モドプールズ、D2Cプール業界に旋風を巻き起こすまで:需要増で生産体制も強化

DIGIDAY

こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります

モドプール(Modpools)の創設者であるポール・ラスナム氏は2015年、輸送コンテナの改造を行ってきた職歴と、家族のために1年中使えるプールを作りたいという願望を合体することにした。同氏はアップサイクルした輸送コンテナを基礎として、窓があり温水浴槽も付いた地上用水泳プールの最初のデザインを作り上げた。

ラスナム氏は製造や、エンジニアリング、配管の正式な訓練を受けたことはない。しかし同氏は、自分の構想を現実化すると決意していた。同氏は2年後の2017年、カナダのブリティッシュコロンビアでモドプールズ(Modpools)を正式に立ち上げた。

それから7年後の現在、モドプールズは1000のプールを販売した。同社はテキサスに2番目の製造工場を開設した。現在は、2022年の収益が2000万ドル(約29億円)に達する見込みだ。同社は配達しやすく場所を変えられるプールにより、世界のプール業界にニッチな市場を開拓した。テックナビオ(Technavio)のレポートによると、この市場は2019年から2024年にかけて35.6億ドル(約5160億円)増大すると予測されている。

家屋やアウトドアへの支出が増加

IBISワールド(IBISWorld)の9月のレポートによると、パンデミック中に「消費者の習慣が突如変化したことが、プールの構築も含め、家屋の改善やアウトドア体験への支出を促した」ことで、プールへの需要が増大した。レポートによると、現在、「プール用機器の売上増加のうち、オンライン小売業者に奪われる割合が増え」ており、2017年から2022年の水泳用プール機器業界の年間成長の14.4%をeコマースが占めている。

モドプールズの商品は同社のウェブサイトからD2Cで販売され、「プロパティ・ブラザーズ(Property Brothers)」や「タイニーハウスネイション(Tiny House Nation)」などのテレビショーに登場してきた。また、これらの商品は用途が広く、商用プールやドッグスパなどの企業用の環境でも使用できる。「すべてが揃えば、組み立てるだけで使用できる。これが、当社の商品が人々を引きつける理由だと考えている」と、ラスナム氏は米モダンリテールに語った。

モドプールズのビジネスモデルの鍵になるのが、カスタマイズとテクノロジーだ。顧客は同社のウェブサイトで自分用のプールをデザインし、さまざまな色とサイズを選択できる。もっとも小さなプールは長さ12フィート(約3.66メートル)で、最低価格は2万8500ドル(約413万円)だ。もっとも大きなプールは長さ40フィート(約12.2メートル)で、最低価格は5万3500ドル(約776万円)になる。クライアントは別料金を払ってプールの幅を増やしたり、スパ用の椅子や階段を追加したりすることもできる。プールが完成したら、WiFiを追加してスマートフォンのアプリから制御できる。プールは完成するまで約8〜18週間かかるが、設置が完了してからは「数日間で使用可能になる」とラスナム氏は述べている。

試行錯誤の連続

モドプールズは昨秋、生産能力増強のためにテキサスのヒューストンに大規模な施設を開設した。現在は、各部門と拠点を合わせて約100人の従業員が存在する。初期段階では試作品のデザインに重点を置いていたが、「現在は本質的に製造業者だ」とラスナム氏は述べている。

この事業を軌道に乗せる道のりは平たんではなかった。同氏は次のように述べている。「プールの構築は、傍目ではそれほど複雑に見えないかもしれない。しかし、現実には温度やタイミングに関して複雑な手順が多く、試行錯誤の連続だった。あまりの難しさに、これからこの分野に参入する大手の競合他社は本当に困難な戦いを強いられることになるのだということに気がついた」。

地上用プールは一般的に、地中プールほど建設や整地が必要ないため、地中プールよりもコストが低くなる。ホームガイド(HomeGuide)によると、地中の水泳プールの平均コストは3万5000ドル(約508万円)になる。地上用水泳プールは設置作業込みで平均1850ドル(約26万8000円)から4977ドル(約72万2000円)だ。

しかし、それらを既存の空間に収容するには多少の計算が必要だ。「裏庭や周囲の条件とプールの場所に応じて、課題やデザイン手法は異なる」と、ニューヨーク市のアットアーキテクツ(At Architects)の創設者であるアナ・マリア・トーレス氏はメールで語った。

プール業界の盛り上がり

プール市場にはいくつかの分野がある。プール、温水浴槽、水泳スパを販売する企業に加えて、プール関連の機器、洗浄剤、メンテナンス用品、およびプールと裏庭のアクセサリを販売する小売業者もある。また、プールを設置する建築・建設企業や、プールの修理と保守を行うサービス企業も存在する。

プール業界で最大の業者のひとつであるプールコーポレーション(Pool Corporation)は、16万以上の国内ブランドとプライベートブランド商品を、全世界にある約10万の卸売顧客に流通させていると語る。同社は昨年に過去最高の成長を報告し、純売上が合計21億ドル(約3050億円)に達した。

そして、地上プールは特に新しい成長がみられる分野だ。P.K.データ(P.K. Data, Inc.)によると、2021年に販売された地上プールは25万ユニットに迫り、2020年よりも8.7%増加している。

一般的に、プール市場は季節的なスケジュールで運用される。各社は晩冬や初春に大量の在庫を用意し、晩春、夏、初秋に販売できるようにすると、コーエン(Cowen)の調査アソシエイトのマイケル・アナスタシオウ氏は言及している。

世界の多くの地域が記録的な高温に見舞われているが、最近の水泳プールへの需要は、暑さよりも、消費者の行動の変化に関係しているかもしれないと、アナスタシオウ氏は語る。「ここ数年におけるプールの普及は、天候への懸念よりもむしろ、在宅勤務や柔軟な労働環境によるものだろう」と、同氏は米モダンリテールに語った。

卸販売や再販プログラムも計画

ラスナム氏は、「当社は商品を最初から終わりまで完全にコントロールする必要があると判断した」ことから、モドプールズがD2Cビジネスとしてスタートさせたかったと語る。「また、利益率についても確信がなく、当社の成長に必要な資金を調達するために、投資家を招かなくてもいいよう、利ざやをフルに確保したかった」。

しかし同社は今後、理想的には、アウトドア・ライフスタイル、プール用消耗品、温水浴槽の分野での小売パートナーを探している。

ラスナム氏は次のように述べている。「今年は当社の新しい工場が稼働し、生産能力が2倍になるため、販売店や再販売業者のプログラムを開始することを考えている。当社はこのプログラムが造園業者、請負建設業者、プール建築業者と共同でもっともうまく機能すると構想しており、これらの業者が販売するプールの数に応じて段階的な割引を行うことを計画している」。

[原文: How Modpools is making a splash in the DTC pool industry]

JULIA WALDOW(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image:courtesy Modpools

Source