フランスの 美容小売 が英国へ進出:英国の美容界をリードする存在を狙う

DIGIDAY

英国に狙いを定めている国際的な小売業者はセフォラ(Sephora)だけではない。フランス国内で22店舗を展開する、創業10年のフランスの美容コンセプトストア、オーマイクリーム(Oh My Cream)は、10月16日、ロンドンのノッティングヒルに初の店舗をオープン、英国専用のeコマースサイトを開設した。英国への大きな進出の一環として、11月にはチェルシーに2号店を開く予定だ。パンデミック前のオーマイクリームは年間収益が1260万ドル(約18.7億円)で、過去2年間で30%の成長を遂げている。

グローバル展開を考えれば、英国は当然の選択肢

オーマイクリームは、店頭の専門家や現実世界での高尚な体験に注力し、これらの機能に飢えているクリーンな美容ファンを引きつけることを期待している。「グローバルな展開を考えたとき、英国は当然の選択だった」とオーマイクリームのCEOジュリエット・レヴィ氏は言う。「私たちは非常に現実的だ。英国は近いし、私たちは全員英語を話せるし、ユーロスターは超速い。英国のEU離脱やそれに伴う困難があってさえも、特に米国やアジアにくらべて、まったく実現不可能な選択とは思えなかった」。

専門知識の豊富なスタッフがセールスポイント

店内での体験が付加価値を生むことが重要ないま、オーマイクリームが提供するスキンケアトリートメントは利益の分け前のひとつにすぎない。真の価値は、店内で提供される専門知識にある。「デパートでは、人の出入りが多く、スタッフの入れ替わりが激しいため、適切なトレーニングを提供できないことが多い。人々をうまく教育するには多くの金と時間がかかる」とレヴィ氏は指摘した。「店の顧客は、クリーンでニッチなすばらしい商品があるクールでモダンなショップだと言ってくれる。だが、すばらしいのは店舗で働く人たちなのだ」。

フランスでは、オーマイクリームは過去10年でクリーンビューティのファンからの支持を増やしてきた。顧客は、訓練を受けた専門家からパーソナライズされたスキンケアのルーチンを教えてもらい、タタハーパー(Tata Harper)やアンティポディース(Antipodes)、パイスキンケア(Pai Skincare)といったブランドの製品を購入することができる。「オーマイクリームはクリーンでホリスティックなアプローチをとっており、くつろげる店舗ではビューティアドバイザーと1対1の関係を築くことができる」とレヴィ氏は言う。またCovidの時期は、オーマイクリームの製品を初めてオンラインで購入した買い物客のうち、店舗で再び購入する人は一時期20%だったが、現在では、50%に跳ね上がっている。

大きく変化する英国のオンラインビューティ

英国の美容消費者はいまでもオンラインで購入しているが、ほとんどの人が店頭での購入を好んでいる。マーケットリサーチ会社ユーガブ(YouGov)の2022年の調査によると、英国の消費者の14%が健康・美容製品をオンラインで買い物することを好むが、20%が主に店舗で購入していることがわかった。

現地のオンラインビューティの状況は、大きな変化を遂げている。英国のオンラインビューティのリーダーのひとつであるカルトビューティ(Cult Beauty)は2021年にハット・グループ(The Hut Group)に買収されたことで所有者が変わり、共同創業者アレクシア・インゲ氏がその後会社を去った。それ以来、さらに多くのスタッフが去り、ブランドパートナーへの支払いも遅くなっていると、サンデー・タイムズ(The Sunday Times)が報じている。同時に、新たな美容の供給元も出現している。たとえば、ファッション小売のブラウンズ(Browns)は今年、ファーフェッチ(Farfetch)との提携で美容を提供するサービスをデビューさせた。

英国の美容界をリードするのはどこか

アルタビューティ(Ulta Beauty)とセフォラ(Sephora)が明確なリテールリーダーである米国とは異なり、英国には支配的なプレーヤーがおらず、美容の分野が断片的な状況であることに悩まされている。現在、方向性を示すリーダーはブーツ(Boots)で、フェンティビューティ(Fenty Beauty)のような話題性のあるブランドで店頭の品揃えを改良し、2021年に店舗をリニューアルしている。そして百貨店のセルフリッジズ(Selfridges)は、人気のある美容製品の供給元だ。最近では、セフォラで全米での存在感のあるクリセル・リム氏のブランドクリステル・リムのブランド、フラー(Phlur)がセルフリッジズで発売された。

オーマイクリームは英国の美容界をリードする存在になりたいと考えているが、17年前に英国を離れ、10月17日にオンラインでリローンチしたセフォラも同様だ。セフォラは2023年春には英国初の専用店舗をオープンする予定でいる。同社は2021年9月に英国のeコマース美容小売業者フィールユニーク(Feelunique)を1億4700万ドル(約218.9億円)で買収したため、フィールユニークは既存の130万人のアクティブユーザーとそのリワードプログラムは維持したまま、10月17日からセフォラブランドの体験に移行される。オーマイクリームは、長期的にはロンドンで10店舗から15店舗を計画している。

長期的な思考でブランドのロイヤリティを築くべき時期

WGSNで小売およびビジネスインサイトストラテジストを務めるロヒニ・ワヒ氏によると、2022年は世界的に新規出店の驚異的な期間となっており、口紅指数は堅調だという。「年末の経済への懸念や先の見えないホリデーシーズンが控えているにもかかわらず、国内外のホリデーの復活は、ファッションと美容に恩恵をもたらす強い可能性を秘めている」。

だが現在、生活費の危機と顧客が自由に使える支出に影響を及ぼしている不況の中で、英国のブランドと消費者は特に厳しい状況に置かれている。

「いまこそ小売業者は、人材を重視し、長期的な思考でブランドのロイヤリティを築くべきときだ」とワヒ氏は言う。「ブランドや新店舗は顧客サービスをさらに強化し、顧客がドアを開けて入ってきたときには完全にスタッフの準備が整っているようにして、ストレスを受けている消費者のために、迅速な返金や細かいルールのない保証など、いっそうの努力をする必要がある」。

ワヒ氏はさらに「人々が余分なお金を使う場所を検討している今、もっとも重要なのは(優れた)顧客サービスだ」とつけ加えた。

リテールウィーク(Retail Week)のクリスマス予測によると、美容は売上高が0.2%上昇すると予測されている唯一のセクターであるため、ホリデーシーズンの間はそうした点が特に重要になるだろう。

[原文:More French beauty retailers expand to the UK]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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