2022年のeコマースにおける3大ストーリー:成長と失速を経験したD2C創業者たち

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2022年もD2C新興企業にとって、またしても波乱に満ちた、前例のない年となった。

2022年の初め、多くのD2Cブランドは、まだ高みに上っていた。2021年にはD2CのIPOが過去最高の数に達し、ベンチャーキャピタルの資金調達も記録的な水準となり、2022年の年頭の時点で一部のD2C新興企業は資金繰りが非常に健全な状態だった。パンデミックの最中に見られた記録的なオンライン販売活動と比べて、eコマースの成長は鈍りはじめていたが、多くの新興企業は前年比で収益が増え続けていた。

しかし2022年を通して、かつては前途洋々だったD2C新興企業の繁栄は急速に衰えていった。ペロトン(Peloton)やグロシエ(Glossier)はレイオフ何回も繰り返し、オールバーズ(Allbirds)やフィグス(Figs)など、株式を公開していた先駆的な企業の時価総額は暴落し、そのほかのブランドは静かに廃業した。

過去数年にわたって、D2Cがつけを払うときが来るだろうという予測は数多くささやかれていた。しかし、ついに2022年はついに、顧客獲得コストの高騰や、収益性への道の不明瞭性など、D2Cブランドを長いあいだ悩ませてきた組織的な問題がついに顕在化した最初の年であったように感じられた。最悪のシナリオとして、ハウス(Haus)など一部のブランドは完全に廃業した。

2023年には、同様に廃業するD2Cブランドが増えることが十分に考えられる。同時に、現代のeコマースブランドを作り上げるには何が必要なのか、より明確な理解が現れるかもしれない。2022年、長期的に生き延びるブランドを構築するための鍵は、ブランドの認知度を上げるためにソーシャルメディアや美麗なブランディングだけに頼るだけでなく、自社の商品を、より多くの場所で、より多くの人々に購入してもらえるようにすることだと、創業者たちは理解した。目立っていた主要なテーマを以下に示す。

1. D2Cモデルが意味をなさないカテゴリーで、D2Cモデルを放棄するブランドが増えている

2022年のeコマースはすべてが悪い状況だったわけではない。しかし、2022年に成功したブランドの多くはD2Cブランドに特化していたわけではない。ヒーローコスメティクス(Hero Cosmetics)はCPG複合企業のチャーチ・アンド・ドワイト(Church & Dwight)に6億3000万ドル(約838億円)で売却され、リキッドデス(Liquid Death)は評価額が7億ドル(約931億円)に達した。これらは多くの場合にD2Cの「成功」例とされるが、ヒーローコスメティクスもリキッドデスも、収益の大部分を実店舗や、Amazonやターゲット(Target)などのオンラインマーケットプレイスから得ている。

2010年代の初期は、コンタクトレンズからスーツケースまで、ほぼあらゆる商品カテゴリーについて、中間業者を省くことを求めた創業者が主流を占めていた。そして、これらのブランドは何年にもわたり、ベンチャーキャピタルからの多額の資金提供、安価なソーシャル広告、オンラインショッピングの高い成長率により支えられてきた。そして、これらによってD2Cモデルは、業界の外部からは実際よりも財務的に持続可能なものと見えていた。

しかし2022年、多くの要因によってD2Cモデルは、かつてないほど切迫した形で持続不可能になりはじめた。この変化をもっとも典型的に示したのが飲料だ。

ブランド発見サイトのシーピージーディー(CPGD)のCEOを務めるアンドレア・ポポバ氏が語ったところでは、飲料業界は何年にもわたり、自社商品をオンラインで販売することに課題を抱えていた。

同氏は次のように述べている。「飲料は輸送が非常に困難で、冷蔵と多くのケースが必要になる。これは、サブスクリプションによってD2Cで購入される傾向の高い商品ではないため、配送やほかのコストは創業者にとってさらに重い負担となる」。

しかし飲料ブランドは2022年、自社のウェブサイトを通じてオンラインで製品を販売する見通しをさらに持続不可能なものにする、数々の課題に直面した。

ベンチャーキャピタル資金が枯渇したため、D2Cチャネルの構築といった持続不可能な成長方針に資金を調達できるブランドは減少したのだ。より多くの人々が店舗での買い物に戻り、さらにインフレによってeコマースビジネスを運営するほぼすべての要素がコスト高になった。

その結果、2022年にはスウォーン(Swoon)、ジューンシャイン(JuneShine)、リキッドデスなどのブランドはD2Cの飲料販売を完全に放棄したアグリードリンクス(Ugly Drinks)ハウスは廃業し、ウインク(Winc)は破産を申請した。

それによって、さらに多くのカテゴリーのD2D創業者たちが、自社商品をより多くの場所で販売することを模索している。eコマースブランド向けに代替融資を提供するフィンテック企業のアンプラ(Ampla)は、食品、飲料、ウェルネス分野にわたる自社の多くのクライアントは2022年、初めて自社の総収益に占めるShopify(ショッピファイ)での収益の割合が減少したと報告している。

2. メタ(Meta)の代わりを求め続ける

2022年の初め、D2C創業者たちはFacebookプロパティの代わりになるものを必死で探していた。AppleのiOS 14アップデートは2021年の第1四半期にリリースされ、1年間で、ブランドが有料のソーシャルを利用して以前のように多くの人にリーチすることが困難になった。

筆者が2022年に対談した各ブランドは、オフラインのマーケティングチャネル、インフルエンサーとのパートナーシップ、アフィリエイトプログラムなど、あらゆる方法を試し、持続可能な形式で顧客を獲得する方法を見いだすことを望んでいた。しかし、メタに置き換わる明確な方法は現れなかった。

たとえば、TikTokは昨年のはじめに人気が爆発した。オーガスト(August)ピースアウトスキンケア(Peace Out Skincare)のような新しい新興企業は、最初からTiktokを自社の新規顧客獲得戦略の中核に据えていた。

しかし、広告チャネルとしてのTikTokの人気も、この1年で激変した。アンプラの数多いクライアントのあいだで、TikTokはFacebookとGoogleに次いで、合計広告支出に占める割合が3番目だった。しかし、TikTokへの支出は3月にピークとなり、アンプラのクライアントのあいだでデジタル広告支出の9%を占めた。しかし11月には、Facebookがデジタル広告支出の80%以上を占める一方で、TikTokはわずか3%に低下した。ここから言えることは、各ブランドは依然としてFacebookを自社のマーケティング戦略の先端や中核に据えており、特にブラックフライデーやサイバーマンデーのような大きなセール期間には重視しているということだ。

「課題はあっても、Facebookは依然としてすべてのプラットフォームをもっとも的確にトラッキングしている」と、アンプラのマーケティング担当バイスプレジデントを務めるマイク・グリロ氏は筆者に語った。

3. インフレがブランドの成長戦略を見直すきっかけに

記録的な高水準のインフレは、D2Cブランドの経営陣が2022年に下すべき決定のほとんどに影響を及ぼした。2022年は、eコマースビジネスの運営について、広告、配送、パッケージングなどほとんどの部分のコストが上昇した。

多くのブランドは舞台裏で、できるかぎり資金を節約するため、自社のマーケティング、物量、製造をこっそりと変更していた。これについてポポバ氏は、2023年にもっとも成功が約束されていると同氏が感じる飲料ブランドは、たとえば常温で長期保存可能か、軽いパッケージを使用しているなど、商品の発送が簡単なブランドだと語った。また同氏は、アルミニウムやガラスなどの原材料が高価になるにつれ、パウダーミックスやパケットを採用するCPGブランドが増えていくだろうと述べ、例として調味料の新興企業であるオーサム(AWSM)を挙げている。

しかし、インフレによって新興企業に需要の課題も発生した。買い物客がさらに価格に敏感になっているため、新商品にお金をかけようとする可能性が低くなっている。

これについてグリロ氏は、アンプラのクライアントのあいだでは、リテンション(顧客の維持)とロイヤルティへの注目が高まっていると語る。2022年、一部の新興企業は、価格に敏感な顧客に、新興企業の未体験の商品にお金を使っても後悔しないという安心感を与えるために、「try before you buy(買う前に試用できる)」サービスのテストを開始した。スリーシップス(Three Ships)やカラー(Caraa)などほかのブランドは、新規顧客の獲得に多くの資金をつぎ込む代わりに、ブラックフライデーなどの主要なセール期間を使用して、もっとも熱心なメンバーに割引への早期アクセスを許可する特典を与えている。

同氏は、2022年においてもっとも重要となったのは、ブランドが「新規顧客を必ずしも獲得しなくても、人々により多くの額を支出してもらうよう、あらゆる手段をテストする」ことだったと総括している。

[原文:DTC Briefing: The 3 biggest e-commerce stories in 2022]

ANNA HENSEL(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Hero Cosmetics/JuneShine/Caraa

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