インスタカート 、IPOを前に「食料品配送」を超えた拡大目指す:小売店との提携を続々発表

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インスタカート(Instacart)は、予定されるIPOを前に、大型商品を消費者の玄関先に当日配送するという新たな戦略で、食料品配達以外の分野に拡大を続けている。

インスタカートはこのほど、ビッグロッツ(Big Lots)、コンテナストア(Container Store)、ステープルズ(Staples)など複数の小売業者とパートナーシップを結び、「ビッグ・アンド・バルキー(Big & Bulky)」フルフィルメントオプションを開始すると発表した。このサービスにより、顧客は家具、家電製品、電子機器などの大型商品を店舗で注文し、当日または指定した日に配送してもらうことができるようになる。

多角化によるプラットフォーム拡大

食料品の配達で有名になったインスタカートは、同社の10年間の歴史において800以上のブランドと提携してきた。しかし、コロナウイルスのパンデミックがはじまったころにはもう、食料品以外への多角化を進めており、2020年4月にはコストコ(Costco)とともに処方薬の配達を開始し、その後、2020年9月にはセブンイレブン(7-11)セフォラ(Sephora)の商品の当日配達を行うようになった。

ビッグ・アンド・バルキーの発表前の6カ月間には、食料品以外の商品との提携もあった。ロウズ(Lowe’s)はこのプラットフォームに参加した最初のホームセンターで、2月にシャーロットとオースティンでパイロット試験を行った。一方で、オフィスデポ(Office Depot)は3月に、学校用品の当日配達を開始した。

小売業者にとって、これは顧客向けに当日配達を行うための新しい方法であり、インスタカートのプラットフォームを閲覧している新しい顧客を取り込む手段にもなりうる。インスタカートにとっては、IPOに向けて5月にドラフト有価証券届出書を米国証券取引委員会(SEC)に提出したところだが、これより前にプラットフォームをさらに拡大することになる。また、同社プラットフォームは成長加速の最中でもあり、ウォールストリートジャーナル(The Wall Street Journal)は8月初め、最新の四半期の収益が過去最高の6億2100万ドル(約876億円)に達し、前年比で39%の成長を見せたと報じている

通常の買い物以上の価値を提供する

インスタカートは、米モダンリテールへのメールによる声明で、食料品以外の商品に拡大を続けていく計画があると語ったが、それが同社のビジネスの何%を占めるかは明かさなかった。

「食料品が当社の基盤かつ注目分野であることは変わらないが、品揃えはマーケットプレイスを決定的に特徴づける。当社は、顧客に対して、毎週行う食料品店での買い物以上の価値を生み出し続けたいのだ」と、声明は述べている。

インスタカートは今シーズン、同社のインスタグラムで「バック・トゥ・スクール」商戦で、食料品以外の商品のプロモーションを行っている。以前の投稿では、父の日に向けて、インスタカートで家電量販店ベストバイ(Best Buy)の電子機器やグリル用品を買い求めるように促していた。

ビッグ・アンド・バルキーのサービス開始は、注文品を引き取って配達するインスタグラムのギグワーカー(公式にはショッパーと呼ばれる)に対する教育が強化されたことを意味している。この春に行われたパイロット試験では、ショッパーの97%が大型注文を受け入れた。ショッパーは注文の中身を事前に確認できるため、それを受け入れるかどうかを判断できる。

インスタカートは米モダンリテールに次のように述べている。「当社は、個々の商品をすべて一人で運ぶことができ、ショッパーが指定した車両に収まるようなバッチでのみ商品を提供する。当社は小売業者と密接に連携し、ショッパー個人やショッパーから通知されている車両に対して、商品が大きすぎることがないよう、カタログにある商品のサイズや重量についての最新情報を入手している」。

新ショッパブル広告の運用開始

インスタカートは、2021年8月に同社に加わったCEOのフィジー・シモ氏のもとで、商品とアプローチの多様化をさらに進めてきた。同社は最近、シモ氏が取締役会長に任命され、同社が上場企業になって創設者かつ執行委員長のアプーバ・メータ氏が役員会から退任したときに就任する予定であることを、7月のプレスリリースで公表した

シモ氏は就任以来、アプリのコンテンツを食料品のショッピング以外の用途にも使えるようにし、より多くの利用者を引きつけることと、より広範な小売プラットフォームに移行することが戦略であると示してきた。同社は今春、小売業者にサービスとテクノロジーを提供するインスタカートプラットフォーム(Instacart Platform)を導入し、5月には新しいショッパブル(買い物可能な)広告の運用開始を発表した

広告会社のオムニコム・リテール・グループ(Omnicom Retail Group)のコマース担当シニアバイスプレジデントを務めるブライアン・ギルダーバーグ氏は、インスタカートと提携する小売業者は、自社独自では実現できない当日配達の利便性を提供しつつ、この同プラットフォームを使用している新しい顧客の獲得に期待しているのだろうと語る。

モバイルユーザーの獲得

「インスタカートは、買い物客のリアルタイムの利便性への要求を、ほかの小売業者が保有していない運用インフラ使って収益化する方法を見つけ出した」と、同氏は述べている。

食料品以外の商品についてインスタカートと提携している小売業者は、モバイル機器でのショッピングに慣れている新しい顧客を獲得することで利益を得られるかもしれない。特に、35ドル(約4940円)以上の注文で送料が無料になるインスタカートのプレミアムサービスに加入している利用者については特に利益が大きいと、ギルデンバーグ氏は述べている。

モバイル機器は依然としてeコマースの活動の大きな発生源であり、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)のレポートによれば、2025年には米国における小売eコマースの支出のうち約44%はモバイルから行われることになる。

ギルデンバーグ氏は次のように述べている。「人々はインスタカートのインターフェイスに慣れており、特に、モバイルのインターフェイスは、ある意味見慣れたものになっている。実際、いくつもの商品を購入しようとするなら、ほかのeコマースプラットフォームより多少使いやすいインターフェイスだ。モバイルを使い慣れた買い物客ほど、インスタカートのインターフェイスを快適に使えるだろう」。

新しい顧客へのアプローチが可能に

フルフィルメントに特化した小売テクノロジー企業のファブリック(Fabric)でマーケティングおよびカスタマーエクスペリエンス担当バイスプレジデントを務めているイーアン・テレビック氏は、パンデミックによるeコマースブーム以降、消費財に対するオンデマンドかつ迅速な配送への期待が高まっているという。

同社が500人の消費者を対象に行った調査では、回答者の61%が無料の翌日配送を期待しており、52%は最小購入金額がわずか40ドル(約1410円)になることを期待していると示された。そして、多くの大手小売業者はこれらのトレンドに対応するかもしれないが、トップ10圏外の小売業者で無料の翌日配送を実施しているのは5%に満たないと、テレビック氏は語る。

その点において、インスタカートと提携することで、小売業者は新しい買い物客にアプローチする新たな方法を手に入れることができる。

「オンラインショッピングは、利便性、時間の節約、商品の品揃えで優位に立っている。どれも、実店舗では太刀打ちできない要素だ」と、テレビック氏は述べている。

[原文:Instacart continues to move beyond grocery delivery with new retail partnerships]

MELISSA DANIELS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Instacart

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