LVMH 、グローバルイベントを再開。参加するセフォラ、フレッシュ、ベネフィットのアクティベーションに注目集まる【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

LVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(以下LVMH)は舞台裏を見せる準備が再びできているようだ。

LVMHの舞台裏が見られるイベント再開

LVMHは10月14~16日にレ ジュルネ パルティキュリエール(Les Journées Particulières)グローバルイベントを再開する。今年は、新顔のフレッシュ(Fresh)やティファニー(Tiffany)を含むLVMHの57のメゾンが世界15カ国の93拠点で参加する。来場者は、LVMHのさまざまなメゾンの店舗や本社、住宅や製造施設などの貴重な舞台裏を直接、無料で見ることができる。

レ ジュルネ パルティキュリエールが最後に行われたのは2018年、パンデミックのかなり前だった。それ以前には2011年、2013年、2016年に開催された。新型コロナウイルス感染症が拡がり始めた2019年の年末以来、全世界は変化し優先事項のシフトにより形作られてきている。健康や安全、ウェルビーイングへの緊急かつ長期的な焦点はもちろん、長期間の自主隔離などにより生じた対面の交流への渇望も存在する。だが、もちろんすべての体験が同じように作られるわけではなく、これは組織としてのLVMHが認識している点である。

LVMH北米の会長兼CEOであるアニッシュ・メルワニ氏は次のように述べている。「この6カ月ほどで、いわゆるノーマルに本当に戻れるというマイルストーンが祝われ始めた。我々にとってこれは重要なことだ。パンデミックの間には多くのデジタル活動を加速させ、それはそれで素晴らしかった。デジタルのおかげで事業は継続でき、従業員の雇用も続けられ、顧客とのつながりを維持できた。しかし、結局のところラグジュアリーには多面的な要素があり、デジタルチャネルでは(ラグジュアリーの体験を)100%を達成するのは無理だ」。

LVMHの明確な差別化要因とは

ビューティとファッションの経営者の多くがビジネスの継続のために(デジタルを活用したという)同じストーリーを語っているが、メルワニ氏によるとLVMHには明確な差別化要因があるという。

「客を店舗に再び迎えることができ、以前と同じように店舗を経営できるのは素晴らしい。複数の製品のローンチやファッションショーなどのイベントに人々に来てもらえることも嬉しい。だが、基本的には当社は製品会社、高品質の製品会社なのだ」とメルワニ氏は述べている。

LVMHはイベントの再開に際して、レ ジュルネ パルティキュリエールが親近感を保ち、来場者が創業者たちに会ったり製品に触れたり、職人と交流できることを望んでいる。2018年には世界中で18万人が来場した。今年の計画は過去数年よりも意欲的なものであるため、同社は今年の来場数はそれを超えると予想している。イベントに参加するには消費者はオンラインチケットシステムで事前に登録しなければならない。この数週間でLVMHはチャネル全体でイベントと登録を宣伝している。米国では、フレッシュ(Fresh)、ベネフィット(Benefit)、セフォラ(Sephora)のアクティベーションは満席である。

このイベントのタイミングと生み出される興奮のおかげで、LVMHは強力なホリデーシーズンに向けて準備を整えている。メゾンの多くの製品はギフトアイテムだ。同社は7月に上半期の収益が364億ドル(約5.3兆円)、前年比28%増と報告している。香水と化粧品部門は前年比で20%増加したため、フレグランスとスキンケアは「急速な成長」と称された。世界経済はまだ完全には暴落していないため、消費者は購入には留意しているが、このようなイベントは願望や魅惑を引き出すものだ。

初参加のフレッシュのアクティベーション

レ ジュルネ パルティキュリエールに初参加するフレッシュを見てみよう。ニューヨークのユニオンスクエアの店舗に足を踏み入れると、来場者はフレッシュの創業者であるレフ・グラズマン氏とアリナ・ロイトバーグ氏の歓迎を受ける。そして、成分にフォーカスしたアクティベーションが2つある。「ジャーニー・イン・ア・ジャー(A Journey in a Jar)」と呼ばるテイスティングと感覚的な体験と、スキンケアマスクフライトだ。どちらのアクティベーションでもキッチンとビューティ科学研究室で製品を作成することが取り上げられている。

「ビューティの顧客はオンラインでもオフラインでもどこででも多くの情報を持っており、真の専門家だ。彼らはいつも多くの経験をしようと努めており、話の内容をよく知っている。(我々は)ある種の卓越性、自分たちだけが実現できる真正さを作り上げて、当ブランドのサヴォアフェールを紹介する必要がある」と述べているのはフレッシュのCEO、アン・コリネット氏だ。同氏は、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)で革製品、アクセサリー、フレグランスを担当していたLVMHのベテランであり、2021年にフレッシュに加わった。

コリネット氏はこれらのアクティベーションでフレッシュを愛用する消費者を引き付けるだけではなく、新規顧客にフレッシュを知ってもらうことも望んでいる。だが、そのために製品やブランドのDNAを犠牲にすることはない。「フレッシュはマーケティングブランドではないし、これはマーケティング活動ではない。もっとも望ましいライフスタイルビューティブランドになることが目的で、当ブランドを高め続けたい。なぜなら、我々はラグジュアリーだからだ」。

セフォラUSのアクティベーション

5番街でのセフォラUS(Sephora US)のエクスペリエンスも同社の高い位置付けに基づくものだ。ディオール(Dior)やスーパーグープ(Supergoop)などのブランドのスポークスマンによるガイド付きブランドツアー、プロのアーティストたちやハイドラフェイシャルなどの施術へのアクセス、ギフトバッグが用意されている。セフォラのエクスペリエンスマーケティング・外部コミュニケーション担当シニアバイスプレジデント、ジェシカ・ステイシー氏によると、セフォラUSは各セッションに12名、8セッション(合計96名の来場者が対象)を行う予定だという。セフォラがレ ジュルネ パルティキュリエールに参加するは今回が2度目だ。また、米国のほかに、フランス、スペイン、イタリア、中国でセフォラのアクティベーションが行われるという。

ステイシー氏は、「来場者にセフォラの本質を体感してもらえるこじんまりとしたガイド付き体験を再度見直している」と述べている。同氏の考えでは、レ ジュルネ パルティキュリエールはセフォラの異なる側面、たとえばセフォリアで展開するのと同じほど重要な側面を見せるものだという。セフォリアは今年はバーチャル開催のみだった。

「(レ ジュルネ パルティキュリエールは)オンラインでは得られない実際に触れられる体験だ。当社は確かにライブスペースに復活しつつあるが、同様に過去4年間で大成功を収めてきたデジタルイベントプログラミングにも注目し続ける。(デジタルイベントは)この4年間大きな成功を収めている」とステイシー氏。セフォリア2023はハイブリッドイベントになる予定だという。「バーチャル要素を取り入れたのは、顧客がイベントへの参加方法についてもっと柔軟な方法を求めているのを知っているからだ」。

社歴を強調するベネフィットのアクティベーション

LVMHのメインイベントを通じて浮き彫りにされるのは製品だが、ベネフィットコスメティクスは異なるアプローチを取っている。ベネフィットはブランドの歴史に焦点を当て、来場者をサンフランシスコのオフィスに招待する。ベネフィットも2018年にレ ジュルネ パルティキュリエールに参加した。その際、消費者からはベネフィットの製品が愛用されているものの、同社の歴史はあまり知られていないことが判明した。

ベネフィットコスメティクスのチーフビューティアンバサダーであるアニー・フォード・ダニエルソン氏は、ベネフィットが女性問題を長年サポートし続けていることに触れ、次のように述べている。「古いヴィンテージのベネティント(Benetint)のボトルと、私の母(ジーン・フォード氏)と叔母(ジェーン・フォード氏)が描いたオリジナルのアートワークがある。(今回のエクスペリエンスでは)70年代に生まれたベネフィットが2人の女性に率いられてどのような経験をしてきたのかについて様々な側面に切り込む。また、当時の女性の生活ではどんなことが起きていたのかも(探索する)。あらゆることがベネフィットに跳ね返り効果をもたらしたことを示すものだ」。

マーケティング活動でも販売活動でもなく、品質を示すイベント

LVMHによるとレ ジュルネ パルティキュリエールがマーケティング活動ではないのと同様に、このイベントは独立した販売イベントだと見なされるべきでもない。

ラグジュアリーを区別するのは価格だけではなく、品質でもある。これは、アントワーヌ・アルノー氏(LVMHのコミュニケーション・イメージ責任者で、ベルルッティ(Berluti)のCEO)とチームが10年以上も前に(レ ジュルネ パティキュリエールで)開発したものだ。これは関心がある人たちにその品質がどのように作られているかを見せる方法だった。ラグジュアリーからすべてのマーケティングとLVMHビジネスの華麗さすべてを取り去って、「製品を実際に作るのに必要なのは何かを知り、それを実現してくれる人たちに会おう」ということなのだ。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: LVMH’s Les Journées Particulières is back with an eye on newness

PRIYA RAO(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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