2022年3Q、 Amazon はいかにして広告事業で95億ドルを稼いだか:「エンタープライズテックを販売できる存在に変わろうとしている」

DIGIDAY

10月27日木曜日にAmazonの第3四半期の業績が発表され、広告事業が95億ドル(約1兆3300億円)を売り上げて、純総売上高1108億ドル(約15兆5120億円)に貢献したことがわかった。

Amazonがeコマースを主体としている(そしてそれが近々に変わることはない)ことは明白だが、第3四半期におけるメディア関連の売り上げが前年同期比で25%も増加したという事実は、この業界で同社の存在感が高まっていることを物語っている。

総合的なサービス提供者を目指すAmazon

10月第4週のはじめに、Amazonマーケティングクラウド(AMC)とアドテクソリューションの担当ディレクターであるキーラト・シャルマ氏が、同社の広告ビジネスを加速させる戦略の柱となるデータクリーンルームの提供について米DIGIDAYに語ってくれた。

この対談はAmazonが開催するunBoxed 2022カンファレンスに先立っておこなわれたものだが、このカンファレンスの中で同社は、動画広告やプラットフォームのアップデートを含めた一連のアップデートに加え、急成長するパートナーシッププログラムについても明らかにしている。

教育サービスを扱うユー・オブ・デジタル(U of Digital)の創設者シブ・グプタ氏は、DIGIDAYによる別の取材のなかで、Amazonはより総合的なサービス提供をおこなうことで、弱肉強食の広告・マーケティング業界の中で効率よく上位に立とうと目論んでいるのだと説明している。

同氏によれば、「これまでの10年間、Amazonはあらゆる面でDSP(デマンドサイドプラットフォーム)だったが、アドテク企業サイズミック(Sizmek)の買収や、AMCのデータクリーンルームへのさらなる投資により、単なるポイントソリューションの提供ではなくエンタープライズテックを販売できるチームへと転換を図ろうとしている」のだという。

現代のメディア・マーケティング業界をざっと見ただけでも気づくことだが、マーケター(ひいてはほかのすべての人々)が直面するもっとも顕著な課題のひとつは、ウェブブラウザとモバイルOSプロバイダー各社がインターネットユーザーをターゲットにする時代は終わりにしようとしているため、従来のような識別子が減少しているということだ。そしてこの問題に対処するべく、Amazonの経営陣は、10月25日~27日のunBoxed 2022のブレイクアウトセッションの中で、自社製品の売り込みをかけたのである。

Amazonによるコンテクスチュアル広告

欧州インタラクティブ広告協議会(IAB Europe)が最近行った調査によると、スケールしたファーストパーティデータがないために、マーケターたちはよりいっそうほかの形式でのデータエンリッチメントに目を向けるようになっている。だがその一方で、サードパーティデータはますます敬遠される状況にある。

そんななかAmazon Adsが売り込もうとしているのは、ストリーミングやショッピングといった自社の様々なオンラインサービスや、あるいはAmazonのプロパティ上でのその他の行動から得られた「集約されたシグナル」だ。

「シグナルとは一般的に、ある特定の瞬間に消費者が示す様々な事象や行動を指し、消費者の興味や親和性を示すものだ。消費者行動の現在と予測される将来の状態を反映することもある」と、Amazon DSPのシニアマネージャーであるジェン・ドーア氏は説明する。

「われわれは、匿名インプレッションと呼ばれる部分への広告配信を実現するための推論を生成するべく、シグナルの集約に取り組んでいる。これらのシグナルを使えば、集約されたスケールやファーストパーティインサイトなどにもとづいて、広告のアドレサビリティを明確にすることができるし、こうしたインサイトはオーディエンスとエンゲージするためのより密接な機会をもたらしてくれる」。

パブリッシャーとのパートナーシップも

Amazon Adsでは、セールススタッフが「精度」よりも「正確度」を強調したセールストークに磨きをかけ、同社のプロパティだけでなくサードパーティのウェブサイトにおけるオーディエンスに対してもアクセスする方法を提供している。

またAmazonはサードパーティパブリッシャーとも協働し、製品購入に至る可能性が特に高いオーディエンスを広告主が見つけられるように支援するため、効果的に決定論的なターゲティングから確率論的方法へ転換する手法の改善に取り組んでいる。

ドーア氏はさらに、「私たちはAmazonパブリッシングダイレクト(APD)を通じてパブリッシャーから直接シグナルを受け取っている」と付け加え、場合によっては、特定のメディアオーナーのサイトにおけるアジャスタビリティを高めるために、パブリッシャーから提供されたシグナルを含むことがあると説明した。

同氏は「これには特定の潜在的なパラメータセットのほか、より高いフィデリティを有するページコンテンツへのアクセス保証が含まれる。それは、当社では広告インベントリ(在庫)サプライチェーンにおける仲介業者を最小限に抑えているからであり、そのほうが私たちのモデリングについてより深く知ってもらえる」と述べている。

ライブランプとのタイアップ

さらにAmazonは、AIを活用したアトリビューションモデルを使って広告主を支援することで、Amazon Ads内での支出のROI(投資利益率)をより正確に算出できるようにしたり、広告主がサードパーティのIDをインポートできるように開放したりする予定だ。

「モデルコンバージョンについては、広告インタラクションとAmazon.comでのコンバージョンイベントの間でリンクが利用できない場合、私たちが広告主のアカウントのコンバージョンの手伝いをする」と、Amazon AdsのGTM(go-to-market)セールス戦略担当ヘッドで、フェロープレゼンターのジョー・ミッチェル氏は説明している。

「広告主のオーディエンスとの相互運用性を高める目的で、AMCではファーストパーティシグナルだけでなくサードパーティIDも認めている。そして、測定戦略の選択肢としてライブランプ(LiveRamp)のランプID(RampID)をAMCでサポートするようにした」と、ミッチェル氏は付け加えた。「オーディエンスの管理にライブランプを利用する場合には、ランプIDをキーとして利用すれば、Amazonの広告セールスやカスタマーアナリティクスのオーディエンスと結合できる」。

Amazonは現在市場第3位につけているが、同2位のメタ(Meta)が現在波乱含みの状況を強いられているなかで、果たしてeコマース大手のAmazonが差を詰めてくることができるのか、それはいつまでかかるのかと疑問を呈する声もある。

[原文:Amazon’s ad business earned $9.5B last quarter, here’s how it’s pitching itself to advertisers

Ronan Shields(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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