料品以外の分野の広告主についても、Amazonショッパーパネル(Amazon shopper panel)の信号を、オムニチャネル指標に組み入れることを開始する。

食料品分野への投資

Amazonは過去10年間にわたって、プライムナウ(Prime Now)、Amazonフレッシュ、Amazon Goなどの取り組みにより、食料品部門でのプレゼンスを築き上げてきた。同社が食料店へのはじめての大規模な投資としてホールフーズ(Whole Foods)を買収してからすでに5年以上になる。そして、食料品配達サービスのAmazonフレッシュを開始してからは15年近くが経過した。

それ以来、Amazonフレッシュのビジネスの範囲は、食料品の配達にとどまらず拡大してきた。2020年8月にカリフォルニアのウッドランドヒルズに最初のAmazonフレッシュ実店舗を開設して以来、同社の拠点は44店舗に増加し、カリフォルニアに15店舗、イリノイに9店舗、ワシントンに4店舗、そのほか各地に店舗を構えている。

Amazonの旗艦イベントである7月の夏のプライムデーも、家庭用品やペット用品などの消費者向け商品のカテゴリーで堅調な需要を見せた。消費者は、このインフレの激しい時期に予算を有効活用しようと、スナック、紙タオル、剃刀、洗剤などの必需品の消費財をまとめ買いしている。

大手食料品店も広告ネットワークを構築中

食料品は、カテゴリーの価値と購入の頻度の関係で、とくに利益の大きな分野だと、コンサルティング企業のグローバルデータ(GlobalData)で小売担当マネージングディレクターを務めるニール・サンダース氏は語る。「各ブランドは、消費者の行動に影響を与え、自社商品を買うよう後押しするために、膨大な額の資金をつぎ込む。大手のCPGブランドは広告やマーケティングに費やせる予算も潤沢で、Amazonはその資金を獲得しようとしている」

ウォルマートや、最近アルバートソンズを買収したクローガーのような食料品店も、独自の広告ネットワークを作り上げることでAmazonの牙城に食い込むことをますます求めるようになってきていると、同氏は語る。「このためAmazonは、自社の領域を守るため新しいサービスの開発に躍起となっている」と、同氏は付け加えている。

インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)で、小売およびeコマース担当プリンシパルアナリストを務めるアンドリュー・リスプマン氏も同意している。「Amazonの将来に向けた広告への野心は、食料品店を中心にしている」と同氏は語る。「ターゲット設定に使用されるファーストパーティーデータと、購入における閉ループを計測できることが鍵だ。このため、同社がAmazonフレッシュの店舗を開設し、クラフト・ハインツなどのブランドと協力してそのデータをターゲット設定に使用できるようにしていることは大いに納得がいく」。

課題は顧客との接点を増やすこと

最新の四半期について、Amazonは広告ビジネスの収益が前年比で25%増加し、95億4000万ドル(約1兆4100億円)に達したと報じた。AmazonのCFOを務めるブライアン・オルサブスキー氏は、決算発表で「広告主は有効な広告を求めている。当社の広告は、消費者が支払いをする準備が整っているところに提示される。そのため、当社には消費者と、売り手や広告主などのパートナーの両方のために役立てる多くの利点がある」と述べている。

Amazonは最終的に、より多くの広告オプションを作り上げ、そのデータを反映して増分的な収益を生み出すことを狙っていると、サンダース氏は語る。しかし、そのために同社は食料品ブランドが広告を行える多くの場所を用意する必要があり、これはさらに多くの店舗を開設することを意味する。

「食料品店はAmazonの広告ビジネスでさらに大きな部分となっていくと、私は考えている。しかし、同社のリーチと影響力は現在のところ、食料品の市場シェアにおいて業界1位と2位のウォルマートやクローガーなどの大手食料品店には遠く及ばない。これらの業者には、より多くの食品の買い物客と接触し、広大な自社の店舗のネットワークを使用して非常に包括的なソリューションをブランドに提供できるという優位点がある」と、同氏は述べている。

[原文:Why Amazon is testing new ad products with grocery brands]

VIDHI CHOUDHARY(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:島田涼平)
Image via Amazon

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