Web3 に必要なのは専門用語でなく、長期的な視野:「顧客のために何をどう変えたいのか考えるべきだ」

DIGIDAY

Web3の未来について語るとき、専門用語ばかりに気を取られ、実践的な議論が置き去りにされがちだという声が聞かれる。

「Web3なのか、Web2なのか、メタバースなのかといった話ばかりしている」。そう指摘するのは、NFTドメインやデジタルアイデンティティツールを提供するアンストッパブルドメインズ(Unstoppable Domains)でシニアバイスプレジデント兼チャネル責任者を務めるサンディ・カーター氏だ。「もっと顧客のニーズに焦点を当てるべきだ」。

「Web3やメタバースなどのバズワードは不要」

カーター氏は新興技術の普及や導入に明るい人物だ。アンストッパブルドメインズに入社する以前は、AmazonとIBMで役員を務め、クラウドソフトウェアに関連する各種のツールの導入支援に携わっていた。

Web3戦略を策定するよりも、顧客のために何をどう変えたいのかを理解することに時間を割くべきだとカーター氏は話す。「理想的な世界では、Web3とかメタバースとか、そういうバズワードは使わない。顧客の真のニーズに応えるだけだ」。

先週開催されたテクノロジーカンファレンスのウェブサミットでは、カーター氏を含む多くのテクノロジー企業の幹部が開催地のリスボンに集い、新しいテクノロジーの導入に伴うさまざまな影響や課題について議論した。

昨年以来、マーケターたちは広範な種類のWeb3構想にこぞって投資するようになった。限定的あるいは大規模なNFTコレクションの展開、あるいは仮想世界の構築。さらに、NFTをほかの用途、たとえばロイヤルティプログラムや「トークンゲートコマース」に活用する道を模索するブランドもあれば、実店舗の設置を試みるブランドまである。

しかし、暗号通貨やNFTの価格は現在下落傾向にあり、過剰な期待に盛り上がる反面、懐疑的な見方も出始めた。

言葉遊びはやめて、時間をかけて取り組むべき

マーケティング業界の内外を問わず、Web3の信奉者のなかには、NFTからブロックチェーン、各種のメタバースに至るまで、Web3にまつわる何もかもに対応することが急務だと説く人々がいる。しかし、ブロックチェーン関連の企業で働く人々のあいだには、Web3の本格的な導入には想像以上に時間がかかるとの議論もある。

「かつては、イーサリアムで構築させるすべてのプロジェクトを把握していた」。そう話すのは、Web3企業を顧客とするマーケティングエージェンシーのセロトニン(Serotonin)を設立し、CEOを務めるアマンダ・カサット氏だ。「いまではWeb3事業が多方面にわたるため、すべてを追跡するのは難しい。結局のところ、Web3はあくまでも基板(サブストレート)であり、ツールキットであって、既定の結果ではない。多方面に進むとしても、それは当然のことなのだ」。

「消費者もすぐには専門用語を必要としない。この技術が何に使われるかを理解していればそれでいい」。RLYネットワークアソシエーション(RLY Network Association)の最高マーケティング責任者(CMO)を務めるジェレマイア・オーヤン氏はそう話す。同氏によると、NFTを手軽で即効性のあるソリューションだと誤解するマーケターは少なくないという。しかし、デジタルトークンを含め、NFTベースの資産を提供するブランドは、それを長期的に保有する人々がいることも忘れてはならないと同氏は指摘する。

Web2プラットフォーム戦略から離れられるか

「マーケターは短期的なプロジェクトやキャンペーンという視点で物事を考えがちだ」とオーヤン氏は話す。「彼らは複数年単位で考えない。複数年におよぶ構想に対応する方法を知らない」。

オーヤン氏とカサット氏によると、一部のブランドはFacebookやTwitterでオーディエンスを形成するために膨大な時間を使ってきたが、それは必ずしも賢い時間の使い方ではなかったと気づきはじめているという。せっかく築いたオーディエンスを別のプラットフォームに移動させることができないからだ。

また両氏は、Web3企業やWeb3技術を扱う企業がマーケティングをおこなう場合、Facebookのようなソーシャルネットワーク、つまりWeb2のプラットフォームと同じ手法ではうまくいかないとも述べている。

「ソーシャルネットワークにある我々のデータを、それを保有する億万長者たちの好きにさせてはならない」とオーヤン氏はいう。「それは本来、消費者が掌握すべきものだ」。

[原文:Web3 marketers: Brands need to think less about terms and embrace longer timelines

Marty Swant(翻訳:英じゅんこ、編集:分島翔平)

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