「むしろクビになってほっとした」:燃え尽きたブランドセールスパーソンの告白

DIGIDAY

この1年、大離職時代のさなかに、企業もエージェンシーも優秀な人材を確保する方法を見つけようと奔走してきた。休みを増やすべく、サマーフライデーの延長、さらには週4日勤務をテストしているエージェンシーもあれば、Zoom疲れを防ぐために、メタバースでのコワーキングをスタッフにすすめているエージェンシーもある。

しかし、大離職時代が長引き、ワークワイフバランスの欠如、減ることのない仕事量、そしてやがて訪れる燃え尽き(バーンアウト)により、優秀な人材が業界から吸い上げられていくなか、社員たちは会社の誠実さに疑問を抱くようになっている。匿名を条件に本音を語ってもらうDIGIDAYの告白シリーズ。今回はブランドセールスパーソンに、企業の無意味なメンタルヘルスサポートと、パンデミック禍における求職活動について語ってもらった。

なお、読みやすさを考慮して、以下のインタビューには若干の編集を加えている。

──何がきっかけで、燃え尽きやメンタルヘルスに関する前の会社の誠実さに疑問を抱くようになったのか?

当時の私は完全に燃え尽きていた。もはや何も気にしなくなっているほどだった。クビになるか、自分から辞めるか、どっちに転んでもおかしくない状態だった。ある日、メールが送られてきた。メンタルヘルスや燃え尽きについてのメールで、「助けが必要なら、上司に言うように」といった、ありがちなことがつらつらと書かれていた。とりあえず上司に連絡して、「もうダメです。現場は課題だらけです。私には時間が必要です。休暇が必要です。チームの再編成にも、もっと時間が必要です」と訴えた。翌朝、人事担当者、上司とのミーティングのカレンダー招待が届いた。「これはクビになるな」と思った。前からずっと辞めたかったので、むしろクビになってほっとした。燃え尽きについてのメールに書かれていた「上司に言うように」という一言を、私は真に受けたわけだが、結局は上司に話したことがとどめの一撃になり、私はクビになった。会社が本気でそんなことを言っているわけではなかったのは明らかだ。体裁を整えるために、そう言っていただけだった。

──解雇後、再就職は?

その月に新しい仕事に就いた。対面での仕事で、その意味では面白い仕事だった。しかし、対面ではあったが、その会社の企業文化は私が期待していたものとは違っていた。すぐにそれがわかった。とにかく、そこで働いているスタッフが無愛想だった。ストレスを抱え、辛うじて持ちこたえている様子が見て取れた。結局、12月に職探しを再開した。

──職探しを再開してから、優秀な人材を確保するために、企業各社が労働条件を良くしている点は見られるようになったか?

手厚く歓迎してくれるわけではない。企業はいまも人を選ぶし、活動のスタイルも変わらない。変化が起きているのは、むしろ就職希望者の側だ。自分が求めているものに妥協しなくなっている。彼らは健全な企業文化、ワークライフバランスを求めている。大企業で働いていた経験からいえば、特に大規模なレイオフが行われると、必然的に仕事量が増える。職探しをしていて目の当たりにしたのは、人々の優先度の変化だ。大企業で働いて立派な肩書を手に入れるよりも、もっとバランスを求めるようになっている。普通なら応募しないような会社にも応募している私だが、友人のなかにはフリーランスの仕事を増やし始めている人もいる。

──このことがあなたの仕事観にどう変化をもたらしたか?

以前にセラピーを受けたとき、私はこんなふうに言った。「これまでに何度か昇進を経験してきたが、そのたびに自分のメンタルヘルスやウェルビーイングを犠牲にしてきた」。当時の私は自分の時間を犠牲にしていた。ジムに行く時間や、スーパーへ買い物に行く時間を削っていた。罪悪感にさいなまれていた。一日中、会議に立て続けに出席していた。だから5時を過ぎると、会議に出席していたせいでできなかった仕事の遅れを取り戻さなければならなかった。朝の5~6時に起きて、勤務時間前に仕事をしなければならないことも何度もあった。9~5時は会議とキャッチアップのための時間と化していたからだ。会議といっても、単なる形式的なものにすぎなかったが。

──採用を行う際、企業の考えの中心にはどんなことがあるべきだと思うか?

福利厚生以上に、バランスや、会社としての人間性、企業文化、管理職の在り方といったようなことだ。会社は社員に夜の10時まで働くことを期待しているわけではないが、一日中会議に出席し、とんでもない量の仕事をまかされていれば、否応なしに夜の10~11時まで働かざるを得なくなる。いま私が探しているのは、5時にきちんと仕事が終わる職場であって、文字通りの9~5時の勤務形態だ。仕事とプライベートのバランスをとることができ、5時に仕事を終われる環境だ。

それでも会社は職務の遂行を社員に期待する。問題は、会社の優先項目が多過ぎることと、社員ひとりで何人分もの仕事をこなしていることだ。サマーフライデー制度も利用できるし、休みたければ休んでもいい。休暇もとれる。問題は、職場に戻ったときに、自分の仕事がまだそこにあることだ。

[原文:‘I was actually relieved to get fired’: Confessions of a burned out brand salesperson

KIMEKO MCCOY(翻訳:ガリレオ、編集:長田真)

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