アメリカのナショナルフットボールリーグ(以下NFL)は、若者に最大の焦点を当てた、コミュニティ主導のリーグになることを目指している。その目標を達成するために、同リーグはソーシャルメディア・マーケティング戦略に賭けている。
スーパーボウルのハーフタイムショーに関する派手なアナウンス(NFLはリアーナのパフォーマンスを発表し、彼女のブランド、フェンティ[Fenty]にかけてTwitterの略歴を「ナショナル・フェンティ・リーグ[National Fenty League]」と変えた)から、インフルエンサーとの提携に至るまで、スポーツリーグはトレンドになるために全力を注いでいる。
常に革新的な方法でファンと関わるために、NFLは2017年に自らが立ち上げたNFLコンテンツ・クリエイター・ネットワークの一環としてクリエイターに目を向けている。
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このプログラムは多岐にわたり、幅広いオーディエンスにリーチすることを狙いとしている。クリエイターはファッション、ゲーム、ウェルネス、音楽などの戦略的に選ばれたカテゴリーや、TikTok、Snapchat、Twitter、Instagramなどのプラットフォームにおけるユーモア、食べ物、アート、動物、またはサッカー関連コンテンツに焦点を当てたチャンネルをターゲットとしている。
インフルエンサーを活用したコンテンツ戦略
NFLの戦略は、多くのブランドがインフルエンサーへの投資に力を入れている中で生まれたものである。ブランドたちは多くの場合、長期契約を結んでいるクリエイターに依頼して、視聴者に向けて彼らのブランドについて語りかけてもらう。
NFLのソーシャルインフルエンサー・マーケティング担当シニア・バイスプレジデントのイアン・トロンベッタ氏によると、NFLとしては「ヘルメット・オフ(フットボールをしていない時のプレイヤーにフォーカスする)」戦略を望んでいたため、ファンはフィールド外の選手の個人的な関心事(ビデオゲーム、ファッション、その他の趣味など)について理解を深めることができたという。週替わりの試合以外でもファンとお気に入りの選手をつなぐことを目的としている。
「試合のハイライトだけでなく、我々が全面的にプッシュしているコンテンツの多様化であり、それは我々の戦略全体にとって非常に重要である」とトロンベッタ氏は述べた。
もちろん、1億3600万人のフォロワーを持つ(リアーナの)Instagramアカウントほど、マーケティング戦略を後押しするものはない。第57回スーパーボウルのハーフタイムショーでのパフォーマンスを発表するにあたり、リアーナは9月25日に自身のInstagramアカウントに、NFLのフットボールを手にした彼女のサイン入り手首のタトゥーの写真を投稿した。
「今ではアイコニックな存在となったリアーナが投稿した画像は、ほぼすべての主要なプラットフォームで大きなバイラルとなり、世界的なトレンドとなった」と、トロンベッタ氏は画像に関して述べた。「言うまでもなく、世界中のファンは、彼女が第57回スーパーボウルの最大のステージで演奏するにあたり、信じられないほどワクワクしている」。
この投稿が公開されるとすぐに、ポパイズ(Popeyes)、ビートボックス(Beatbox)、デアリー・クイーン(Dairy Queen)といったブランドがこの写真をもとに数々のミームを作成した。
コミュニティを構築するという視点
トロンベッタ氏によると、NFLのソーシャル戦略はパンデミックを通じて、革新を余儀なくされたチームによって刷新された。NFLは新しいフォーマットや、インスタグラム・ライブセッション、Snapchat、Twitterスペース、TikTokを模索し、実験を行った。これらのチャンネルを試すことで、ファンはスタジアムにいないにもかかわらず選手にアクセスでき、選手が何をしているかの内部情報を得ることができた。
この戦略は今のところうまくいっているようだ。トロンベッタ氏によると、NFLは昨年の日曜日のキックオフと比較して、今年のキックオフでInstagramのユニークユーザー数が91%増加したという。詳細は明らかにしていないが、内部の数字を引用している。
NFLのTwitterアカウントもビデオ視聴数のレギュラーシーズン週間記録を打ち立てており、トロンベッタ氏によると47%増加しているという。Snapchatのサンデー・ハイライトエディション(Sunday Highlight Edition)は昨年の第一週目よりもユニークビューアーを38%増やし、これらのハイライトの視聴者の70%が24歳以下であった。同リーグのTikTokアカウントの動画再生回数は258%増となり、レギュラーシーズン週間記録を樹立した。NFLは他の2021年の統計については公表しなかった。
トロムベッタ氏はまた、NFLはプログラム戦略の中心にリーグが抱える選手や起業家ジョシュ・リチャーズなどのTikTokインフルエンサーを起用した盛り上げ動画を据えており、TikTokはNFLで最も急速に成長しているプラットフォームであると述べた。「重要なのはコミュニティの構築だ」とトロンベッタ氏は言う。「必要なニュースを入手できるだけでなく、24時間年中無休のニュースルームでは、お気に入りのチームやお気に入りの選手についての最新情報をリアルタイムで入手できる」。
トロンベッタ氏は全体的な予算の詳細を明らかにしていないため、NFLの広告予算のうちどれだけがソーシャルメディア・マーケティングに割り当てられているかは不明である。パスマティックス(Pathmatics)のデータによると、NFLは今年これまでにソーシャルメディアを含む広告活動に3100万ドル強を費やしている。また、プラットフォームとソーシャルメディアのインフルエンサーの間で広告予算がどのように配分されているかについても、トロンベッタ氏はコメントを避けた。
コンテンツ業界全体で起こっている変化に対応する
NFLのマーケティングは、同リーグが慎重に作り上げ、広範囲にデータを収集している大規模なファン層を取り込むために機能している。ブランド各社は、フットボールファンとエンゲージメントを持つためのクリエイティブな方法を見つけることで、今月初めに始まったNFLシーズンを取り巻く盛り上がりに乗るために最善を尽くしている。
最近では、ジレット・スタジアム(Gillette Stadium)とシミーズ(Shimmy’s)の提携、ペプシ(PepsiCo)のインスタカート(Instacart)キャンペーン、ドクター・スクワッチ(Dr. Squatch)、ESPNのファンタジー・フットボール・キャンペーンなどのファンを引きつける取り組みが行われている。
クラウドネイティブなデジタルメディア・サプライチェーンおよび配信プラットフォームであるアトリエ(Ateliere)クリエイティブ・テクノロジーズのCEOダン・ゴマン氏は、「現在のNFLの焦点を見ると、主にテレビ放送を中心としたものだ。これは当初からのモデルであり、これまで比較的安定していた」と述べている。「しかし、NFLは、ファンがオンライン視聴に移行していることによる、コンテンツ業界全体で起こっている変化と無縁ではない」。
現在のNFLシーズンが進むにつれて、同リーグはスーパーボウル・ウィークの準備も進めており、そこには2021年に開始したTikTokにおけるテールゲート・パーティーも含まれている。ホリデーシーズンを目前に控え、NFLはTikTokのショッピング可能な広告を活用する計画だが、トロンベッタ氏は詳細を明らかにしなかった。
「私たちは現在、TikTokと一緒にそれに取り組んでいる。これは32チームすべてにおける、今後のパートナーシップに関連している。すぐにお知らせできることを期待している」とトロンベッタ氏は述べた。「他のことはすべてあるべき形を見つけることができると思う。それは、ファンベースや32都市の各チームとどのようにコミュニティを構築するかに関係しているからだ」。
[原文:Inside the NFL’s youth-focused social strategy]
Julian Cannon(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)