ザ・ノース・フェイス、回収プログラムを再始動:サーキュラーデザイン拡大に向けて

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ザ・ノース・フェイス(The North Face)は廃棄物を最小限に抑え、素材を再利用することを目的としてデザインされたアパレルを発売する。

同社は10月、単一繊維による構成とトリムを採用したサーキュラー(循環型)デザイン製品の第一弾を発表した。サーキュラリティとは、素材の再利用・修理・リサイクルによって、可能な限り長く循環を繰り返すことを意味する。サーキュラーデザインでは、簡単にパーツを分解し、新しい製品に再利用しやすいように最初から設計されている。ザ・ノース・フェイスのサーキュラーデザインの商品は、パンツやクォータージップなど20のスタイルを網羅しており、大人用、プラスサイズ、ヤング、アクセサリーのカテゴリーにまたがっている。

ザ・ノース・フェイスのサーキュラーデザインへの取り組みは、2025年までに同社の主要なアパレル素材の100%を責任のある形で調達、リサイクル、再生および継続可能にするという約束に向けた最新のステップとなる。この活動の一環として、同社は10月後半、新バージョンの引取プログラムを開始し、修理・再利用・回収について、消費者に啓蒙するラベル付けシステムを導入する。

「ブランドのDNAに組み込まれている」

ザ・ノース・フェイスは1960年代後半と1970年代初めに永久保証と修理プログラムを開始した実績があり、同社には、サーキュラリティが「ブランドのDNAに組み込まれている」と、同ブランドのサーキュラーデザインマネージャーを務めるケレン・ヘネシー氏は米モダンリテールに語った。

同社は2013年、「クローズ・ザ・ループ(Clothes the Loop)」プログラムを開始し、顧客が古い商品を持ち込むことを奨励した。2020年には、デザインを中心とした研修を開始し、サーキュラーデザインのプロセスを従業員に教えた。また、現役のデザイナー向けにサーキュラー経済の詳細を教えるワークショップを開催しており、11月には次回のセッションが予定されている。

ヘネシー氏は次のように述べている。「当社が本当に追及していたのは、商品が完成したあとでライフサイクルの延長に対応するのではなく、デザインプロセスの初期段階からサーキュラリティの原則を組み入れるにはどうすればいいのかということだった。そのためには前もって膨大な学習を行い、デザイナーが作業するための枠となるパラメータを作り上げる必要があった。シーズンごとに規模を拡大し、スタイルが継続的に更新され新しいスタイルが追加され、それに伴って、我々の商品からより多くの商品を組み入れられるようになることに期待している」。

サーキュラーデザイン製品の第1弾として、オシト(Osito)とオーバーン(Auburn)のコレクション、新しいポーラテック(Polartec)のフリースを発表した。ザ・ノース・フェイスは、これらのアイテムについて、トリム、タグ、ボタンやジッパーなどの開閉システムを含む素材に変更を加え、アパレルの解体やリサイクルを容易にした。分解テストにおいて、オシトのジャケットの90%は約20秒で回収でき、オーバーンのジャケットの97%は9秒で回収できたと、同社はプレスリリースで述べている。

ヘネシー氏は次のように述べている。「実際のところ、商品の機能を維持しながら、商品の生まれる過程の一部を変更しているだけだ。インターフェイスは依然として、消費者にとって親しみやすく、快適で使い慣れたものであるべきで、これからも消費者のニーズをすべて満たすものであることに変わりはない。しかし、商品が寿命を迎えたあとの回収、分解、リサイクルの流れは、より効率的なものになるということだ」。

回収プログラムの再始動

ザ・ノース・フェイスは10月後半、「リニュード(Renewed)という名称で、回収プログラムを再始動する。「クローズ・ザ・ループ」では、顧客がどのようなブランドのアパレルでも持ち込めたのに対して、「リニュード」はザ・ノース・フェイスの商品に特化する。買い物客は使用済み商品を対面で持ち込むことができ、ロイヤルティ会員が商品を返却すると、オンラインや店舗で利用できる10ドル(約1510円)のクレジットがもらえる。返却された商品は洗ってから再販売される。商品を修復できない場合はリサイクルまたは寄付される。サーキュラーデザインの商品は、ユニファイ(Unifi)とのパートナーシップにより原材料に戻される。

フォレスター(Forrester)のバイスプレジデント兼プリンシパルアナリストを務めるスチャリタ・コダリ氏は、米モダンリテールへのメールで、ザ・ノース・フェイスのサステナビリティへの取り組みを称賛している。

「これはアメリカの企業としては、非常に優れた先進的な方針だ」と同氏は述べる。同氏はさらに、拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility、ERP)について言及している。これは、消費者が使用した後の商品の処理と廃棄を行う責任を製造者に負わせる政策だ。ERPが米国政府によって義務化されるまでは、「これは任意であり、企業と市民の善意による行為だ」と同氏は付け加える。「私はザ・ノース・フェイスがこの方針を採用したことを称賛するが、正直この方針はもっと広まる必要がある。残念ながら、義務付けられるまでは広まることはないだろう」。

米国環境保護庁(U.S. Environmental Protection Agency)によると、2018年の時点で、米国の衣類とフットウェアの70%近くは最終的に埋め立てられていた。これらの商品のうち、リサイクルされたのはわずか13%にすぎない。この割合を増やすため、ティンバーランド(Timberland)ロージーズ(Rothy’s)など多くのアパレルおよびフットウェアのブランドは、この数年間に回収
とリサイクルのプログラムを開始した。エディー・バウアー(Eddie Bauer)は今夏、(リ)アドベンチャー・プログラム((Re)Adventure program)を拡大し、商品やアパレルのレンタルとリセールを開始した。廃棄物リサイクル企業のテラサイクル(TerraCycle)は、、ロレアル(L’Oréal)、ペプシコ(PepsiCo)、プロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble)、クローガー(Kroger)などの大手メーカーに加えて、パレード(Parade)やリリーシルク(Lilysilk)などのD2Cブランドとも協力し、これらの取り組みの多くで主要な役割を果たしている

最大の課題はコスト

サーキュラーデザインを追求する企業のほとんどにとって、通常は資金が最大の障害になると、コダリ氏は語る。

同氏は次のように述べている。「ほとんどの場合、使い捨ての材料を使うほうが安価かつ簡単で、完全にリサイクル可能な材料や生分解性の材料を購入するのは大幅に高価になる。コストが最大の要因で、小売業者がその経費を吸収するか、顧客に転嫁するかだ。サステナブルな商品のために追加料金を支払うことを望む顧客は少ないが、ほかの商品と同等な価格なら、顧客は喜んでサステナブルな商品を購入するだろう」。

ザ・ノース・フェイスは、同社のサーキュラーデザインの商品は、以前のバージョンと価格は変わっていないと、米モダンリテールに語った。新商品のうち、キッズ向けのオソリタ・フルジップ(Osolita Full-Zip)ジャケットはもっとも安価で、75ドル(約1万1300円)だ。アルパイン・ポーラテック200フルジップ(Alpine Polartec 200 Full-Zip)フード付きジャケットはもっとも高価で、129ドル(約1万9500円)だ。NPDグループ(The NPD Group)とシビックサイエンス(CivicScience)によって行われた2020年1月の調査によると、消費者の37%はサステナブルなアパレルに追加料金を支払ってもいいと回答している。

最終的に、ザ・ノース・フェイスは、サーキュラーデザインを一度限りの手法ではなく継続的なミッションだと考えていると、同社でグローバルサステナビリティ担当シニアマネージャーを務めるキャロル・シュー氏は米モダンリテールに語った。

同氏は次のように述べている。「サーキュラリティの達成は、当社のサステナビリティ戦略の一部だ。既存のフランチャイズをサーキュラーデザインに置き換えるか、サーキュラーデザインを採用した新しいスタイルをデザインするか、毎シーズンの商品をデザインチームとともに常に識別している」。

[原文:How The North Face is approaching circular design]

JULIA WALDOW(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via The North Face

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