シーイン 、米国での新戦略はポップアップ店とマケプレ構築が軸に:「脱・ファストファッション」への道も模索

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オンラインで熱狂的なファンを獲得したシーイン(Shein)は現在、ポップアップ店舗や、新しいサードパーティーマーケットプレイスによって、米国での支持をさらに高めることを目指している。

ファストファッション大手の同社は4月、ブラジルではじめてサードパーティーマーケットプレイスを立ち上げ、現在は米国でもマーケットプレイスがスタートしたことをメールで認めた。また同月、米国でのビジネスチャンスを推し進めるため、ロサンゼルスとカリフォルニアで複数のポジションの求人情報を掲載していた

これまでのところ、このプラットフォームは、ケープロビン(Cape Robbin)と呼ばれるロサンゼルスを拠点とするファッションフットウェアブランドのような米国の小規模な小売業者を相手にしており、人々にシーインで衣服以外の商品も購入してもらうことをめざしている。シーインは、このプラットフォームに加え、ポップアップ店舗を着実に増やしている。昨年は米国だけで12店舗ほど、全世界で40店舗以上のポップアップ店舗を開いたといい、米国での支持者を増やすため、主にこの2つの分野を重視しているようだ。同社は昨年、230億ドル(約3兆2200億円)の収益を上げており、ウォールストリートジャーナル(The Wall Street Journal)によると、今年は40%の収益増を目標にしている。しかし、競合他社、具体的にはライバルのティームー(Temu)もの競争力も高まってきている

スローでスモールなスタート

「当社は、全世界でマーケットプレイスのプラットフォームを運用する作業において、いまだ初期段階にあり、現在のところ活動しているのはブラジルと米国だ」と、同社の広報担当者はメールの声明に記した。同社によれば、マーケットプレイスにより、これまで同社がオンライン販売で成功を収めてきたファッション、美容品、ライフスタイルに留まらない、新しいカテゴリーを導入できるようになる。「ファッション、美容品、ライフスタイルにおける幅広い品揃えだけでなく、マーケットプレイスでは、顧客に対してさらに便利でシームレスなショッピング体験を提供する方法として新しいカテゴリーを取り入れる」と、同社は記している。また、米国のプラットフォームでは、「現在、数百の売り手がいる」と述べる。

業界アナリストは、このマーケットプレイスの立ち上げが、スローで控えめなものだと語る。

「スロースタートであり、スモールスタートだ。このプラットフォームがこの先どのようなものになるかを見極めるには、しばらく時間が必要だと思う。しかし、米国の売り手をオンボーディングさせるのはかなり厳しい戦いになると思われる」と、マーケットプレイスパルス(Marketplace Pulse)の創業者でCEOを務めるジョーザス・カジウケナス氏は語る。TikTokが米国の小売業者とのあいだで同様の問題を抱えているという報道は、シーインもまた、米国の売り手を取り込むのに苦労することを示していると同氏は付け加えた。

脱・ファストファッション

シーインが米国で販売するものには、中国のエレクトロニクス大手であるレノボ(Lenovo)などの商品が含まれる。同社のホームページでは、ファッションアイテムで80%、家庭用品で70%のメモリアルデー(Memorial Day)割引を行った。

「シーインは現在、自社の取り扱い範囲を拡大し、ブランドをアップグレードしてマーケットプレイスを変貌させるべく、総力で作業を進めている」と、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)で小売およびeコマースのシニアアナリストを務めるスカイ・キャナバス氏は述べる。「同社は長期的に、単なる安価で使い捨てのファッションを扱うというブランドの枠を超えた業者になることを望んでいるのだと思う」と、同氏は付け加えている。

カジウケナス氏によると、シーインのマーケットプレイスは、米国を拠点としているのかなど、売り手についての詳細が「かなり不透明」だという。「そのため、これらの業者のうち、どれが米国の売り手で、どれが中国の売り手なのかを知るのは難しい。しかし、同社は間違いなく、このマーケットプレイスを開始してから多数の売り手を追加しており、さらに多くの売り手を追加していくだろう」と、同氏は述べている。同氏は、シーインで販売されている米国企業の例として、家庭用品ブランドのコストウェイ(Costway)を挙げている。

新しいマーケットプレイスは、新しい収益源として期待される一方、「マーケットプレイスに追加されるアイテムは、すでに別の場所で売られている」ことから、消費者への訴求を多少薄めてしまうことになると、同氏は述べている。

ファストファッション分野での減速

キャナバス氏も、シーインがブランドや売り手を引き入れるために多くの努力が必要だろうという点に同意するが、「しかし、同社は若いZ世代の消費者の膨大なオーディエンスと、多くのトラフィックを保有している」と述べている。

それでも、「超格安、超ファストファッションという同社のコアカテゴリーにおいて、成長はかなり減速していることがわかる。そして、これはファストファッション分野全体の成長鈍化と連動している。これは、予算を気にする消費者が自由裁量の出費を切り詰め、さらに競合が多くなっているためだ」と、キャナバス氏は述べている。

たとえば、中国を拠点とするピーディーディー・ホールディングス(PDD Holdings Inc)の子会社であるティームーは、マーケティングに多額の投資を行い、大幅な割引を行うことで、急速に拡大してきた。ザ・ジャーナル(The Journal)が引用したセンサータワー(Sensor Tower)のデータによると、これによって、9月に米国で営業を開始したティームーは11月、モバイルアプリのダウンロード数でシーインを超えた。

ポップアップ店舗の狙い

ブランドの認知を促進するため、シーインはオフラインへの移行も進めている。同社は米国のさまざまな都市でポップアップ店舗を開き、買い物客が商品に触れて感触を確かめられるようにしている。ラスベガスでもポップアップ店舗が開かれた(5月25〜28日)。同社は「これからもデジタルファーストを貫き、恒久的な店舗を開設する計画はない。当社の顧客が商品に触れて感触を確かめ、現地のブランドアンバサダーと直接交流するための方法として、ポップアップ店舗を通してオムニチャネルのショッピング体験を提供し続ける」と述べている。

キャナバス氏は、ラスベガスのザ・ベネチアン・リゾート(The Venetian Resort)のショッピングエリアに開いたポップアップ店舗を訪問した経験について語っている。「最初に驚いたのは、本当のラグジュアリーモールにシーインが出店することだ。ここは、大手のラグジュアリーブランドやプレミアムダイニング、非常にハイエンドのホテルで占められている、非常にハイエンドのプレミアムショッピングセンターだ」。

キャナバス氏は、「シーインはこのポップアップ店舗の戦略を通して、新しい製品を直接発見できる店舗に戻るという消費者の関心を収益化することで、自社のビジネスを推進し、ブランドをさらに構築していく。そしてこれまでのところ、彼らは開設したポップアップ店舗で大きな成功を収めていると思う」と述べている。ニューヨークタイムズ(New York Times)によると、同社が昨年ダラスに開設したポップアップ店舗では、店舗が正式オープンする何時間も前から人々が行列を作った。シーインのインスタグラム投稿へのコメントによると、同社は一部のVIP顧客に対してメールによる予約アクセスを提供した。

結局のところ、「シーインがプラットフォーム上のブランドの業績を促進し、それをほかのブランドに示すことができ、さらに価格に競合力があれば」、マーケットプレイスを発展させることが可能だろうと、同氏は述べている。

[原文:Shein bets on third-party marketplace, pop-ups to grow its following in the U.S.]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image from Screen grab from Shein’s U.S. marketplace

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