デジタル動画 業界の幹部たちは、いま何を語るのか?:DIGIDAY Future of TV Weekレポート

DIGIDAY

テレビ・ストリーミング広告市場の現状に関して、語るべきことは多い。

11月8〜10日に開催された、DIGIDAY Future of TV Week。参加者に匿名性を保証したうえで率直に語ってもらったタウンホールでは、テレビ、ストリーミング、デジタル動画業界のセルサイド側とバイサイド側の幹部社員たちがバーチャルに集結し、プログラマティックの問題、アイデンティティの問題、広告市場の現状など、広範なトピックで議論がおこなわれた。

内容の一部を以下に紹介する。

透明性の話題

「プログラマティックに広告を展開しているが、どれだけの特定ターゲット層の視聴者にリーチできたかを把握することさえ、極めて難しいのが実情だ」。

「我々はファーストパーティーデータを利用し、CTV(コネクテッドTV)を利用してリーチを拡大し、また複数のDSP(デマンドサイドプラットフォーム)を通じてデータセットをエクスポートして広告購入をおこなっている。だが、ある広告がどこで提示されたのか、あるいはどれだけのユニーク視聴者にリーチできたのかといった情報を得ようとすると、問題に直面する」。

「CTVは従来のテレビよりもずっとデータ駆動型だと考えているが、手に入るデータの量や精度に関しては、幻想というほかにはない部分もある」。

「ユニークリーチの側面は、つまるところ購入方法次第であり、ひとつのパートナーを通じて購入したか、複数のパートナーを通じて購入したかによる。アプリプラットフォームのなかには、他のプラットフォームと相性の悪いものがある。Roku(ロク)のワンビュー(OneView)を通じて購入し、かつ他の方法で購入していないなら、ふつうはロクにおけるユニークリーチの情報を得られる。だが、(他のパートナーを通じて)Huluに広告を提示する場合、一対一の対応は得られず、別のトリガーを利用して重複範囲を特定する必要がある」。

「多くのDSPは提携関係にあるが、すべてではない」。

「私が懸念している透明性の問題は、(広告が)どんなコンテンツに提示されているかが不明であることだ。YouTubeは例外で、たいていの場合、どのように視聴されているかをチャンネル単位で教えてくれる」。

「パブリッシャーとして、我々は完全な透明性を保証している。エピソード単位のメタデータも提供できる。クライアント側で避けたいコンテンツがあれば、それに対応することも可能だ。責任はバイヤー側にあり、特に透明性、ブランドセーフティ、ブランド適合性を考慮して、こうしたメリットを提供するパブリッシャーと組むべきだ」。

「こうしたプラットフォームでは、すべてが極めて新しく、オーディエンスが急成長している。そのためプラットフォーム間で重複がある場合、計画の面であいまいさが生じ、断定的なことを言えなくなる。だからこそプログラマティックが魅力的に映るという部分もあるが、結局はアイデンティティの解明やユニークリーチの把握といった問題に直面することになるのだ」。

プログラマティックの問題

「(ストリーミング広告のセラーの)大半は、テレビから(ストリーミングへ)の広告費の流入への備えができていないように感じる。もっと合理化できるといううたい文句に反して、キャンペーンのアクティベーションをおこなっただけで問題が発生している。にもかかわらずバイヤーのパートナーはインベントリー(在庫)を急速に増やしていて、インベントリーの計画面からトラフィッキングに至るまで、今年は大混乱の一年だった」。

「私が思うに、単純にこのような金額を扱うのに必要な経験を持った人材が不足していて、しかもシフトに踏み切る広告主が多すぎるのだ。今年のトラフィッキングプロセスを乗り切るのは、これまでと比べてはるかに困難を伴った」。

「(ストリーミング広告のセラーと)何度もやりとりしたが、我々の広告オペレーションチームが加わってようやく、我々が送った正しいリンク先に彼らがアクセスしていなかったことがわかった」。

「今年、フリークエンシー管理は改善した。ますます多くのパートナーが、1日、1週間、1カ月、あるいはキャンペーン単位でフリークエンシーキャップを設定させてくれるようになった。完全に解決したわけではないが、良い方向に向かっているのは確かだ」。

データのジレンマ

「CTVのデータは、オーディエンスが重複する場合には解釈が難しい。たとえば、ログインアカウントを共有するある世帯を買ったとする。この場合、買ったのはログインユーザーであり、必ずしも求めているユーザーとは限らない。仮に18~34歳の女性をターゲットにしていて、この世帯に該当する年齢層の女性がいるとしても、広告の提示に関しては、ターゲットの女性によるインプレッションを獲得できたのか、それとも同じ世帯の他の誰かのものなのかは、知るすべがない」。

「実行しようとしているデータセットが高度なものであるほど、IPアドレスを選ぶか世帯を選ぶかに関して、選択肢は狭まる。目的が決定論的なマッチに近いほど、IPアドレスを利用する方に傾く」。

「我々のパートナーのひとつは(GoogleのDSPである)DV360だ。彼らには、世帯にリーチしたかどうかや世帯内の人数について、一定の予測がある。実際に測定しているのだが、彼らによれば正確な分析ではなく、あくまで予測だという」。

アイデンティティの問題

「サードパーティCookieがいまだに広く利用されている現状を考えれば、CTVサイドは(個人識別インフラの開発に関して)まだ手つかずの状態と言っていい。もちろんEメールはソリューションの候補の筆頭だが、あまりに多くのプライバシー問題を抱えることになる。ほぼすべてが未解決であり、Eメールが使えない状況は多々あるが、それ以外のソリューションはあまり提唱されていない」。

「アカウント共有を考慮すれば、(Eメールアドレスは)あまりよい解決策にはならないだろう。6つまでアカウントを紐づけできるYouTube TVでさえ、アカウントにいくつもの異なるEメールアドレスが結びついているために、混乱が生じる。さらにHBO MaxやHuluやNetflixでログインを共有している場合も、アカウントを共有している意図しない別の視聴者にEメールを送ってしまう問題が起こる」。

広告市場の現状

「(広告売上に)低迷は起こっていない。ホリデーシーズンに入り、第4四半期は順調な滑り出しだ。我々にはニュース番組の枠があるので、一部は政治広告の増加によるものだ。しかし全体として、過去数週間は明らかに右肩上がりだった」。

「第4四半期はふつう(アップフロント契約での広告費があるために)堅調だ。(広告主は)アップフロントでストリーミングにあまりコミットしておらず、その分スキャッターベースの投資になっている。そのため、多くの資金が流入しているのだ」。

「次のアップフロントで従来型テレビ広告費がどれだけ(ストリーミングに)流れるかを注視している。ストリーミングへの転換は続くと予想されるが、問題はアップフロントにコミットするのか、それともスキャッターベースの投資が続くのかだ」。

「現状を見るに、直接の広告掲載申込(IO)も、プログラマティックギャランティード(PG)も、大量とはいえない。広告主は柔軟性を優先し、一定規模の支出を確約することを避けているようだ。ただプライベートマーケットプレース(PMP)を立ち上げて、それで満足している」。

「誰もが手元に資金を置いておきたがるもので、それこそが直接IOやPG(取引)の強みだ。しかし現実には、顧客は柔軟性を求めていて、直接IOやPGはきわめて限定的な状況でのみ利用されている。プログラマティックに適応できていないのはパブリッシャーだ。彼らには適切なテクノロジーがなく、スポーツなどの注目度の高いプレミアムコンテンツへの特別なスポンサーシップもない」。

Netflixに関する疑問

「バイサイドの誰かが、配信がどのようになっているのかを共有してくれたらと思う」。

「我々はクライアントに、来年の第3四半期までNetflixのことはあまり考えすぎないほうがいいと助言している。その頃にはターゲティングが高度化し、獲得可能なオーディエンスがどんな集団なのかがはっきりしてくるだろう」。

[原文:Future of TV Briefing: Overhead during Digiday’s Future of TV Week Town Hall

Tim Peterson(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:黒田千聖)

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