Netflix 、広告付きプランを11月3日から提供開始へ:「同サービスのインベントリーはほぼ完売」

DIGIDAY

Netflixは10月13日、米国内で11月3日から提供される広告付きプランの詳細について公式発表を行った。

Netflixのグローバル広告担当プレジデント、ジェレミー・ゴーマン氏は、10月13日の報道陣との電話会議のなかで、「このサービスの立ち上げによって、われわれは何百という広告主を獲得するだろう」と述べ、さらに「同サービスのインベントリー(在庫)はほぼ完売した」と付け加えた。

鍵となるポイント:

  • 広告付きプランは月額6.99ドル(約980円)。
  • ブラジル、日本、メキシコ、イギリス、米国を含む12カ国で提供される。
  • 1つの長さが15秒または30秒のプレロール広告またはミッドロール広告が表示される。
  • 1時間あたり平均で4~5分の広告が表示される。
  • プラン発売時点では、ターゲティングオプションは、国ごとおよびコンテンツ種別ごとでの設定に限定される。
  • 2023年中に、広告主はニールセン(Nielsen)のデジタル広告視聴率(DAR)を利用できるようになる。

番組制作と広告プレースメント

「エミリー、パリへ行く(Emily in Paris)」「ナイブズ・アウト:グラス・オニオン(Glass Onion: A Knives Out Mystery)」「ザ・クラウン(The Crown)」といったNetflixオリジナル番組には広告が表示されるが、Netflixで提供されているすべての番組が広告付きプランでも見られるというわけではない。一部の番組や映画については広告付きでの配信の可否について番組プロバイダーとのあいだで再交渉の必要があるためだ。

Netflixの最高執行責任者(COO)兼最高プロダクト責任者であるグレッグ・ピーターズ氏によれば、同社が提供する番組のうち広告付きプランで視聴できないものの割合は、国により数字にばらつきはあるものの、5%から10%程度になる見込みだという。

Netflixがミッドロール広告を挿入する際の課題となるのが、同社独自の番組やライセンスを受けた映画など、広告挿入が可能なかたちで作成されていない番組が存在することである。どうやらNetflixは、Facebookなどのデジタルプラットフォームがやっているようにインストリーム動画広告の挿入を自動化するのではなく、手動で対応する方法をとるようだ。社内でコンテンツのタグ付けを行うチームを結成し、「もっとも邪魔にならないところで広告を配信できるよう、自然な中断箇所を見つける作業をする」のだと、ピーターズ氏は話している。

とはいえ、広告付きプランで見られるすべての映画でミッドロール広告が表示されるわけではない。ピーターズ氏は「新しい映画にはプレロール広告だけが表示される」と述べている。だが一方で、「すでにそれなりの期間配信されている」映画にはプレロール広告とミッドロール広告の両方が表示される、とも付け加えた。

TVとストリーミングの業界でメディアバイイングを手掛けるタタリ(Tatari)のメディア担当シニアディレクター、ビッキー・チャン氏は、広告主にとっては「プレロール広告のほうが価値があり、より多くのエンゲージメントが得られる」というが、Netflixがプレロールとミッドロールの広告出稿の違いについて何らかのインサイトや保証を提供するかどうかに関しては、広告主や代理店にはまだ何も伝えられていない。

広告を見る頻度については、「Netflixの配信で表示される広告の長さは1時間あたり4~5分以内とし、会員が同じ広告を繰り返し目にするようなことがないよう、厳しい頻度制限を設ける」とピーターズ氏は話している。だが、同氏はこの頻度制限の具体的な内容について言及せず、またNetflixの広報担当者も詳細についての説明を避けた。しかし複数の代理店幹部によると、Netflixからは同じ広告は1時間に1回まで、1日に3回までしか表示できないように制限するといわれたという。

ターゲティングオプション

先進的な広告という観点からみれば、Netflixの広告商品は発売当初はかなりベーシックなものになる。たとえば広告販売については、最初は変動価格でインベントリーをオークションにかけるのではなく、固定価格モデルを堅持するだろう。ゴーマン氏はNetflixが広告主に請求するCPMについて言及を避けたが、DIGIDAYは過去記事のなかで、同社が広告主に対して65ドル(約8400円)のCPMを請求していると報じている。また、広告主ができるのは、国別ターゲティングのほか、コンテンツのジャンルや人気トップ10に入った映画や番組にもとづいたターゲティングに限られる。

発売当初のターゲティングオプションは「確かに限定的だ」と、タタリのメディアバイイングおよびオペレーション担当バイスプレジデントであるブラッド・ゲビング氏はいう。だがそのうえで「ジャンル別ターゲティングでは概して特定の考え方や関心を持つ視聴者に向けて発信することになるため、多くの価値を得ることができる」のだと話している。

だが、Netflixのターゲットオプションが、永久にコンテンツにもとづくターゲティングに限定されるわけではない。

Netflixは、広告付きプランへのサインアップの際にユーザーの生年月日と性別を収集し、発売後すぐにではないものの、いずれは年齢と性別にもとづいた広告ターゲティングを可能にする予定だ、とゴーマン氏は述べている。最終的にNetflixは「行動ターゲティング広告」も可能にする予定だと同氏はいうが、そのターゲティングオプションがどのようなものになるのかについて詳細は語らなかった。

Netflixがユーザーのメールアドレスを登録するということを考えると、同社はその情報を活用することもできる。たとえばUnified ID 2.0に関連するウェブ閲覧データや第三者データプロバイダーから提供された世帯収入や購買履歴に関するデータ、あるいは広告主自身が保有する顧客のメールアドレスリストなどの第三者データと、自社のもつアカウント情報を照合し、ターゲティングの目的で利用することができるだろう。10月13日の時点では、メールアドレスをもとにしたターゲティングが最終的に可能になるかどうかについて、同社経営幹部の口からは何も語られなかった。

利用不可とされるのは、Netflixの広告付きプランのユーザーデータを同社のストリーミングサービス以外のところで利用することだ。「マイクロソフト(Microsoft)などのパートナー企業は、Netflixでの広告出稿においてのみこの情報を利用できる。このユーザーデータを利用してプロファイルを作成し、ほかのサービスを目的としたターゲティングに利用することはできない」とゴーマン氏は述べている。

効果測定

発売時のターゲティングオプションが不十分であることは、2023年までは利用できる測定オプションが限定的ということを考えれば、かえって好都合だったかもしれない。Netflixは広告主による配信とビューアビリティを確認するため、アドベリフィケーション企業のダブルベリファイ(Double Verify)とインテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science)とすでに契約を結んでいるが、その測定が可能になるのは2023年第1四半期なのだとゴーマン氏はいう。

したがって2023年中には、広告主はニールセンのDAR測定値を利用して米国内における自社のリーチを追跡できるようになる。それによって、広告主は、全体および特定の年齢層の視聴者のうち何人がNetflixに出稿したブランド広告を見たのかを知ることができ、Netflixという配信サービスのパフォーマンスを、YouTube、Roku、Disney傘下のHuluなどニールセンのDAR測定を採用しているほかの配信サービスや動画プラットフォームと比較することが可能となる。

オーディエンスの規模

広告付きプランへの新規加入者数や既存の加入者のうち広告付きプランへ移行する会員の数をどの程度と見込んでいるのかについては、Netflixの経営幹部たちはコメントを避けた。

Netflixが広告付きプランの加入者を増やすうえで役に立つと思われるのが、同社が進めているパスワード共有の取り締まりだ。Netflixへの無許可の無料アクセスができなくなれば、これを行っていた人々は15.49ドル(約2200円)の広告なしのスタンダードプランや9.99ドル(約1400円)の広告なしのベーシックプランよりも、6.99ドルで広告付きプランを選ぶ可能性が高いのではないだろうか。ゲビング氏によれば「それこそダークホース的存在」だという。

そしてまた、広告付きプランがお金を払うに値するのかという議論もある。一部の番組や映画が視聴できないことも普及の妨げになるかもしれないが、もうひとつの理由として考えられるのは、Netflixが動画の解像度を720pに限定していることだ。テレビネットワークもHuluなどの大手ストリーミングサービスも1080pの解像度で番組を放映し、また米国の全世帯の半数以上がこれをさらに上回る4K解像度のテレビを所有しているこの時代において、である。

「解像度を制限することで、暗黙のうちにカニバリゼーションが最下位のプランにのみ限定されることを期待しているのだ」とゲビング氏は話している。「このやり方なら、彼らの収益モデルはそのまま維持され、結果として収益が減少することはないだろう」。

[原文:Netflix unveils its ad-supported product

Tim Peterson(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)

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