Amazon「在庫保管制限」の変動で出品者は大混乱:在庫コントロールが極めて困難に

DIGIDAY

こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります

パンデミックにより悪化した厳しい経営環境において、サードパーティの出品者はAmazonが突然設けた在庫の補充上限によって、さらに苦しい立場に追い込まれている。

eコマースの巨大企業であるAmazonが、同社の倉庫に送ることができる在庫の量の制限をはじめたのは2020年の7月だ(「不可欠」と見なされた商品を販売する出品者を優先するための緊急措置が規定されたあと)。在庫管理について非常に優れた実績のある企業でさえも、この上限の影響を受けた。

しかし出品者たちは、Amazonがそれ以来ずっと上限を設けつづけ、場合によっては毎週か2週間ごとに強制しており、同社の倉庫に送付できる商品の量を減らすときも十分な告知期間を設けていないと語っている。このような流動的な変化から、注文に応じるためフルフィルメントby Amazon(fulfillment by Amazon、FBA)を主に使用している中小規模のオンライン企業にとって、サプライチェーンの問題の多発するなかでロジスティクスの多くの問題が発生している。筆者が対話した出品者は年間の売上高が6桁から8桁、すなわち数十万ドルから数千万ドルの範囲であり、突然の上限の設定により、コストが増大し、在庫管理が非常に混乱していると語っている。

頻繁に変更される保管制限

Amazonで販売し、今年3000万ドル(約34億2000万円)を売り上げたD2Cのベビー・マタニティ商品ブランドであるキアベビーズ(KeaBabies)の共同創設者でCEOを務めるイブァン・オング氏は次のように述べている。「Amazonは非常に頻繁に、ときには毎週、再入荷制限を変更する。突然20%や30%も引き下げられることがあり、計画を立てることが非常に難しくなっている」。

Amazonの在庫上限から、一部の出品者は悪循環に陥っている。オング氏によれば、この突然の制約と、それにより引き起こされる在庫管理への影響から、キアベビーズの在庫商品のインデックススコアは最小しきい値未満に落ち込んだ。これは、Amazonが自社のフルフィルメントセンターにおける在庫の健全性に基づいて出品者に割り当てるベンチマーク評価だ。Amazonはこのスコアを使用し、最小スコアの450ポイントに達しないビジネスに対しては、倉庫の容積に基づいた在庫量の上限を設定する。

6つの商品からなる美容品ブランドを保有し、Amazonで今年37万5000ドル(約4280万円)を売り上げているジョー・ジェームズ氏は次のように述べている。「この状況全体によって、第4四半期が壊滅的になった出品者を知っている。在庫を前もって予測しようとしても、元の数量の50%しか送れなくなるのは不公平だ。これは非常に大きな問題になる」。

Amazonの出品者で代理店でもあるサプライキック(SupplyKick)は、同社の100におよぶパートナーのうち半数以上は、今年のどこかで在庫の最大量が減少したと語る。サプライキックのロジスティクスおよび運用ディレクターを務めるアリッサ・プレボスト氏は次のように述べている。「Amazon全体で、ほかの多くの出品者も同様に、最大在庫量を25%減らされた経験があり、最大の減少は60%を超えている。ブランドや出品者が適切な量の在庫を維持することはほとんど不可能だ」。

在庫予測・管理が極めて困難に

Amazonの上限は、最初のうちは過剰サイズの商品に集中しているように見えたが、それ以後にさらに広く適用されるようになった。オング氏は、キアベビーズは主に標準サイズのストレージを使用してきたにもかかわらず、厳しい上限を課せられたと語っている。

上限が広範囲に適用されていることは、Amazonの倉庫がサプライチェーンの混乱からの圧力を受けていることで、同社が継続的なハードルに直面していることを示している。同社はパンデミックのあいだに米国でのフルフィルメント能力を2倍以上に増やし、150億ドル(約1兆7100億円)以上を投資して、62万8000人を超える要員を雇用した。同社には現在、米国全体で1100を超える施設があり、そのうち110はフルフィルメントセンターだ。

それでも、多くの出品者は依然として、これらの変更によって先の見えない状況に置かれていると感じている。これらの出品者は現在、Amazonが自分たちのアカウントに対して新しい補充上限を通知する場合、もっと猶予を与えるよう要求している。在庫容量の上限の場合、Amazonは各企業に対し、計画に十分な時間を与えるため、4〜6週間前に通知を行っている。同社は11月、多忙なホリデーシーズンのあとで最新の上限を取り除くことを検討すると、出品者に通知した。同社はコメントの要請に対して回答していない。

「Amazonは、我々が変化に応じた計画を立てられるよう、もっと通知を行うべきだ」とオング氏は述べている。

サプライチェーンの多くの問題点の1つ

この制限は、パンデミック時に出品者が対処しなくてはならない障害の一部で、その数は増え続けている。エネルギー危機による中国の工場の計画停電に加え、サプライチェーンのボトルネックによって、米国の港湾で配送がストップし、多くの企業が売上を失った。

「私は年に50万ドル(約5700万円)以上の売上を予測していた」とジェームズ氏は述べ、「だが、遅延のために売上高は計画を12万5000ドル(約1430万円)も下回った」。

すでに製造と配送の遅延の影響を受けていた出品者は、さらに補充の上限という厄介ごとを抱え込むことになった。多くの出品者は自社の施設を使用するか、サードパーティが提供する施設に商品を保管するようになった。オング氏によると、商品の大部分が中国からのものであるキアベビーズは、もっともよく売れる商品を在庫しておくため、自社の3PLストレージセンターに在庫を送付してからAmazonの配送ネットワークへ「五月雨式に」送付するという。一方でサプライキックは、注文に対応するため在庫の一部を最近になって自社倉庫に保管しはじめた。これによって同社は、さもなければ商品の補充上限の関係で在庫切れになってしまう商品のリストをアクティブに維持できる。

中小規模の出品者が変化に順応するにつれ、3PLやほかのストレージアウトレットを使用するのは急速に普通となりつつある。「補充上限によって大きな悪影響を受けたのは、3PLのサービスを適切に活用せず、従来の方法に強く依存していた出品者だ」とジェームズ氏は述べている。

素早い適応力で優位に

厳しい取引環境にもかかわらず、多くの出品者は回復力を維持している。なかにはこの課題を享受さえしている出品者もいる。AmazonのFBA出品者で、オールシングスアービトラージ(All Things Arbitrage)再販グループのオーナーであるベン・ライト氏は次のように述べている。「Amazonの変化し続ける競争の場に適応する方法を迅速に見つけられる出品者にとっては、このような変更のすべてが競合で優位に立つための機会になる。Amazonの出品者でこんなことをいうのは自分だけかもしれないが、私はAmazonが取り入れるこのような奇妙なルールを気に入っている」。

パンデミックの禍中にビジネスを開始したジェームズ氏は、ダイナミックな環境のせいで、ビジネスの要領を急いで学ぶ必要を感じたと語る。

「これは災害のように見えて、実は幸運だった。私ははじめから3PLを使用して、出品者の直面しているロジスティクスの問題に対処する必要があった。ほかのやり方を知ることがなかった」と同氏は述べている。

同氏はさらに続けて述べている。「Amazonがこのような補充の上限を課したのにはもちろん理由がある。だから今後の出品者にできるのは、可能な限り早く適応することだけだ」。

[原文:Amazon Briefing: Amazon’s fluctuating restock limits are creating chaos for third-party sellers]

Saqib Shah(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Illustration by Ivy Liu

Source

タイトルとURLをコピーしました