デジタル技術を駆使したメディアエージェンシーネットワークのメディアモンクス(Media.Monks)は、その創設者であり会長であるマーティン・ソレル氏の桁違いの名声のおかげで、世界のメディア業界ではよく知られる存在となった。しかし、ソレル氏が引きつけた人材と買収したエージェンシーによって、メディアモンクスの日々の運営は、メディアという大海原において、英国海軍のフリゲート艦のような伝統的な持株会社に立ち向かう、向こう見ずな海賊のように感じられている。
ちょうど1周年を迎えたメディアモンクスの船長のひとり(船へのたとえはここで止めよう)が、メディア部門のグローバル責任者であるメリッサ・ワイズハート氏だ。ワイズハート氏は2021年、メディアモンクスでの自身の新しい役割を発表したとき、リンクトイン(LinkedIn)に自らの言葉でこう書いている。「私の使命は今も変わらない。同質性の海のなかで、反抗心を持つエージェンシー、変革者、不適合者や存在感の薄い人間たちからなるメンバーを集め、メディアの未来に挑戦し構築することだ」。
ワイズハート氏はジャイロ(Gyro)、ショップアットホーム(ShopatHome)、ムーア(Moore)でデジタルおよびソーシャルメディアに関するいくつかの職務に就き、2017年に22スクエアード(22squared)のデジタル投資担当シニアバイスプレジデントに就任した。22スクエアードを2021年末に退職したあと、メディアモンクスで現在の職に就き、メディアと測定の分野で約2500人の同僚と共に働いている。
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S4キャピタル(S4 Capital)傘下のメディアモンクスは最近、ユニティ・ゲームズ(Unity Games)のグローバルメディア指定代理店(AOR)となり、ワイズハート氏は、名前を特定することはできないが、小売、ファッション、ビューティ関連のいくつかのクライアントも獲得したと述べる。「彼らはすべて、競争に打ち勝つための新しい方法を探していたクライアントたちだった」とワイズハート氏は言う。
ワイズハート氏は米DIGIDAYのインタビューに応じ、投資へのアプローチ、理想のクライアント、メディアモンクスが従来からの支払い体系に挑む方法、そして信じられないかもしれないが、調達担当者と話すのが好きなことについて語った。
なお、読みやすさを考慮し、以下のインタビューには編集を加えている。
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――社内で注力したことは?
メディアモンクスは多くの合併によって生まれた会社なので、2021年は社内の仕事のやり方を全面的に見直すことに費やした。メディアプランニングと戦略プロセスを刷新し、バックグラウンドではオートメーションスイートに取り組んだ。メディア事業の規模が明らかになれば、大きなニュースになると思う。だが、これまでは意図的に目立たないようにやってきた。
――市場に対して、どのような異なったアプローチをとっているか? あなたならではの特別な味付けは?
我々には一元的な投資チームがある。数年前までディスプレイに特化したプログラマティック広告のバイヤーだった人たちが、今では予算の一部を総合的に見て、「動画広告、屋外広告、ネイティブ広告、ディスプレイ広告、オーディオ広告で自分たちが何をやっているのか」を見ることができるようになった。彼らはよりダイナミックなメディアプラクティショナー(実践者)であり、我々はチャネル間でより流動的に資金を移動させることができる。なぜなら、同じスキルセット、同じ技術スタック、同じ測定ソリューションを本当に活用しているからだ。
我々は実を伴わないCPMを見ているわけではないし、自分たちが関与しているメディアのアービトラージ(裁定取引)や、どこそこのプレイヤーに予算を押し付けることを心配しているわけでもない。我々は、メディア界で起こったことと、下流のビジネスへの影響とのあいだに、統計的な相関関係を見いだそうとしている。我々のチームは最適化の観点で動いている。単にキャンペーンを最適化するのではなく、市場に向けて最適化する。それが我々のアプローチだ。
――理想のクライアントとは?
我々が求めているのは、変革期を迎え、現状維持やレガシーから脱却して、本当に物事を変えたいと考えているクライアントだ。CPMばかりを気にしているクライアントは、我々が理想とするクライアントではない(中略)クライアントの多くは、より深い、ビジネス志向の会話をしたがらない。ボリュームとアービトラージを求めているのであれば、それは当社ではないが、変革的な成長を求めているのであれば──極めて重要な変化の瞬間を迎えようとしていたり、停滞していたり、あるいはビジネスとメディアに関する自身の考え方を変える必要があるのであれば──我々はあなたのエージェンシーになれる。
――では、支払いの問題にはどのように対応を?
私が最も好きなのは、座って調達担当者と話をすることだ。我々の契約がどのように設定されているのか、あるいは彼らがコストシートをレビューし、社内の最高マーケティング責任者(CMO)が我々に渡した概要と比較する方法など、どんな矛盾があるかを説明するのだ。ただ説明するだけではない──我々のエージェンシーパートナーとの関係をより良いものにするために、エンゲージメントの構築を支援もしている。
もし、彼らが間違った問題解決を我々に求めたり、我々を制限しすぎていたりしても、なぜそれらの事柄が相関し、つながっているのかを理解していなかったりしたら……(ちなみに、ほとんどのエージェンシーでは、調達担当者を賢くさせないようなインセンティブが働いている)、我々はそれに関する会話を敬遠しはしない。私は、エージェンシーがブランドを真に実現するために、ひどいことをしてきたと思っている。彼らはかつてないほど多くの費用を投じている。そして、CMOやブランドは、エージェンシーがパートナーとして現場でしていることについて、これまで以上に不満を持っている。それでは、私は進んで支払いについてコンパス(Compass)と別途対話するか? もちろんそうする。
エージェンシーやブランドの成否について、調達が果たす役割に目を向ける人はいない。それは、彼らがふたつの異なる世界から、ふたつの相反するものを補うために生じたものだからだ。もし我々が彼らのOKR(目標と重要な結果)を一致させることができれば、クライアントとして、そしてビジネスとして、その魔法を解き放つことができ、実際に調達チームを助けることにもなる。
[原文:Media Buying Briefing: Media.Monks’ Melissa Wisehart on clients, compensation and procurement]
Michael Bürgi(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:黒田千聖)